こういう場合、お断りという結果だけを見て、「ご縁があると思ったけど、ご縁はなかったんだ」と捉えてしまう方が多いものです。だけど私は、ご縁があるのだと思います。ただ、それが仕事という形で実るタイミングが今ではなかったというだけです。それは数か月先かもしれませんし、数年後かもしれませんが、必ずあるはず。だから、Iさんと編集者さんをしっかりおつなぎしておきたいと思いました。
そこで、企画を検討していただいてIさんも感謝していること、ブックフェアでお会いしていることをお伝えし、せっかくご縁があるようなのでご連絡先をお伝えしてもいいか、編集者さんにお尋ねしました。その際、Iさんは熱心な読書家でもあるので、信頼できる読み手として作品の感想を寄せてくれると思う旨もお伝えしました。
作品をどう読むか、その感想をどう言語化するか。そこには、翻訳家としての力量も反映されます。つくり手の意図や工夫をしっかり汲み取ったことを感想の中で伝えることができれば、「同じレベルで話が通じる相手なんだな」と思ってもらえます。
すぐに翻訳の仕事をもらうのはハードルが高くても、感想を伝えることで地道に信頼関係を築いていくことはできますし、リーディングの仕事などが回ってくるかもしれません。そうやって培った信頼は、長い目で見ると、いい仕事につながっていくと思うのです。
編集者さんからご快諾いただけたので、経緯とともにIさんにご連絡先をお伝えしました。Iさんは想定外の展開に動揺されていたものの(笑)、早速ご挨拶と作品の簡単な感想をメールでお送りしたそうです。ゆっくりと、このご縁が育まれていくことを願っています。
このあたりの時間感覚も、出版社によってかなり異なるように思います。ビジネス書や自己啓発書、実用書に比べて、F社のように人文書を手がける出版社のほうが、時間の流れもゆったりしています。数年がかりで関係性をつくって、長年読み継がれるようなしっかりした作品を刊行していくのに向いていると言えるでしょう。将来はF社からIさんの翻訳書が刊行されるのを期待できそうです。
そうやって長期的な目配りをしながらも、Iさんは次の持ち込み先を考えます。Iさんが見つけてきたのは……次回の連載で!
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