2.「お百姓さん」
主人公テスは、その農場でエンジェルという青年と恋に落ちます。エンジェルは牧師の息子で恵まれた環境で育ったのですが、旧態依然とした教会の世界に嫌気が差して、農村に飛び込んで泥にまみれて生きることを選びます。
世の中をわかった気でいた彼が、地べたに這いつくばって生きる人々の姿を見て、人間を紋切り型で見てしまっていたことに気づく場面です。
The thought of Pascal’s was brought home to him: “A mesure qu’on a plus d’esprit, on trouve qu’il y a plus d’hommes originaux. Les gens du commun ne trouvent pas de différence entre les hommes.” The typical and unvarying Hodge ceased to exist. He had been disintegrated into a number of varied fellow-creatures—beings of many minds, beings infinite in difference;
『知性のすぐれた人ほど、人の多様さに気づける。凡人は、人々の間の違いに気づけない』というパスカルの思想が、彼には初めて身に染みて分かった。紋切り型で十把一絡げの「お百姓さん」は存在しなくなった。「お百姓さん」はそれぞれ違った多数の人間で、それぞれに異なる心の持ち主で、無限の違いを持つ存在に、分けることができた。
パスカルは大好きな哲学者の一人ですが、『知性のすぐれた人ほど、人の多様さに気づける。凡人は、人々の間の違いに気づけない』という言葉が最高で、人の中身を見ずに、決めつけで見た紋切り型の言葉が聞こえてくるたび、この箇所が、反撃の大砲のように胸に響きます。
教える仕事を長くしていますが、いい先生というのは、決めつけで人を見ずに、それぞれの人の性格の違いや好みを瞬時に見極めることができる知性の持ち主だと思います。
ちなみに、テスとエンジェルは最終的に、悲劇的最期をとげるのですが、それでもなお100年前に書かれた言葉が、心にドスンドスンと響いてくる。やっぱり本っていいなと思います。
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