将来年金が減ることはほぼ間違いなく、さらに平均寿命が伸び続けている中で、最近は老後破産という言葉ができるぐらい、老後に対する不安は増すばかりです。老後のことは老後になってから考えたいところですが、退職してからできる対策は限られます。今回は40代から考えておきたい老後破産を防ぐための対策を3つご紹介します。

老後破産の現実

(写真=PIXTA)

しっかり年金を納めているので老後はなんとかなると思っている人も多いと思いますが、日本総合研究所が2017年に発表した「高齢者における生活困窮世帯とその予備軍」によると、最低生活費が世帯年収より高く、貯蓄がないもしくは平均余命までの貯蓄が足りない「生活困窮高齢者世帯」は、2015年時点で287万世帯、高齢者全体の15.2%を占めています。

また、この生活困窮高齢者世帯に、貯蓄や収入が平均余命ギリギリまでしか持たないとされる「生活困窮予備軍」を合わせた世帯は、2020年に531万世帯になります。この世帯数は高齢者全体の26.5%に及ぶので、4世帯に1世帯は老後破産の危険があると言えるでしょう。

老後破産の対策1. 退職後のことをしっかりと決めておこう

(写真=PIXTA)

早期リタイアでは長生きのリスクに対応できない

厚生労働省が2010年に発表した簡易生命表によると、男性の平均寿命は79.64年、女性は86.39年でした。この平均寿命は、30年前と比べ男性で6.29年、女性で7.63年伸びており、さらに2050年には男性で83.55歳、女性で90.29歳になると予想されています。

特に女性の場合、60歳で退職しては平均的な寿命まで生きたとしても30年もありますので、老後の生活費を準備するのは難しいと言えるでしょう。

おひとりさまは70歳まで働くプランを

老後破産を防ぐために一番効果的なのは、結局はできるだけ長く働くことです。年収200万円の仕事だとしても、60歳から10年続ければ2,000万円のプラスになります。70歳まで働く計画をしておけば、年金を繰り下げ受給することによって、年金額を増やすことを考えられるでしょう。

複業の可能性も持とう

70歳まで働くとなると、20歳から数えても50年です。働く期間が長くなると、1つではなく複数の仕事を経験できるチャンスが生まれるということでもあります。ただし、そのためには30代、40代から計画的に勉強や資格取得などをしておくことが大切です。

老後破産の対策2. 住宅や保険は退職までに払い終えるプランを

(写真=PIXTA)

住宅ローンは60歳までに完済が基本

60歳以降もできるだけ長く働くことは老後破産に対する一番の対策になりますが、それをあてにしてローンを組むのは本末転倒です。60歳から後の収入は老後のためのもの。住宅ローンのほか、車のローンなども60歳までに、できれば退職金も当てにせず返済できるプランを立てましょう。

保険料も退職までに払い終えよう

ローンのほか、生命保険などの保険料も現役時代に払い終えるようにしましょう。また、そもそも生命保険は、自分に万が一のことがあった時、困る人のために準備するもの。退職後も払わなければならない保険がある場合、本当に適正か見直すことも大切です。

老後破産の対策3. もっとも基本的な健康への投資

(写真=PIXTA)

老後対策といえば収入や貯金と思われがちですが、それらは健康であってはじめて考えることができることです。健康でなければ長く働くこともできませんし、大きな病気になると医療費も余計にかかります。食費や趣味のお金は切り詰めやすい項目ではありますが、健康な食事や適度な運動の時間は将来の健康への投資と考えましょう。

従来のライフプランにとらわれず自分のプランを持とう

(写真=PIXTA)

ここ数年で「老後破産」という言葉をよく見かけるようになりましたが、少子高齢化が進み平均寿命が伸びている日本では、これまで通り60歳まで働いてあとはゆっくり老後を過ごすというライフプランはますます難しくなります。定年間近になって考えるより、40代のうちから何をしたいか、そのために何が必要かを考えておく方が、必ず選択肢は増えます。ぜひ今のうちから老後のことを考えてみてください。

文・松岡紀史(ファイナンシャル・プランナー、ライツワードFP事務所

【こちらの記事もおすすめ】
老後のための、幸せ貯金計画
「老後のお金」3つのポイント
豊かな老後のための3つのToDo
人生100年時代に必要な「生涯学習」って?
独身女性が安心できる貯金額はいくら?