字幕翻訳の極意②
(画像=『HiCareer』より引用)

森田:2文字は多分大丈夫だろうと思います。あとは語尾ですね。語尾の調節でなんとかします。「~することが必要です」の場合「必要」はいらないので、「~するのです」とすれば、「~する必要」な感じはでるじゃないですか。あとは”must”とか”have to”のような助動詞系を「~しなければならない」とすると長くなるけど、詠嘆調みたいな感じにする。「今すぐ変革しなければならない」ではなくて、「今すぐ変革を」にした方が短くなる。

松本:感情のこもった言い回しですね。

森田:どういう感情で言っているかを正しく掴むことが大前提なんですけど、そこが掴めていれば意外と日本語って融通が利く言葉なので、語尾のニュアンスでお願いしているのか、命令しているのか、強制しているのかわかる。そういうニュアンスの出し方って沢山あるんですよね。

木村:そこは色々な捉え方が出来る日本語の便利さという風に感じます。

森田:主語もなくて良いです。多分1本の動画で1回くらいしか私は主語を使わないですね。「私は」とか「誰が」とかは最もいらないです。悩むのはやはり長い名詞ですね。「デジタルトランスフォーメーション」とかはもう無理って思います(笑)。2回目からは「DX」でいこうとか。

松本:森田さんは10年前から色々と新しいトレンドが出てきて、世の中が変わっているとおしゃっていました。またパンデミックで動画の需要が一気に増えてきていると思うのですが、森田さんが最前線の翻訳者として感じていらっしゃる、今後こういう翻訳の需要が増えるのではないかというものはありますか?

字幕翻訳の極意②
(画像=『HiCareer』より引用)

森田:動画周りからまだまだ増えていくとは思います。先程話に出た音声関係とか、字幕以外にも広がっていくんだろうなと。字幕も今のやり方ではなくて、もっとスピーディーに出来る方法が出てくるのではないかという気はしています。今使われているSSTも、クラウドで出来るようなツールが他に出てきて、箱割りもある程度自動的にやってくれるようになるかもしれないなと思います。今YouTubeでも自動で字幕が出てきますし。

松本:そうですね。ただおそらくあの字幕は機械翻訳なので、とても分かりづらいと感じてしまいます。

森田:そうですね。逆に混乱しますよね。

松本:例えばロシア語の動画を自動翻訳で英語に出力してくれたら有難いなとは思いますね。

森田:その程度のことはすぐに出来そうです。字幕から機械翻訳に掛けて他の言語にリアルタイムで出すことは出来ると思います。英語から日本語の口語はまだまだ難しいと思いますけど…。技術を積めば、翻訳者と機械の力を借りながらもっと素早く便利に出来る方法があるのかなと。

松本:素晴らしいですね。ありがとうございます。では最後に今後字幕翻訳に挑戦してみたいと考えている方々にメッセージをいただければと思います。

字幕翻訳の極意②
(画像=『HiCareer』より引用)

森田:産業字幕は今需要が増えている分野ですけども、この後も増えることはあっても減ることはないので、既に翻訳の仕事をされている方は、使える道具を増やすという意味でも字幕翻訳に挑戦されてみてもよいのではないでしょうか。字幕専門ではなくても、普段やっている仕事の延長線上で字幕の需要が出てきています。尻込みせずに挑戦してもらえればと思います。

松本:おまけの話になるのですが、最近字幕翻訳でみた傾向で面白いなと思ったことがあって。私はバスケットが大好きなので、アメリカのNBAをよく見るのですが、NBA選手のインタビューをとても上手に翻訳しているYouTuberの方がいました。これも一つの翻訳の仕事の在り方ですよね。これでコンスタントに再生回数が伸びれば、仕事になるだろうなと思いました。本当に素人の翻訳ではなかったんですよ。文字数は短くまとめながらメッセージのコアな部分だけしっかりと訳して、他の雑多な情報は削っていて、自然と内容が頭に入ってきました。スポーツだけではなくて「翻訳してみました」のようなYouTubeチャンネルを見たことがあるので、翻訳者兼YouTuberあるいは「翻訳者YouTuber」が出てきているのかなと思うんですが、そういう職業ってなり得るんですかね?森田さんのご意見を聞いてみたいです。

森田:その方々は好きでやっているんじゃないですかね。そのバスケの方もおそらく趣味の延長線上でやっていらっしゃると思います。

松本:そうですね。趣味を超えてメインの職業としてもやっていけそうに感じます。

森田:仕事になりますよね。

松本:それが最近の動画字幕でみた面白いことでした。

森田:面白いですね。すごい才能が眠っていたりしますもんね。

松本・木村: 長時間のインタビューにお付き合いいただき、ありがとうございました。


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