さて、日本にはかつて大家族時代がありました。サザエさんに出てくるような複数の世代が同居する家族構成。いわば古き良き昭和の頃です。そのような環境下では誰もがお互いを支え合い、幼い子どもにとっても祖父母などの肉親の病気・介護や死が身近にありました。しかし、平成を経て令和となった今、家族の在り方や人間関係、そして世の中全体が変わりつつあります。今年6月に出た「男女共同参画白書」には、「もはや昭和ではない」という文言が出ています。価値観が変わってきているのです。

考え方の変化。それは生き方だけではありません。仕事においても同様です。私が携わる通訳や翻訳業界しかりです。昭和から平成初期までの通訳業界には以下のような特徴がありました:

1 移動の際、クライアントがグリーン車やビジネスクラスを利用するのであれば、通訳者も「帯同する」という観点から同じくグリーン車やビジネスクラス。宿泊先もクライアントがVIPフロアの場合、通訳者も同じフロアであった(代金はもちろんクライアントやエージェント持ち)。

2 資料は紙ベースで、すべて事前にエージェントが揃えてくれた。クライアントも早め早めに資料を出すことが多く、大量の資料を宅配便で通訳者の自宅まで送ってもらえた。私のように東京都の隣接県在住でもバイク便で届けてもらえた。

3 業務時間が1時間以上の場合、複数の通訳者がアサインされた。

4 通訳現場にエージェントの営業担当者が同行することが多く、通訳者の現場ニーズに即対応してもらえた。

5 水や差し入れ、食事などが用意されることが多かった。

ざっとこのような具合です。もちろん、これらが令和の今、すべて無くなったわけではありません。しかし日本経済自体が斜陽になったことから企業もコストカットなどを行っています。高度経済成長やバブル期のような羽振りの良さは、日本社会全体から少しずつ消えていったのです。

でも、これも「現実」なのですよね。よって、「昔は良かった」と懐かしんだところで現状が激変するわけではありません。通訳者に求められることも変わりつつあります。その一方では、技術進歩のおかげで通訳者も多大な恩恵を受けています。たとえば在宅ビデオ会議通訳ができるようになったこと。あるいは、直前の資料配布であっても自動翻訳ソフトにかければあっという間に精度の高い訳文が出てくるといったことなどが一例として挙げられます。

我が家のハムスターとの楽しい思い出から一年。日本社会や通訳業界の変遷を感じつつ、これからも時代の要請に応じてお客様に喜んでいただける通訳者を目指したいと思っています。

(2022年8月23日)


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