Lauv - All 4 Nothing (I'm So In Love) [Official Video]
前向きな気持ちを取り戻し、この新作では「ある意味での無邪気さを取り戻すことが重要だった」とラウヴは話す。そうした思いはとりわけ3rdシングル「Kids Are Born Stars」に強く反映されている。MVを見れば、それもわかるだろう。
「これは、“子供の頃の自分”に影響を受けて書いた曲。大人になった自分は子供の自分から想像力を膨らませることを学び、子供の自分は大人の自分から自信を持つことを学んでいる。そう、これはアルバム全体に言えることだけど、もう一度子供の頃の無邪気さを取り戻すことが今の僕には必要だったんだ」
Lauv - Kids Are Born Stars [Official Video]
前向きさと無邪気さを取り戻したラウヴの今のモードは、鮮やかなグリーンの髪色にも表れている。
「COVID-19のパンデミックでロックダウンとなって自宅待機を強いられた時期、初めのうちは時間を気にすることなく制作に没頭できるぞと前向きだったんだけど、自分を追い込みすぎて、ちょっと生活が荒れてしまった。髪も髭も伸び放題でね。でもその状態から抜け出して、このようにいいアルバムを作ることができた。で、全ての曲を録り終えてミックスを聴いているときに、急に思い立ったんだよ。“よし、髪を切るぞ。グリーンに染めるぞ”ってね。精神的にナチュラルな状態になれたから、ナチュラル・グリーン。いいと思わない?(笑)」
そんなラウヴに、最近お気に入りのファッションについても訊いてみた。
「これまではずっとバギーでカラフルなスウェットやパーカーばかり着ていたんだけど、最近は少し変わってきて、仕立てのいいきちんとした服も好きになり始めている。27歳だからね。“ALL 4 Nothing(I’m So In Love)”のMVの撮影では、生まれて初めてスーツを着たんだけど、かなり気に入ったんだ。今後はスーツだったり、仕立てのいいきちんとした服をもっと着たいと思っているよ。でも髪色はグリーン。遊び心はあったほうがいいでしょ」
最後にシリアスな質問も投げかけてみた。ラウヴは社会問題や政治に対する関心を深く持つアーティストで、前作ではソーシャル・メディア依存の問題を曲にしてもいた。そして社会のメンタルヘルスの問題に取り組むために、彼は「Blue Boy Foundation」という財団を設立して活動を続けている。また、ラトビア出身の彼である故、ロシアのウクライナ侵攻、戦争にも非常に心を痛めている。争いの絶えない現実世界を前に、音楽にはどんな力があると彼は考えているのだろうか。
「いい質問だね。理想としては、世に出る音楽そのものが人の心の琴線に触れ、聴いた人が前向きになってくれたらいいと思う。そして何らかの気づきを与えられればいい。それはあくまでも理想で、難しいことだとわかっているけど、音楽にはそういう力があることを忘れちゃいけないと思うんだ。それともうひとつ。アーティストに限らず、何かを発信するプラットフォームを持っている人たちは、世の中にいい影響を与える発信をするなど、それを役立てることに意識的であるべきだと思う。音楽だけじゃなく、言葉の発信も今の時代は重要だからね」
そんなことも意識しつつ、様々なメッセージが含まれたラウヴの2ndアルバム『ALL 4 NOTHING』をぜひじっくり聴いてみてほしい。
インタビュー・文●内本順一