会社員の人であれば厚生年金保険料を支払っていますね。給与明細を見ると記載はありますが、給料から差し引かれているので、年金の内容について考える機会は少ないでしょう。しかし、フリーランスになるなど、会社を退職した場合は、厚生年金保険料にかえて、国民年金保険料を自分で納めなければなりません。手続きの方法なども含めて国民年金について理解を深めておきましょう。

国民年金って加入しないといけないの?

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国民年金は国民年金法で加入することが定められています。海外在住の人、海外に住むことになった人は強制加入被保険者ではなくなりますが、日本国籍の人であれば任意加入が可能です。

会社を退職してフリーランス等になった場合は国民健康保険、国民年金に切り替える手続きをする必要があります。その際、配偶者の扶養となる条件を満たす人は、健康保険の被扶養者、国民年金第3号被保険者となるための手続きを行います。

国民年金制度の信頼を守る観点から、控除後所得が300万円以上あるにもかかわらず、督促状の指定期限までに国民年金保険料の納付がされない期間が7ヵ月以上続く場合は、延滞金が課され、滞納している本人だけでなく世帯主や配偶者の財産を差し押さえるなどの滞納処分が開始されます。

国民年金保険料をきちんと納めることで、将来、老齢基礎年金を受け取ることができるだけでなく、「病気やケガで働けない」「死亡した」などの不測の事態が起こった時に、障害基礎年金・遺族基礎年金が受けられる場合があります。生活を支える資金を受け取ることができるのです。

住所地の市区役所または町村役場で、必ず国民年金に加入する手続きをしておきましょう。

「国民年金が将来受け取れない」は本当?

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「少子高齢化がこのまま進んでいくと、国民年金は将来受け取れなくなるの?」という不安を耳にすることがあります。保険料を支払う人が減って受け取る人が増えるのですから、心配になってしまう人は多いでしょう。しかし、受け取れなくなる事態にならないように、制度を安定して継続させる仕組みがすでに導入されているのです。

2003年までは、給付水準を固定して、5年ごとに年金保険料と年金給付のどちらも見直す制度が実施されていました。2004年の改正で、保険料の引き上げが進み過ぎないように、国の負担分を1/2にすることや積立金を活用するとしたうえで納付する保険料の上限を固定し、年金財源の範囲内で年金給付を自動的に調整すると決まりました。

2004年以降、少なくとも5年ごとに財政検証が行われ、そのつどおおむね100年先までの年金財政の健全性が検証されます。しかし、25年後の公的年金の給付水準は現役サラリーマン世帯の平均所得の50%ほどになる見込みです。2014年度は62.7%ですからゼロになることはありませんが、減る可能性はあります。自分で備えていくことも大切です。

日本の年金制度の仕組み。厚生年金との違いは?

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日本の公的年金制度は、国民年金と厚生年金などによる「2階建て」と呼ばれる構造になっています。働いている世代が支払う保険料を65歳以上の世代の年金給付に充てる「賦課(ふか)方式」という考え方を基本にして運営され、自分が65歳以上になった時に受け取る年金の金額は、加入期間や納めた保険料によって決まるという仕組みです。

1959年に実施された国民健康保険法に続き、1959年に無拠出制福祉年金、1961年に拠出制国民年金保険が成立したことによって、それまで保障のなかった自営業者や農漁業に従事している人などにも年金保険が適用されることになりました。すべての人が安心して暮らせるように国が制度として確立したものです。

厚生年金は会社員や公務員が加入するのに対して、国民年金は日本国内に住所のある20歳以上60歳未満のすべての人が加入しなければならないことになっています。公的年金に上乗せして任意で加入できる私的年金は「3階部分」です。

国民年金の保険料について

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毎年の国民年金の保険料は、2004年の制度改正で決められた保険料額に、物価や賃金の変動によって決まる保険料改定率をかけて計算されます。2004年度から2017年度まで毎年280円ずつ引き上げを行い、保険料は固定されましたが、2019年以降は、産前産後期間に保険料が免除になることから、月額100円引き上がります。2019年度の国民年金の保険料は、1万6,410円です。

厚生年金、共済組合に加入している第2号被保険者に扶養されている配偶者で、年齢が20歳以上60歳未満、年収が130万円未満の人を第3号被保険者といいます。該当する人は第2号被保険者である配偶者の勤務先に届出を行うことで国民年金保険料の負担はなくなります。

国民年金保険料の支払方法は?

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国民年金の保険料は、日本年金機構から送られる「納付書」を使って金融機関やコンビニで支払うことができます。2019年度の納付書は2019年4月1日に発送されていますので、「会社を辞めた」などで国民年金に加入する人は、手続き終了後2週間ほどで届くことになっています。納付に手数料はかかりませんが、コンビニ内にある複数の金融機関に対応するATMは利用できません。

他には、スマートフォンやパソコンからPay-easy(ペイジー)で納付できます。場所や時間帯を選ばず便利ですが、「領収書が発行されない」「納付書発行当日は利用できない」などの注意点もあります。

「支払いを忘れそう」と思う人は、口座振替やクレジットカート払いができるように手続きをしておくと、支払いに時間がかからず忘れることもありません。手続きは通帳のある金融機関や年金事務所の窓口で行っています。

また、まとめて前払いすると、年利4%で複利計算され保険料が割引になるおトクな方法もあります。通常は納付対象月の翌月末に行われる振替ですが、当月末、6ヵ月分、1年分、2年分などの支払い方法が選べるのです。現金の場合は任意の月から当年度末または翌年度末までの前納も可能になります。手続きは年金事務所で行っています。

未納の場合の追納や免除の手続きについて

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「会社を退職して収入が減少した」などの理由で、国民年金保険料を支払うことが困難な場合には、未納のままにせず、国民年金保険料の「保険料免除制度」「保険料納付猶予制度」の手続きを行っておきましょう。申請時点から2年1ヵ月前まで遡って申請することができます。

保険料免除制度とは、本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定額以下、失業したなどの場合は本人から申請することによって、承認されると国民年金保険料の納付が免除されるという制度です。免除される割合は所得によって、全額、4分の3、2分の1、4分の1の免除区分があり、納める保険料は、0円、4,100円、8,210円、1万2,310円となります。申請が1月から6月までの場合は前々年の所得が審査の対象になります。

保険料納付猶予制度は、20歳から50歳未満の本人・配偶者の所得が一定額以下の場合、申請後に承認されると保険料の納付が猶予されるという制度です。

手続きをしておくことで“未納”にはなりません。その上免除が承認された期間は免除区分に応じた年金や国の負担分を受け取ることができるのです。納付猶予が承認された期間は老齢基礎年金の年金額は増えませんが、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金を受けるための受給資格期間に数えてもらえます。

この場合、保険料を全額納付した場合よりも老齢基礎年金の受給額が低くなってしまいますが、免除・猶予の申請をしておくと追納制度を利用して保険料を後から払うことが可能です。

ただし追納ができるのは、追納が承認された月以前の10年以内の期間になります。納付免除、納付猶予を受けた翌年度から数えて3年度目以降になると、その年分の保険料に経過した期間による加算額が上乗せされますので、早めの手続きがおすすめです。追納すると老齢基礎年金の金額を増やすことができますし、支払った保険料は社会保険料控除の対象になり、所得税と住民税を軽減してもらえます。

受給世代が受けている満額金額は?

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現在老齢基礎年金を受けている世代の満額金額はいくらでしょうか? 20歳から60歳まで40年全期間の国民年金を納めた人の場合、2019年度の年金額は満額の78万100円となります。

老齢基礎年金の計算は次の様に計算します。

78万100円×{保険料納付月数+(保険料全額免除月数×8分の4)+(保険料4分の1納付月数×8分の5)+(保険料半額納付月数×8分の6)+(保険料4分の3納付月数×8分の7)}÷(40年×12)

国民年金保険料の2分の1は税金などが充てられているためこのような計算式になるのです。40年全額免除の場合の年金額は39万100円となります。

2009年3月分までは、全額免除、4分の1納付、半額納付、4分の3納付は、国の負担分が3分の1だったので、それぞれ6分の2、6分の3、6分の4、6分の5で計算されます。また、40代の皆さんで1991年3月以前に学生であったため国民年金に任意加入しなかった期間がある人は、その期間は年金金額には反映されない「カラ期間」です。

国民年金はきちんと納めよう

(写真=PIXTA)

国民年金への加入は大切ですので、必ず手続きをしておきましょう。老齢基礎年金を受けるための条件は、未納期間を除いて国民年金加入期間が10年以上あることです。

会社員や公務員で、厚生年金の被保険者期間が1年以上あると老齢厚生年金を受け取ることができますが、老齢基礎年金を受けるために必要な国民年金加入期間である10年を満たさなければ老齢厚生年金も受けられません。いまならまだ間に合います。心配な人は年金事務所や街角の年金相談センター、ねんきんネットで年金記録を確認しておきましょう。

文・藤原洋子(ファイナンシャル・プランナー)

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