仕事もプライベートも充実し、お金もほとんど自分のために使うことができる30代、40代のおひとりさま女性。普段の生活には不満がなくても、お金の相談で一番多いのは、やはり老後の資金についてです。

将来、年金がもらえるのかという不信感もあり、早い時期から老後資金を貯め始める人もいます。しかしずっと独身で過ごすとなると、どれくらいお金が必要になるのでしょうか。今回は、独身女性に必要な老後資金はいくらなのかと、その貯め方をご紹介します。

独身女性の老後資金には最低2,000万円が必要

独身女性は、老後に備えていくら用意すればいいのでしょうか?結論からお伝えすると、次のように2,000万~3,200万円は必要です。

・会社員:約2,000万円
・自営業、フリーランス:約3,200万円

なぜこの金額なのか、どのようにこの金額が算出されたのかを解説します。

老後資金の出し方

老後資金をいくら用意すればいいかは、「老後の支出」から「老後の収入」を引くことで計算できます。

<必要な老後資金の算出方法>
「老後の支出」-「老後の収入」=必要な老後資金
※60歳で定年を迎え、65歳から年金を受給する想定で試算をします。

「老後の支出」とは、主に生活費のことです。「老後の収入」は、ここでは「年金」と考えます。それぞれがいくらぐらいになるのか確認し、上記の計算式に当てはめると、老後に向けて用意すべき金額がわかります。

まずは女性の「老後の支出」の目安を把握 60歳から90歳までで5,000万円以上かかる!?

(画像=japolia /stock.adobe.com)

老後の支出はどのくらいなのでしょうか。2020年に総務省が実施した「家計調査」によると、60歳以上の独身女性の1ヵ月の生活費は14万3,359円、そのうち65歳以上は13万9,417円でした。

65歳以上の独身女性の「生活費の内訳」は、表1のとおりです。歳を取ってからも、被服費や交際費、娯楽費などはそれなりの金額がかかることがわかります。

表1.65歳以上の独身女性の1ヵ月の支出内訳

支出の項目 金額
食料 3万5,773円
住居 1万3,116
水道・光熱 1万3,254
家具・家事用品 6,160円
被服および履物 3,891円
保健医療 8,692円
交通・通信 1万1,631円
教育・教養娯楽 1万2,333円
交際費 1万8,684円
その他 3万4,567円
合計 13万9,417円


では、例えば90歳まで生きるとすると、60歳から90歳までに必要な生活費はどのくらいになるのでしょう。計算してみると、何と「5,044万2,840円」もかかるのです。

・60歳から65歳まで
14万3,359円×(12ヵ月×5年)=860万1,540円
・66歳から90歳まで
13万9,417円×(12ヵ月×25年)=4,182万5,100円
・合計
860万1,540円+4,182万5,100円=5,042万6,640円

女性の「老後の年金収入」はどのくらい?

次に、老後の収入である年金額を確認しましょう。年金額は会社員だった方と、ずっと自営業・フリーランスとして働いていた方では大きく変わりますので、個別にご紹介します。

<会社員だった方が受給できる年金>
会社員だった方が受給できる年金は、「厚生年金保険」から支給される老齢厚生年金です。

厚生労働省「令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、女性の厚生年金保険の受給額は、65歳以上で月10万8,813円です。

出典:厚生労働省『令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』
<自営業やフリーランスの方が受給できる年金>
自営業の方が受け取れる年金は、「国民年金」から支給される老齢基礎年金です。

40年間きちんと保険料を納めていれば、2021年4月からの老齢基礎年金は満額で78万900円受け取ることができます。月に6万5,000円ほどです。

出典:日本年金機構『令和3年4月分からの年金額等について』

65歳から90歳まで25年間年金を受け取るとすると、「会社員だった方」と「ずっと自営業・フリーランスの方」の年金額はそれぞれ以下のようになります。

表2.女性が65歳からの25年間に受け取る年金額の総額(職業別)

職業 年金額の計算式 年金額
会社員 10万8,813円×300ヵ月 3,264万3,900円
自営業・フリーランス 78万900円×25年 1,952万2,500円

「老後の支出」−「老後の収入(年金)」で計算してみよう

ここまでで算出した金額を基に計算すると、具体的な「老後に必要な資金の最低額」は以下のようになります。冒頭でお伝えした「必要な老後資金の額」は、こちらを基にしたものです。

• 会社員:1,779万8,940円
• 自営業、フリーランス:3,090万340円

表3.女性の老後に必要な資金(職業別)

職業 老後の支出 老後の収入 必要な老後資金
会社員 5,042万6,640円 3,264万3,900円 1,778万2740円
自営業・フリーランス 1,954万2,500円 3,088万4140円

ずっと自営業者だった方は会社員に比べて、老後資金が約1,300万円多く必要になることがわかりますね。

自分のライフスタイルにあわせて必要なプラスαの資金を考える

老後資金は「2,000万~3,200万円用意する必要がある」ということがわかりましたが、あくまでこの額は平均的な独身女性の場合です。生活環境や老後の希望は人それぞれなので、上記以外にかかるお金を予想してみましょう。

例えば70歳までは年1回海外旅行に行きたいということであれば、1年で20万円、10年で200万円と金額が予想できます。また、車が必要だということであれば、同じように、駐車場やガソリン代といったランニングコストと、いくらの車を何年おきで買い換えたいか考えておくことで、大体の予算が決まります。

自分のライフスタイルにあわせて必要なお金を考え、さらに予備資金として300万円ほど上乗せした金額を、自分の老後資金として準備していきましょう。
松岡紀史(ライツワードFP事務所代表)

老後資金を準備する5つの方法

(画像=toshi /stock.adobe.com)

最低限必要な資金2,000万円~3,200万円に、ライフスタイルにあわせた必要なお金が500万円、そして予備資金の300万円を足して、老後資金が2,800万円~4,000万円必要だとしましょう。大きな金額ですが、なんとかして準備しなければなりません。

どうやって準備したらいいのか分からない人は、以下の5つの方法を考えてみてください。

  • 生活レベルを質素にする
  • 働く期間を長くする
  • 積立貯金を始める
  • 貯蓄型の保険に加入する
  • 老後の資金形成の優遇制度を活用する

方法1.生活レベルを質素にする

独身女性の1ヵ月の生活費は14万6,628円と紹介しましたが、支出を減らすことができれば老後資金は少なくて済みます。

例えば、月々1万円生活費を削減すれば、30年で360万円の黒字になります。生活レベルは急には落とせないので、徐々に質素な生活を目指しましょう。

方法2. 働く期間を長くする

今は60歳を過ぎても元気な人が増えたので、60歳以降も働くとあらかじめ決めておくのもいいでしょう。例えば、月々20万円の仕事であっても、5年間では1,200万円の収入になり、老後資金の準備がずいぶん楽になります。

方法3. 積立貯金を始める

「お金を貯める」というと、誰もが最初に貯金を思い浮かべると思います。ほとんどの人はすでに銀行口座を持っていますし、貯金を始めるのに特別な知識は必要ありません。効率良く貯金額を増やすためには、積立貯金がおすすめです。

給与が振り込まれる口座で生活資金と貯金を一緒にしている人がいますが、始めは順調に貯まっていても、金額が数百万円になると月々増えている額を実感しにくくなります。また、ある程度お金が貯まってから貯金口座にお金を移す方法では、お金が手元にあるため衝動買いをしてしまうおそれもあります。

積立貯金なら毎月強制的にお金を積み立てていくので、確実に貯まります。途中で使いたくなっても“解約”という手間があるので、衝動買いを防ぐことにもつながるでしょう。例えば月に3万円ずつ積み立てると、1年で36万円、20年で720万円の資金を貯めることができます。

方法4. 貯蓄型の保険に加入する

年金額を増やすには、民間の生命保険会社が販売している個人年金保険などの貯蓄型保険に加入する方法もあります。

普通に貯金する場合と比べて、保険料控除を受けることができる分、手取り収入を増やしながらお金を貯められます。途中で解約すると損をするので安易に解約せず、老後にお金を残しやすいという特徴もあります。

税制優遇という点では、次に紹介する「企業型確定拠出年金」や「iDeCo」のほうがメリットが大きいと言えます。

方法5. 老後の資金形成の優遇制度を活用する

老後資金形成のための以下の3つの制度を上手く活用して、お金を準備しましょう。

  • (企業型)確定拠出年金
  • 個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)
  • つみたてNISA

(企業型)確定拠出年金

1つ目は、会社で退職金として加入している人が多い(企業型)確定拠出年金です。何も分からずに運用状況をチェックしていないと、きちんと運用している人に比べ、数百万円の差が出る場合があります。しっかりと商品を調べて適切な運用を行いましょう。

個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)

2つ目は、個人型確定拠出年金、通称iDeCo(イデコ)です。60歳までお金を引き出すことはできませんが、老後資金の形成という目的であれば、この制度ほど税金面で優遇されているものはありません。40代から加入してもメリットは多いので、うまく利用しましょう。

出典:国民年金基金連合会 『iDeCoってなに?』

つみたてNISA

3つ目は、つみたてNISAです。つみたてNISAとは長期間の積み立てによって資産を形成していく制度です。iDeCoほどではありませんが、税制が優遇され、またiDeCoと違い、いざという時はいつでもお金を引き出すことができます。

出典:金融庁『つみたてNISAの概要』

老後の準備は自己責任と言われる現在、その個人の資産形成をサポートする制度は充実してきています。積極的に利用しましょう。

老後資金は早めの準備を!長期戦で備えよう

独身女性に必要な老後資金と、その準備の仕方をご紹介しました。最低2,000万円~3,200万円が老後に必要と聞いて、「そんなの無理!」と考えた人もいるかもしれません。

一方で、今回紹介した方法を見て「なんとかやってみよう」と思った人もいるのではないでしょうか。漠然とした不安を持ちながら何もしないより、不安と向き合って少しでも早く準備を始めましょう。

独身女性の老後資金について Q&A

Q

A
独身女性に必要な老後資金はどれくらい?
もちろん個人差はありますが、およそ2,000万~3,200万円は必要といわれています。老後資金をいくら用意すればいいかは、「老後の支出」から「老後の収入」を引くことで計算できます。「老後の支出」とは、主に生活費のことです。「老後の収入」は、ここでは「年金」と考えます。それぞれがいくらぐらいになるのか確認し、上記の計算式に当てはめると、老後に向けて用意すべき金額がわかります。

Q

A
独身女性の老後の支出の平均額はどれくらい?
2020年に総務省が実施した「家計調査」によると、60歳以上の独身女性の1ヵ月の生活費は14万3,359円、そのうち65歳以上は13万9,417円でした。生活費の内訳は食費をはじめとし、被服費や交際費、娯楽費などそれなりの金額がかかることがわかりました。

Q

A
独身女性の老後の年金収入はどれくらい?
会社員だった方が受給できる年金は、「厚生年金保険」から支給される老齢厚生年金です。厚生労働省「令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、女性の厚生年金保険の受給額は、65歳以上で月10万8,813円です。自営業の方が受け取れる年金は、「国民年金」から支給される老齢基礎年金です。40年間きちんと保険料を納めていれば、2021年4月からの老齢基礎年金は満額で78万900円受け取ることができます。月に6万5,000円ほどといわれています。

筑波大学経営・政策科学研究科でファイナンスを学ぶ。20代の時1年間滞在したオーストラリアで、収入は少ないながら楽しく暮らす現地の人の生活に感銘を受け、日本にも同様の生活スタイルを広めたいという想いから、 帰国後AFPを取得しライツワードFP事務所を設立。家計改善と生活の質の両立を目指し、無理のない節約やお金のかからない趣味の提案などを行っている。
筑波大学経営・政策科学研究科でファイナンスを学ぶ。20代の時1年間滞在したオーストラリアで、収入は少ないながら楽しく暮らす現地の人の生活に感銘を受け、日本にも同様の生活スタイルを広めたいという想いから、 帰国後AFPを取得しライツワードFP事務所を設立。家計改善と生活の質の両立を目指し、無理のない節約やお金のかからない趣味の提案などを行っている。

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