「求償権」という言葉を目にしたことはありますか?あまりなじみのない言葉ですが、保証人など法律上の理由で、お金を借りた人に代わって返済をした場合、本来の債務者が負担すべき部分について「返してほしい」と求めることができる権利のことをいいます。生活の身近な出来事で、求償権を行使されたり、行使する場面があったりするかもしれません。もしものときに知っておきたい使い方と事例を紹介します。
求償権とは肩がわり分を請求できる権利
求償権とは、肩がわりした債務を請求できる権利です。お金などを借りた人が返済をしなかった場合に、代わりに返済することを約束する契約を保証契約といいます。保証契約はお金などを貸した人と保証人の間で結びます。
例えば、Aさんが銀行から事業資金を1,000万円借りたとします。事業に失敗して弁済できないときは、保証人であるBさんが1,000万円とその利息、遅延金を支払うことになります。その場合BさんはAさんに「求償権が行使できる」ことになります。
しかし、支払い能力のないAさんから1,000万円を受け取るということは難しいと言えるでしょう。保証人の意味をよく知らず断り切れないなどの理由で引き受けた結果、保証人が多額の債務を引き受けて破産に追い込まれるケースがあるようです。2017年の民法改正では、個人保証人の保護制度が導入されました。
テレビだけの話じゃない!求償権発生事例
皆さんの周りで起こるかもしれない求償権発生事例を紹介します。
住宅ローンが払えなくなった場合
住宅ローンが払えなくなった場合、契約者に代わって指定されている保証会社が残りの住宅ローンを一括返済します。その後、保証会社から住宅ローンの契約者に支払いの請求が行われます。
マンションでの水漏れ
配水管の老朽化などにより、上の階Cさんのお宅から下の階Dさんのお宅へ水漏れが起こった場合、Dさんは修理費用をCさんに支払ってもらうよう請求します。水濡れによる損害がDさんの契約している火災保険の補償対象になっているという理由で、Dさんが費用を負担したとしても、後日保険会社からCさんへ請求が行われます。
交通事故で被害者となった場合
交通事故の被害者である契約者に保険会社から保険金が支払われると、保険会社が、契約者の損害賠償請求権を代位取得し、加害者に対して保険金の請求を行います。また、加害者の行為が原因で起こった交通事故で要介護状態となり、被害者が介護保険サービスを利用すると、市区町村が行った保険給付費は加害者に請求されます。
夫が配偶者以外の女性と不倫をして妻から損害賠償金を請求された場合
不倫をした2人は、連帯して妻に慰謝料を支払わなければなりません。妻が不倫相手に慰謝料を請求し、不倫相手が全額を支払ったとき、不倫相手は夫に対して夫の負担割合分を請求することができます。
もし求償権を行使されたらどうすれば?
求償権を行使され支払いを求められた場合はどのようにしたらよいのでしょうか。
例えば、住宅ローンを利用中、金融機関への支払いができなくなるということもあるでしょう。こうしたときに、保証会社が指定されている場合は、保証会社が一括で残額の支払いを実施します。これを「代位弁済」といいます。代位弁済が行われると住宅ローンの契約者へ代位弁済をしたことの通知書が送られ、一括返済を請求されます。
一括返済ができない場合でも、必ず住宅を手放さなければならないということではありません。今後の解決方法についてはすぐに弁護士や司法書士などに相談しましょう。
求償権を行使するために必要なこと
求償権を行使するために必要なのはどのようなことでしょうか?
例えば、結婚している男性と独身女性が浮気をしていて、妻から浮気・不倫の慰謝料を請求された場合、慰謝料を支払う責任は、女性と結婚している男性の双方にあります。請求された慰謝料を女性が全額支払った場合、女性には男性側に男性の負担分を請求できる求償権が生じるのです。女性が求償権を行使したとき、妻から「夫には別途負担分を請求しています」と主張されると、夫の負担分は受け取れない恐れが出てきます。全額支払った分だけ、損をした気持ちになるでしょう。
女性が支払い損にならないためには、慰謝料の相場に当たる金額を全額請求されたときに、「男性に対して求償権を行使しない」「支払う金額は自分の負担分のみ」「自分の負担分になるように慰謝料を減額する」ことを求める必要があります。条項として示談書や公正証書に記載する手段をとるといいでしょう。
また、示談書作成後、異なる金額を請求されるなどのトラブルを防ぐためにも、法律に詳しい弁護士などに相談、依頼しましょう。
マンションの水漏れの場合、契約している火災保険に個人賠償責任特約を付加していると相手の負担した修理費用は補償の対象になります。個人賠償責任特約は火災保険のほかに、傷害保険や自動車保険、自転車保険にも付けることができ、ケガをした相手への治療費なども補償の対象になっています。
慌てないために頭の片隅に入れておこう
法律上、支払い義務のある人に代わって債務の弁済が行われた場合でも、支払い者の義務が完了するわけではありません。日常生活で求償権に関わることがあるかもしれませんので、慌てずに専門家に相談するということを頭の片隅に置いておきましょう。
文・藤原洋子(ファイナンシャル・プランナー)
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