基本的に、国民年金は、20歳以上60歳未満のすべての人が加入しなければなりません。加入期間中は、年金保険料を納めますが、残念ながら納めていない人が少なくありません。滞納すると、将来受給できる年金額が減るだけでなく、差し押さえなどの滞納処分をされることがあります。その際の具体的なペナルティと年金保険料を納めることが難しいと思ったときの対処法について、詳しくご説明します。

年金の仕組み

(写真=PIXTA)

年金には、国民年金と厚生年金の2種類があります。

国民年金は、一般的に基礎年金といわれています。20歳以上60歳未満の国民は、加入することが義務付けられています。保険料は、年齢・性別に関係なく一律で、月額1万6,410円(2019年度)です。

支給される給付額は、加入していた期間に応じて異なります。加入期間が満期(40年間)だった場合には満額給付されますが、満期でなくても、自分の加入期間に応じた金額が支給されます。

支給される年齢は、原則として65歳からです。65歳よりも遅い年齢での支給(繰り下げ受給)を希望すれば、給付額が増額されます。

厚生年金は、国民年金に上乗せされて支給される年金です。基本的に厚生年金は、会社員などが加入する年金です。加入している間は、国民年金保険料と厚生年金保険料とを合計して、納めることになります。

厚生年金の年金保険料は、4~6月の給与を基に計算した金額と賞与に保険料率をかけた金額になります。そして保険料は、会社などの事業主と加入者(本人)が、半分ずつ負担します。

本人負担の保険料は、あらかじめ給料、賞与などから天引きされますから、基本的に厚生年金保険料を滞納することはありません。

滞納したらどうなるのか?

(写真=PIXTA)

厚生労働省の統計によると、2018年2月末時点の国民年金保険料の納付率は、64.7%です。実に、3割以上の人が年金を支払っていないことになります。

国民年金保険料を滞納した人に対しては、「国民年金法第96条第1項及び第4項」に基づき、強制執行の手続きが行われます。

『第96条第1項「保険料その他この法律の規定による徴収金を滞納する者があるときは、厚生労働大臣は、期限を指定して、これを督促することができる。」

第96条第4項「厚生労働大臣は、第一項の規定による督促を受けた者がその指定の期限までに保険料その他この法律の規定による徴収金を納付しないときは、国税滞納処分の例によってこれを処分し、又は滞納者の居住地若しくはその者の財産所在地の市町村に対して、その処分を請求することができる。」』
(引用:国民年金法)

ここで注目したいのは、第4項にある「国税滞納処分の例によって」という言葉です。これは、国民年金保険料を税金と同等に扱い、滞納者には厳しく対応するというメッセージだといえます。

ただし、滞納したからといって、即「差し押さえ」とはなりません。おおむね次のような流れになります。

まず期限までに納付しない人に対して、納付の催促の電話や文書が届きます。それでも納付がなされない場合は、「特別催告状」が送付されてきます。

もし、そのまま未納付の状態が続けば、「最終催告状」が届きます。それを放置しておくと、今度は「督促状」が送付されます。最終的に「差押予告通知書」が届き、滞納者の財産が差し押さえられることになります。

もともと国民年金は、世代間の「相互扶助」によって成り立っています。

つまり、現役世代がきちんと年金保険料を納めることで、仕事をリタイアした世代の年金を支えていくというものです。したがって、年金納付率が下がっていけば、制度そのものが存続できなくなるでしょう。

このような観点から、政府も年金未納者に対して、強制執行などの厳しい対応をするようになりました。

年金保険料を支払えない場合はどうすれば?

(写真=PIXTA)

金銭的理由などから、年金保険料を支払えない事情が出てきたら、免除制度や納付猶予制度を利用しましょう。

免除制度とは、本人・世帯主・配偶者の前年の所得が一定額以下である場合、あるいは失業している場合、本人が申請をして承認されると、保険料の全額、4分の3、半額、4分の1のいずれかが免除されるというものです。

一方、納付猶予制度とは、本人と配偶者の前年の所得が一定額以下の場合、20歳以上50歳未満に限って、本人が申請をして承認されると、保険料の納付が猶予されるというものです。

年金保険料を納付せず、免除制度や猶予制度を利用しなかった場合、未納と判断されます。未納の期間は、受給資格期間に算入されませんし、なによりも強制執行の対象者となります。

しかし、保険料の免除や猶予が承認された期間は、年金の受給資格期間に算入されます。

ただ、年金額を計算する際には、免除期間は保険料を通常の2分の1(2009年3月までの期間は3分の1)として計算します。

なお、猶予期間については、年金額には反映されません。

前述しましたが、国民年金保険料の未納率35%は、驚くべき数字です。自分が保険料を納めないことによって、年金制度自体が維持できないばかりか、自分の老後の生活にも大きく響いていきます。もし納付できない事情が出てきたら、そのまま放置しておくのではなく、免除制度や猶予制度を利用しましょう。

文・井上通夫(行政書士・行政書士井上法務事務所代表)

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