株式投資、いわゆる「株」は多くの人にとって身近な投資方法です。しかしいざ始めようとすると数十万円といったまとまったお金が必要になるため、気軽に始めるには少しハードルが高いかもしれません。そこで今回は、少額からでも株に投資できる方法と、それを行う際におすすめの証券会社を5つご紹介します。
株の少額投資とは?
少額投資とは、数百円~数万円で始められる投資のことです。投資に回せる資金が少ない人でも気軽に始められますし、元の投資額が少ないため、もし運用に失敗しても、よほどのことがない限り損失額が大きくなることがありません。
松岡紀史(ライツワードFP事務所代表)
株の少額投資としては、後述する「単元未満株」や「ミニ株」といったサービスがあります。まとまったお金がなくても気軽に株式投資を始めることができるのが株の少額投資の魅力です。
株で少額投資をするメリット
株で少額投資をするメリット1. 分散投資がしやすい
投資初心者にとっては、少額投資によって分散投資がしやすくなることは大きなメリットでしょう。
株価は会社の業績などによって変動し、その会社が倒産すれば価値はゼロになります。例えば手持ちのお金が30万円しかないと、本来であれば買える銘柄数が限られますが、少額から株を買えるサービスを利用すれば多くの銘柄に分散投資ができます。
株で少額投資をするメリット2. 配当金を受け取ることができる
少額から株を買えるサービスを利用しても、 保有株数に応じて配当金を受け取ることができます。少額投資とはいえ、配当金がもらえるのはうれしいですよね。
株で少額投資をするデメリット
株で少額投資をするデメリット1. 取引できる証券会社や取り扱い銘柄が少ない
本来、株の売買は「単元株」というまとまった単位で行われるため、少額投資はメインの売買方法ではありません。そのため少額投資では取引できる証券会社が限定されていたり、取り扱い銘柄が少なかったりします。この点がデメリットです。
「すでに株式投資を始めている人」でこれから少額投資をやってみたいと場合は、現在利用している証券会社に少額から取引できるサービスがなければ、別の証券口座を開設する必要があります。
株で少額投資をするデメリット2. 議決権がなく、株主優待もほとんどない
少額投資は株主総会での議決権はなく、株主優待もほとんど受けられないことに注意してください。なお前述のとおり、株式は保有数が少なくても配当金は受け取れます。
株の少額投資にはどんな種類がある?
通常の株式取引では「1株だけ買う」ということはできず、売買単位が決まっています。これを「単元株」と言います。
以前は単元株を会社が自由に決めることができましたが、2018年10月からは100株に統一されました。つまり1株5,000円のA社の株を買う場合は、最低100株分の50万円が必要になります。
この単元株によって「株式投資にはまとまったお金が必要」と思われているのですが、中には少額から買える株もあります。それが「単元未満株」と「ミニ株」です。
- 単元未満株
- ミニ株
株の少額投資の種類:単元未満株
「単元未満株」とは単元株にこだわらず、より細かい単位で購入できる株のことで、1株から購入することができます。
株の少額投資の種類:ミニ株
「ミニ株」も単元未満株と同じような意味でよく使われます。単元株より細かい単位で株を買える点は同じですが、単元未満株では1株から購入できるのに対し、ミニ株では1単元の10分の1、つまり現在は10株から購入できる点が異なります。
各証券会社では、少額からの株式投資の手段として単元未満株またはミニ株の仕組みを導入していますが、現在は単元未満株を導入している証券会社が多いです。
初心者必見!少額投資で株を始めるには
株は少額から始められることをご紹介しましたが、今まで銀行預金しかしたことがない人がいきなり単元未満株やミニ株を買えるわけではありません。ここでは、初心者の方が少額投資を始める際の手順をご紹介します。
-
証券会社に口座を開設する
-
銀行口座から証券口座に入金する
-
購入したい単元未満株を選ぶ
-
注文する
少額投資の始め方【Step1】 証券会社に口座を開設する
株は銀行では買うことができません。株を購入するには、まず証券会社で口座(証券口座)を開設します。
少額投資の始め方【Step2】 銀行口座から証券口座に入金する
無事に証券口座を開設できたら、銀行口座から証券口座に入金します。証券口座によっては、特定の銀行口座からの入金手数料が無料のところもあります。
少額投資の始め方【Step3】 購入したい単元未満株を選ぶ
自分が買いたい単元未満株またはミニ株を選びます。単元未満で買える銘柄は、証券会社によって異なります。
少額投資の始め方【Step4】 注文する
株を買うために注文を出します。株式の主な注文方法は、買値を指定する「指値」と現在の価格で買う「成行」の2つですが、単元未満株やミニ株ではほとんどの証券会社が「成行」のみとなっています。
成行……現在の価格で買う注文方法
株の少額投資ができるおすすめの証券会社5つ
ミニ株や単元未満株は、証券会社によって「ワン株」「S株」「いちかぶ」などさまざまな名称でサービスが提供されています。2021年9月現在、単元株未満で株を買えるおすすめの証券会社のサービス名と手数料は、以下の表のとおりです。
表.株の少額投資ができるおすすめの証券会社5選
証券会社名 | 少額投資サービス名 | 取引手数料(税抜き) |
---|---|---|
SBIネオモバイル証券 | S株 (単元未満株) |
月間の約定代金合計額 50万円まで220円 |
LINE証券 | いちかぶ (単元未満株) |
スプレッド;0.2%〜1.0% |
PayPay証券 | - | スプレッド:0.5%〜1.0% |
マネックス証券 | ワン株 (単元未満株) |
買付手数料:無料 売却手数料:約定代金の0.5% (最低手数料52円) |
SBI証券 | S株 (単元未満株) |
約定代金の0.5% (最低手数料55円) |
株の少額投資ができるおすすめの証券会社1. SBIネオモバイル証券
少額投資サービス名 | 対象銘柄 | 最小取引単位 | 取引手数料(税込) |
---|---|---|---|
S株(単元未満株) | ・東証上場銘柄 ・名証、福証、札証上場銘は 売却のみ可能 |
1株 | 月間の株式約定代金合計額 50万円まで:220円 300万円まで:1,100円 500万円まで:3,300円 1,000万円まで:5,500円 以下100万円ごとに1,100円加算。 |
- Tポイントで株を購入できる
- Tポイント200ポイントが毎月還元される
- 取引手数料は、50万円までなら220円!
SBIネオモバイル証券では、取引手数料が約定ごとにかかるのではなく、月間の約定代金に応じて変わります。例えば、 月間の約定代金合計が50万円以下であれば、何回売買を行っても手数料は220円です。
Tポイントとの連携が良く、Tポイントを使って株を購入できるほか、期間固定Tポイント200ポイントが毎月還元されます。
株の少額投資ができるおすすめの証券会社2. LINE証券
少額投資サービス名 | 対象銘柄 | 最小取引単位 | 取引手数料(税込) |
---|---|---|---|
いちかぶ(単元未満株) | 中小型株や新興市場株を含め、 1,000銘柄以上 |
1株 | 時間帯に応じて、 0.2%〜1.0%のスプレッドが発生 |
- 使い慣れた「LINE」アプリで投資ができる
- 時間帯によっては取引コストが最安値
- 平日21時まで取引可能
新たにアプリをインストールする必要がなく、使い慣れた「LINE」からアクセスできるので、株式投資へのハードルが低くなっています。
取引コストは0.2%~1.0%のスプレッドであり、時間帯によっては業界最安値となっています。スプレッドが0.2%とは、市場価格が1,000円の銘柄を購入する場合、購入価格が1,002円、売却価格が998円になるという意味です。
銘柄にもよりますが、平日は夜21時まで取引可能。日中仕事で忙しい方でもじっくり銘柄を選べます。
株の少額投資ができるおすすめの証券会社3. PayPay証券
少額投資サービス名 | 対象銘柄 | 最小取引単位 | 取引手数料(税込) |
---|---|---|---|
株式投資(区別なし) | 155銘柄 | 1,000円 | 取引時間帯に応じて0.5%〜1.0% のスプレッドが発生 |
- 1株単位ではなく1,000円単位で売買できる
- 初心者でも選びやすい銘柄ラインアップ
- スマホメインの取引なので、隙間時間で売買可能
PayPay証券の最大の特徴は、取引単位が1株単位ではなく「1,000円以上1,000円単位」で売買ができることです。例えば1株2,000円の銘柄でも、1,000円(0.5株)から買うことができるので、株価ではなく自分の予算に応じて株を買うことができます。
銘柄数は少ないものの、日本を代表する優良銘柄のみを取り扱っているので、投資初心者の方にとっては選びやすいラインアップといえるでしょう。
メインがスマートフォンからの取引であるため、隙間時間があればいつでもスマートフォンから株の売買ができます。
株の少額投資ができるおすすめの証券会社4. マネックス証券
少額投資サービス名 | 対象銘柄 | 最小取引単位 | 取引手数料(税込) |
---|---|---|---|
ワン株(単元未満株) | ・東証上場銘柄、名証上場銘柄 ・福証、札証上場銘は売却のみ可能 |
1株 | 買付手数料:無料
売却手数料: 約定代金の0.55% (最低手数料52円) |
- ワン株は買付手数料無料、売却手数料52円
- 保有株数に応じて配当金や株主優待も
マネックス証券が提供している単元未満株「ワン株」の特徴は、 何といっても取引手数料が安いこと。買付手数料は無料で、売却時の最低手数料も52円です。
保有株数に応じて、配当金や株主優待を受けることができます。また、少しずつ買い足して単元株に達した場合は単元化も可能です。
株の少額投資ができるおすすめの証券会社5. SBI証券
少額投資サービス名 | 対象銘柄 | 最小取引単位 | 取引手数料(税込) |
---|---|---|---|
S株(単元未満株) | ・東証上場銘柄 ・名証、福証、札証上場銘は売却のみ可能 |
1株 | 約定代金の0.55% (最低手数料55円) |
- ネット証券でトップを争う人気の証券会社
- 豊富な金融商品と低い手数料が特徴
SBI証券の特徴は、何といってもネット証券でトップを争うほどの知名度と人気です。SBI証券では、業界屈指の豊富な金融商品を業界トップクラスの低い手数料で売買できます。「単元未満株をきっかけに他の投資も始めてみたい」という人には特におすすめです。
月に何回も取引をするのであれば、月間の約定代金合計額で手数料が決まる同じSBI証券グループのSBIネオモバイル証券のほうが安くなりますが、頻繁に売買しないのであれば約定ごとに手数料がかかるSBI証券のほうが安くなる場合もあります。ご自身の投資スタイルに合わせて選びましょう。
株の少額投資ならNISAも選択肢に
利益が非課税になるNISA
NISAという制度をご存じの方は多いでしょう。NISAでは新規投資額で毎年120万円まで、株式や投資信託などへの投資から得られる配当金・分配金や譲渡益が非課税になります。
NISAとは、2014年1月にスタートした、少額からの投資を行う方のための非課税制度です。
例えば投資信託に投資した場合、「普通分配金」と売却時の「譲渡益」が非課税になります。
出典:金融庁「NISAの概要」
例えば、100万円で買った株が200万円に値上がりした場合、本来は100万円の利益に対して20万3,150円(20.315%)の税金がかかりますが、NISAでの取引であれば100万円をそのまま受け取れます。
NISAと株の少額投資は相性が良い
NISAと単元未満株などの少額投資は、実は非常に相性が良いです。
1万2,000円を超える株は「単元株」では120万円を超えてしまうためNISA口座では買えません。また「単元株」で80万円分の株を買ってしまうと、残りの40万円の非課税枠を使うには100株で40万円以内の株から選ぶことになるため、選択肢が限られてしまいます。
しかしNISA口座で「単元未満株」を利用すれば、「120万円の範囲で数銘柄を組み合わせる」のではなく「銘柄を自由に組み合わせて120万円分選べる」という買い方ができます。
すでにNISA口座を活用していて、その年の非課税枠が残りわずかであっても、単元未満株であれば残りの枠を有効に使えるでしょう。
松岡紀史(ライツワードFP事務所代表)
未成年や学生でも株の少額投資はできる?
少額から投資が始められるということであれば、未成年や学生の方でも興味がある人はいるでしょう。また「お金の教育の一環として、子どもに株式投資を経験させてみたい」という親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
原則として証券口座の開設に年齢制限は設けられていないので、未成年でも学生でも口座を開設することは可能です。ただし、一般的に未成年が口座を開設する場合は、親の同意と親も同じ証券会社に口座を開設することなどの条件があります。
20歳以上であれば学生でも親の許可なく口座開設は可能ですが、収入などの条件で口座開設の審査に通らないこともあるので注意しましょう。
いくらあれば株の少額投資を始められる?
株の少額投資、最低金額は100円
一口に「株」といってもその価格はさまざまで、1株10円程度から買える銘柄もあれば、1株8万円近くする銘柄もあります(2021年9月17日現在)。
株は原則として100株単位で売買されるので、本来であれば単元株を買うためには1,000円~800万円の資金が必要です。しかし単元未満株は1株から買えるので、手数料を含めても100円ほどあれば株式投資を経験できます。
1万円あったらどんな銘柄に投資したらいい?
単元未満株のサービスを使えば最低100円で株式投資を経験できますが、さすがに100円では買える銘柄は多くありません。
先ほど株価は10円から8万円まで幅があることをご紹介しましたが、株価が1万円を超えているのは上場企業約3,910社のうち、60社ほどです(2021年9月17日現在)。つまり、1万円あれば約3,850社から自分の好きな会社の株を選ぶことができます。ぜひ自分が応援したい会社の株を買ってみましょう。
せっかく投資をするなら将来値上がりするものを選びたいものです。そこで、株価の割安・割高を判断するための指標である「PER」と「PBR」をご紹介します。1万円を有効活用するためにもこれらの指標を知っていると、株の銘柄選びの一つの材料にできるでしょう。
【PER(株価収益率)】
PERは企業の利益水準をもとに株価の割安・割高を判断する指標です。以下の式で算出されます。
・PER(株価収益率)(倍) = 株価 ÷ 1株当たり純利益
PERは業種によって大きく変わるため、同業種の他の会社と比べて相対的に高いほど割高、低いほど割安と判断できます。
【PBR(株価純資産倍率)】
PBRは、企業の資産価値をもとに株価の割安・割高を判断する指標です。
・PBR(株価純資産倍率)(倍) = 株価 ÷ 1株当たり純資産
PBRは、株価が1株当たり純資産の何倍になっているか表します。こちらも相対的に高いほど割高、低いほど割安と判断できます。
松岡紀史(ライツワードFP事務所代表)
5万円あったらどんな銘柄に投資したらいい?
1万円あればほとんどの銘柄が買えることをご紹介しましたが、さらに5万円あれば複数の銘柄を買うことができます。もちろん同じ銘柄を2株、3株と買うこともできますが、複数の株を買えるならワンランク上の「分散投資」に挑戦しましょう。
分散投資とは、投資対象を複数に分けることで、そのうちの一つが値下がりしても全体としてのリスクを減らせる投資方法です。
例えば予算2万円でA社の株価だけを買うと、その株価が半分になれば資産も半分になってしまいます。しかし、予算を1万円ずつA社とB社に振り分けると、A社の株価が半分になっても損失は4分の1で済みますし、B社の株価によっては損失をカバーできるかもしません。
分散投資で最も大切なのは、複数の投資先を選ぶ際にできるだけ異なる業種の会社を選ぶことです。
先ほどの例で、A社の業績が悪くなった時にB社の業績も悪くなるなら、分散投資をした意味がありません。5万円で分散投資をするときは、できるだけ異なる値動きをするような組み合わせを選びましょう。
少額投資を利用して気軽に株を始めてみよう
株式投資に興味があっても、1社の株を買うのに10万円必要となれば、なかなか気軽に始めることはできないでしょう。しかし、証券会社によっては単元未満株やミニ株など少額で株式を買えるサービスがあり、数千円、数万円あれば株式に投資することができます。
数千円であれば失敗しても勉強代と思えますし、実際に投資を始めてみるといろいろな分野に興味が広がるはずです。今回ご紹介したサービスで気になるものがあれば、ぜひ利用してみてください。
株の少額投資についてQ&A
・SBIネオモバイル証券
・LINE証券
・PayPay証券
・マネックス証券
・SBI証券
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