食堂だけでは不十分。家庭から変える親子支援
子ども食堂の枠を超えた新たな取り組みも進んでいる。大阪・西成で年間累計7000人が訪れる「にしなり☆こども食堂」を運営する川辺康子氏は「結局、家庭環境がよくならないと子どもの幸せは実現できない」と考え、今年2月にクラウドファンディングを利用。約2000万円を集めて、新たに子どもとその親のための居場所づくりに動いている。
「地区の集会所を改装して、滞在型親子支援の拠点にするためのお金を募ったんです。自宅を離れて子どもとその親が滞在し、地域の人たちと触れ合う“地域の実家”です」
着実に子ども支援の活動は地域に根付いてきているが、葛藤や課題を抱えている運営者は多い。
沖縄で活動する前出の細田氏は「子ども食堂という名前自体が差別だ、とクレームつけられたことがある」と漏らす。むすびえ理事長の湯浅氏は、「貧困対策の側面ばかりが報じられてきたため、いまだに『子ども食堂=貧困者が集まる場所』と考えてしまう人がいる」と指摘する。
地域交流拠点として、「地域で子どもを見守るための場所」として多くの子ども食堂が運営されているにもかかわらず、貧困対策というミスリードが支援を必要とする子どもたちの足を遠のかせてしまっているケースもあるのだ。
大人の自己満足の場になる危険性も
都内のある子ども食堂の運営者は、「大人の自己満足の場になっている面がある」という指摘もする。
「ボランテイアに頼らなければ子ども食堂は成り立ちませんが、『いいことをやってます』とアピールをする人や運営団体もある。皮肉を込めていうと『大人食堂』になっている。
’19年には神奈川の子ども食堂の運営者が子どもに対する暴行事件を起こし、’20年には東京でもボランティア女性に対する性暴力で運営団体理事長が解任される騒動がありました。暴れる子、コミュニケーションが苦手な子、心に傷を負った子など、いろんな子どもたちが集まりますが、急速に子ども食堂が増えたことで、大人が抱える問題も表面化している」