十分な食事が取れていなかったり、孤食を強いられている子どもたちのため――そんな思いから始まった「子ども食堂」が急速に増えている。食堂を通じて子どもの環境は変わったのか? 実態を探った。
一人の子どもを支援したい。私的な思いから広がる居場所
「美味しすぎて、もうお腹いっぱい!」
肉じゃがを平らげた女の子が満足げな表情を浮かべるなか、先に食事を終えた2人の男の子はゲームに興じていた。「おもちゃのちゃっちゃ」と歌いながら積み木で遊ぶ児童や机に向かって勉強を始める子の姿も。無料で食事を提供する子ども食堂「子供の広場in那覇」は、休日にも関わらず、実に賑やかだった。
「毎日こんなです(笑)」
“広場”を運営するビクトリーチャーチ代表の細田光雄氏が話すように、この食堂は火曜日を除いてほぼ毎日開店。ボランティアの大人たちが食事づくりに加えて、子どもたちの学習支援にも取り組んでいるという。食べて遊んで学ぶ――学校でもなく家でもない、子どもたちの第3の居場所なのだ。
子ども食堂の総数は、5年で約20倍に
2016年「朝日新聞調べ」、2018年以降「全国こども食堂支援センター・むすびえ調べ」
実は近年、全国で同じような光景が広がっている。子ども食堂の支援を行っているNPO法人「全国子ども食堂支援センターむすびえ」によると、’16年の319箇所から’21年には6007箇所に増加。月1開催、週1開店など頻度はまちまちだが、子ども食堂の総数は、5年で約20倍にもなっているのだ。
むすびえ理事長の湯浅誠氏は、その背景を次のように解説する。
「子ども食堂は、子ども1人でも行ける無料または低額の食堂。貧困対策の一つの手段と見られがちですが、多くの運営者は地域交流拠点として食堂を開いています。この視点が“ちょうどいい”のです。町づくりや商店街の活性化ほど仰々しくなく、誰でも手弁当でも始められる。だから、少子化の進展で寂しくなった地域を何とかしたいと考える一般の人たちが自発的に動き出し、その取り組みが認知されるようになったここ5年で一気に子ども食堂が増えたのです」
「子どもの広場」を運営する細田光雄氏(右)
実際、前出の細田氏は「数人の子どものために食事を振る舞うほかの食堂を見学して、これなら自分たちも家計の範囲内でできると考えた」と話す。