親にはいつまでも元気でいてもらいたいもの。ですが将来、介護が必要にならないとは限りません。
こうしたことを一度考え始めると、「実家が遠いので通えそうもない」「介護費用って高そう」「介護施設ってどんな種類があるんだろう」「そもそも入れないのでは?」など、悩みは尽きません。
しかし、実際に介護が必要になってから慌てて準備するのでは遅いでしょう。
家族の介護で不安なこと・困ること
介護について、ほかの皆はどんなことを心配しているのでしょうか。実際に介護を経験した人の場合も含めて確認してみましょう。
第一生命保険が2015年に実施した「今後の生活に関するアンケート調査」では、介護に関する回答のデータがまとまっています。調査の対象は全国の18~69歳の男女、有効回答数は7,256件です。
介護に対する不安について聞いた質問では(複数回答)、「サービスの利用料が高そう」が約50%と最も高く、次いで「満足のいくサービスが受けられるか不安」「外部の人が家に入ることに抵抗感」「手続きがわかりにくそう」となっています。皆さんの不安と比べていかがでしょうか。
実際に介護を経験したことがあるという人が困った(または困っている)ことについて、上位に入った回答は「先の見通しがたたなかった」ことでした。介護がいつまで続くのかは、大きな精神的負担につながるのでしょう。
事前に介護についてサービスの内容や料金について知識をつけたり、相談できる人を見つけたりできれば、こうした不安も軽くできるのではないでしょうか。
介護保険制度とは サービスにかかる費用は原則1割
ここで基本である「介護保険」について、ざっくりとおさらいしておきましょう。
介護保険制度は簡単にいえば、40歳以上の加入者が保険料を出し合い、介護が必要になったら介護サービスを安価に受けられる制度です。
介護保険で介護サービスが受けられるのは、65歳以上の第1号被保険者と、加齢による病気で介護が必要になった40歳~64歳で医療保険(健康保険組合や国民健康保険など)に加入している第2号被保険者です。
要介護認定を受けて、要介護状態(要支援1から要介護5までの7段階)に応じたサービスを利用できます。
読者の皆さんも40歳以上で会社勤めをしていれば、給与から介護保険料が差し引かれていることでしょう。なお介護サービスを利用したときの負担は、原則として介護サービス費用の1割です。
介護サービスを利用するにはまず「サービス計画」を作ってもらう
親の介護が必要と感じたら、市区町村の窓口に相談し、要介護認定の申請の手続きをしましょう。
認定で要介護度が決定したら、ケアマネージャーに依頼して「介護サービス計画」を作成します。計画の作成に費用はかかりません。
介護サービスは、自宅で受ける、施設に通って受ける、施設で生活して受ける、福祉用具のレンタル・購入や住宅改修費の支給などが挙げられます。
介護にはどれくらいの年数、費用がかかる?
介護には一体、いくらくらいかかるのでしょうか。
住宅改修や介護用ベッドの購入などの初期費用は平均80万円、月々の費用の平均が約7.9万円かかるとみられます(生命保険文化センター「平成27年度生命保険に関する全国実態調査」)。介護期間の平均は4年11ヵ月となっており、費用の合計は546万円にのぼります。
あくまで平均ではありますが、心づもりしておいて困ることはないですね。
介護離職しないための支援制度
「介護に追われて仕事をやめなければいけなくなるのでは」--。
こうした心配を持っている人もいるでしょう。厚生労働省の「平成28年雇用動向調査」によると、年間に離職した人は約726万人でした。個人的理由で離職した約520万人のうち、介護・看護を理由とする人は約8.7万人です。
介護に追われても、なるべく仕事を続けようとする意識でいたほうがよいでしょう。介護による離職は、自分を経済的・精神的・肉体的に追い込んでしまうことがあります。
93日と限りがある介護休業の期間は「今後、仕事と介護を両立するために体制を整える準備期間」と考えるといいでしょう。その間に地域包括支援センターや、ケアマネージャーなどとしっかり相談し、制度や介護保険のサービスを上手に利用しながら、介護を続けられる態勢を作りましょう。
在宅介護だけでなく施設介護も考えておく
住み慣れた自宅で在宅介護を希望する人は多いですが、施設についても知っておきましょう。
施設には、公的介護保険の施設サービスに指定されているものがあります。施設によってはすぐには入所できない場合もあります。その場合、費用の負担は大きくなりますが、有料老人ホームなど民間の施設に入所するという選択肢もあります。
まずは親・兄弟姉妹で話し合おう
介護は誰もが直面する可能性がある問題です。たしかに「親に介護が必要になったらどうするか」という話題はなかなか切り出しにくいものですが、実際に介護が必要になってから慌てるのでは遅いのです。
連休やお盆、正月など実家に帰省した際に、まずは兄弟姉妹で話し合い、あなたが納付し始めた介護保険料のことを話のタネにして、ご両親にも話してみてはいかがでしょうか。
文・藤原洋子(ファイナンシャル・プランナー)
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