ハワード・シュルツ――「貯蓄には手をつけず、投資家を探す」
スターバックス会長兼CEOのシュルツ氏は、「事業を成長させたいのならば自分の貯蓄には手をつけず、他人のお金=投資を役立てろ」という思想の持主だ。1980年代、スタートアップ設立に40万ドル、8軒のエクスプレッソバーの開店に1..4億ドル必要だったシュルツ氏がアプローチした投資家の数は242人。そのうち義父を含む217人に投資を断られたという。
義父が出資を断った理由は、「身重の娘をいつまで働かせる気だ」という懸念からだった。「起業に熱中するあまり娘を大事にしていない」と公園のベンチで責められたシュルツ氏は、その場で涙を流したそうだ。
義父に責められても、200人以上から出資を断られても諦めなかったシュルツ氏の信念は、やがて花開くことになる。最終的には25人から資金を調達できたおかげで、スターバックスを世界のコーヒーチェーン店に育てることに成功した。
下積み時代のシュルツ氏に、貯蓄があったのかなかったのかは定かではない。奥さんが身重で働いていたということは、貯蓄はあまりなかった、あるいはまったくなかったのかも知れない。緊急用に置いておきたかったということも考えられる。
いずれにせよ起業や事業拡大で全財産をつぎ込んでしまう人も多いが、そうではなくてまずはお金をもっている人から出資を集める。今はクラウドファンディングなども定着しており、資金調達の機会も作りやすい。
「自分のお金を使わなければ減ることもない」という、シュルツ氏の発想は若干ずるいような印象を受けると同時に非常に合理的だ。
ジェフ・ベゾス ――「塵も積もれば山となる」 小さな節約をあなどるな
「塵も積もれば山となる」を地でいく世界一のお金持ち、ベゾス氏は、1994年にAmazonを立ち上げた当初、古いドアから自分のオフィスデスクを手作りしたそうだ。この辺りにすでに根っからの節約家の性質がにじみでている。不要なものは買わない、安くあげれるものは安くあげるという、徹底した節約スタイルだ。
初心を忘れることなく2009年には社内の自販機の電球をすべて取り外すことで、何万ドルもの光熱費節約に成功した―とベゾス氏自ら投資家宛ての手紙で報告。Amazonのような国際大手にとっては微々たる金額―などとあなどってはいけない。こまごまとした節約を続けることが、結果的に大きな貯蓄につながる。貯蓄したお金を投資すれば、さらに大きく増やすこともできる。
貯蓄するお金がないという人は、「無駄だな、必要ないな」と感じるものを、少しづつでも生活から排除していってはどうだろうか。例えば携帯やインターネットの利用プランをもっとお手頃なものに切り替える、コンビニに立ち寄る回数を減らす、水道の流しっぱなしや電気のつけっぱなしに気をつけてみるだけで、違いが見えてくるかも知れない。