“気象病”という言葉を聞いたことがありますか? 気圧や気温、湿度などの気象変化にともなって起きるさまざまな不調のことを指すもので、この気象病に悩む人は年々増加しているそうです。
写真はイメージです(以下同)
「気象病・天気病外来」で日々診療にあたる「せたがや内科・神経内科クリニック」久手堅司(くでけん・つかさ)院長によると、気象病外来を受診する患者さんの7~8割は女性で、しかも20~40代がもっとも多いのだとか。 みなさんの中にも、「雨の日は頭痛がする」「季節の変わり目は毎日しんどい」といった症状に心当たりのある人がいるのでは?
天気次第で不調に見舞われるなんて煩わしいし、QOLも下がってしまいますよね。そんなやっかいな気象病の原因や対策について、久手堅先生に詳しく聞いてみました。
自律神経の乱れが気象病を引き起こす
そもそもなぜ、気象の変化が私たちの体に不調をもたらすのでしょうか。その一番の原因は自律神経にあると久手堅先生は言います。
「離陸した飛行機や上昇するエレベーターの中で耳がキーンとなったことがある人は多いと思いますが、それは耳の奥の“内耳”に気圧を感じ取る機能があるから。 内耳は天候による気圧の変化も感じ取り、その変化を自律神経に伝えるのですが、自律神経の働きが弱っているとうまく変化に対応できずに頭痛やめまいなどの症状が出てしまうのです」(久手堅先生、以下同)
気温や湿度の変化で不調になるのも、同じく自律神経のせいだとか。
「人間の体温や心拍数などは、自律神経が自動的に調節することで適切な状態に保たれています。たとえば、暑くなったら汗をかいたり血管を広げ放熱したりして体温を下げるのも、自律神経の働きによるもの。 でも、寒暖差が大きかったり、湿度が高くて汗をうまくかけなかったりする状態が続くと、自律神経に疲労が蓄積しまうんですね。その結果、さまざまな不調が出てきてしまうわけです」
20~40代女性は生理などホルモンバランスの関係で、ただでさえ自律神経の働きが乱れがち。だから気象病に悩む人も多くなってしまうそうです。
コロナ禍のストレスも気象病の一因に
また、ストレスも自律神経の働きを乱し気象病を引き起こす原因になるそう。
「自律神経は本来、アクセルの役割を持つ交感神経と、ブレーキの役割を持つ副交感神経が、バランスよく働くことで機能しています。仕事中は交感神経が働き、リラックスしているときは副交感神経が働く……という具合ですね。 でも、緊張やストレスの多い生活をしていると、この交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなり、自律神経の働きが乱れがちになってしまうのです」
そのため、何かとストレスを感じやすいこのコロナ禍においては、気象病に悩む人も増えているのだとか。
「ストレスというと精神的なストレスを思い浮かべますが、スマホやPCの見過ぎで疲れがたまるといった肉体的なストレスも自律神経に悪影響をおよぼします。コロナ禍ではさまざまな精神的ストレスを感じやすいうえ、リモートワークによる活動不足にも陥りやすいので、どうしても自律神経が乱れやすくなるのでしょう」
毎朝決まった時間に起きて出勤するというアクションがなくなったことで自律神経が乱れ、気象病に悩まされるようになった人も少なくないそうです。
あなたは大丈夫? 気象病チェック
このように、気象病は誰にでも起こりうる身近な問題。はっきりとした原因がないのに調子が悪いことが多いという人は、以下のチェックリストで気象病の可能性を調べてみましょう。
【気象病チェックリスト】
□①天候が変わる時に体調が悪い。 □②雨が降る前や天候が変わる前に、何となく予測が出来る。 □③頭痛が起こりやすい。 □④耳鳴りやめまいが起こりやすい。 □⑤肩こり、首こりがある。首の外傷歴がある。姿勢が悪く、猫背、反り腰である、 □⑥乗り物酔いをしやすい。 □⑦PC作業やスマートフォンの使用時間が長い。(1日平均4時間以上) □⑧全身を使った運動やストレッチをすることが少ない。 □⑨歯のくいしばりや歯ぎしりをする。歯の治療歴が多い。顎関節症と言われたことがある。 □⑩エアコンが効いている環境にいることが多い。夏冬ともにエアコンが苦手である。 □⑪日常的にストレス(とくに精神的なストレス)を感じている。 □⑫更年期障害ではないかと思うことがある。 □⑬胃腸の調子が悪く、便秘や下痢をしがち。ヨーグルトなどの発酵食品をあまり食べない。 罫線いかがでしたか? ①または②に当てはまる人は気象病の可能性大で、③~⑬のうち3つ以上当てはまる人は気象病予備軍になります。
3~4月は新生活での緊張が続くなどストレスが増えがちなうえ、寒暖差が大きく天気も変わりやすい、気象病には要注意な時期。気になる結果だった人は早めに対策をしたほうがいいかもしれません。