映画の様式美をマックス使い倒す
――映画冒頭にはウィトゲンシュタインの言葉が引用され、本作公式ホームページに記載のトリビアとしては、立石が三島由紀夫を尊敬していたりと、様々な文化が織り交ぜられていますが。
松永:シナリオを作る過程でどんどん生まれていったんです。
ディーン:日本の文脈みたいなものはすごく大切にしたと思います。今の社会の構造になったのはなぜだろうと逆算していったときに、明治維新、世界大戦、戦後の高度経済成長や三島由紀夫の全共闘など、政治的にも経済的にもいろんな面で蓄積があったから必ずどこかで連鎖反応で現状の日本になっているわけじゃないですか。三島や吉田松蔭の言葉は、本作で一石三鳥くらいの効果があると思います(笑)。
松永:切腹という行為もそうですよね。そもそもあの行為は何なんだとろうと。立石が袴でバイクに乗っていたり、映像的に圧倒的に綺麗なんだけど、やってることは相当狂気という面白さが、映像美となり、ポエムになって怒濤のように押し寄せてきます。
ディーン:映画の様式美をマックス使い倒すという。
松永:言語化するのが難しいです。説明しないといけない義務はあるかもしれませんが、これは小説ではなく、映像じゃないと出来ないものだと思います。
切腹のシーンは「ベンチプレスで3ケタ上げている感覚」
――切腹のシーンは、三島の『憂国』のような世界観でした。
松永:そうですね。
ディーン:でも、エアーという(笑)。
松永:形だけという。でも、あのショットを撮っているときは、感動しました。
ディーン:切腹したことないから、どうしたらいいかと思って。
松永:起き上がったときの顔を見て、凄いなと思いました。
ディーン:筋トレをやっててよかったなと思いました。ベンチプレスで3ケタをあげているときの感覚でした。自分の肉を押し貫くって、多分すごい力が必要で、防衛本能があるので自分の体重以上の力を込めないと刺さらないと思うんです。切腹のシーンを撮り終えた後は、筋トレ後のような清々しい顔だったと思います(笑)。
松永:スタッフがすごいいいショットが撮れたと言っていたので、現場も狂ってるなと(笑)。