推し活は人様に自慢できることではないとも思ってます
――自分自身の視線が気になるって人もいますよね。知人で「推しは一日10件は仕事を入れているのに私は頑張ってない。推しは毎日体を鍛えているのに私はすぐジムもサボっちゃう」と悩んでいる女性がいまして。美しい推しと現実の自分にコンプレックスが刺激されてしまったみたいなんです。
「それこそ『推し足りてない!』ですよ。自分のことを考えてる暇があるってことは推し足りてない。
あと、やっぱり自分と同じような人のことを好きになるわけないじゃないですか。私の推しも頑張り屋さんだしめちゃくちゃ働いてて、それを見て私も頑張れるところはあります。でも、自分と違うタイプだから好きになったんだと思うんです。そこには憧れがあるわけだし、自分と乖離(かいり)があるのは当然だと思いますよ」
ジェーン・スーさん
――あと、年下の若い推しができた時に「私はこの子を消費している」という罪悪感に襲われることが40代以降の女性には少なくないようなのですが。
「推しに対するある種の消費に関しては、私も考えます。人を人とも思わない瞬間がこうも簡単に訪れるのかと、おののいたこともあります。自分の中にそんな欲望が存在することの恐ろしさはありますよ。
推し活は好きにやればいいけど、人様に自慢できることではないとも思ってます。少し恥じらいを持ちながら続けられたらな、と私は思ってます。」
推しと1対1の関係を濁したくない
――推し活は楽しいけれど、「推し活最高!どんどんやろうぜ!」というスタンスでは決してないのですね。
「それは人によると思うけど、私の場合は推しの名前を出さないからこそ本に書けたところはありますね。私が推していることを推しに知られるのはいいんです。でも周りの人、特にメディアに知られるのがすごく嫌で。
言いたくない理由は『好きな人の名前を知られたくない』って中学生みたいな気持ちもあるし、『おだやかな現場にドカドカ入っていって古参に嫌な思いをさせたくない』というのもある。メディアで『スーさんの推しを紹介してください!』とか言われて私が好き放題言って、それを読んだり聴いたりした古参が『魅力はそこじゃないよ』と思うこともあるでしょうし。何より『対談しませんか?』なんて話がきたら『イヤー!』ってなっちゃうんですよね」
――ビジネスにからめたいんじゃない、純粋に推しと推す人という立ち位置でいたいということですか?
「本に書いてる時点でビジネスなんですけど、1対1の関係を濁(にご)したくないというか。もう少し神聖なものにしておきたいんですよ。不純物を混ぜるなってことですね。推し活について、私はウソは一つも書いていませんが全部を書いているわけでもない。それくらい大切にしているものなんです」
「すべては推しが正しい、これは信仰です(笑)」
――では最後に、推し活をしている、もしくはこれから推し活を始めるかもしれない同年代の女性たちにアドバイスをお願いします。
「初めての推しに対して生まれる感情には戸惑うこともあると思いますが、まずは自分にあるゲスい欲望を認めることかなあ。その自覚があるかないかで、見えてくるものはだいぶ変わっていくと思いますし、私はその自覚を持っていたい。
ただ、キラキラしてる人を見てドキドキする……そんな感情を教えてくれただけでも推しにはありがとうと言いたい。すべては推しが正しい、これは信仰です(笑)」
――ありがとうございました!
<文/もちづき千代子> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 もちづき千代子 フリーライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像エディター・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を開始。度を超したぽっちゃり体型がチャームポイント。Twitter:@kyan__tama
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