コラムニスト、ラジオパーソナリティとして同世代の女性たちから圧倒的な支持を受けているジェーン・スーさん。

「すべては推しが正しい、これは信仰です」ジェーン・スーに聞く“推し活”
(画像=『女子SPA!』より引用)

ジェーン・スーさん

12月15日に最新エッセイ『ひとまず上出来』(文藝春秋)を上梓したタイミングでお話を聞きました。SNSで大きな話題を呼んだ推し活事情についても詳しく教えてもらっています!

コロナ禍でバレバレになった弱者へのしわ寄せ

――『ひとまず上出来』は2016年から2021年まで雑誌「CREA」で連載していたエッセイをまとめたものですが、その間にはコロナ禍という大きな出来事が起きています。これを境に女性たちの生き方に起きた変化をどうとらえていますか?

「少し前からSDGs(エスディージーズ)や多様性に寛容な社会が謳(うた)われていましたが、コロナ禍になってバレバレになったのは、危機的状況になれば、一番のしわ寄せがあっという間に弱者にいくということ。

今は元の生活に戻ろうという意識に変わっていますが、それで本当に良かったんだっけ?と。あの苦々しい気持ちを克服するのではなく忘れるために、そうあろうとしているのではないかと感じています」(ジェーン・スーさん 以下カギカッコ内同じ)

――自身では厳しさを体感していましたか?

「私はとても恵まれているので、それがほとんどなかったんです。だからこそ気まずいというか。何かできることはないかという気持ちはあるけれど、自分はダメージをくらっていないから、安易に寄りそうのも不躾(ぶしつけ)な気がして。でも、分断されないでいるためにはどうしたらいいかは色々考えてしまいますね」

「すべては推しが正しい、これは信仰です」ジェーン・スーに聞く“推し活”
(画像=『女子SPA!』より引用)

――コロナ禍は人と人との関わり方にも大きな影響を及ぼしました。この点について変わったことはありましたか?

「私はそもそも人と人とが集まってパーティみたいなことが超苦手だったし誘われても行かない人間なので、めちゃめちゃ楽でした(笑)。 もともと社交的で毎週末何かしら出かけてたような子は落ち込んでましたけど、引きこもりタイプだと皆たいして変わらないと言ってますね」

初めて「ギャー!」ってなる存在の推し

――そんな中で、ジェーン・スーさんは新たに”推し活”という楽しみを見つけたそうですね。『ひとまず上出来』でも、他のエッセイとは別の章立てで「ラブレター・フロム・ヘル、或いは天国で寝言。」として熱い想いを吐露していましたが……。

「はい。ちょうど一年くらい前から推しができました。あのエッセイ、石狩鍋の焼き石みたいって友達に言われたんですよ。バーンと投げ入れて分かりやすく沸騰してますよね(笑)。

これまでKIRINJIや総合格闘家の青木真也選手のように熱く応援する対象はいましたが、こんなにも『ギャー!』ってなる存在は初めてでした」

――推しが出来て良かったと実感したことは何でしょうか。

「一番はこのエッセイが書けたことでしょうね。

書く仕事を始めて8年くらい経ちますが、最初の頃は書きたいことがワッサワッサと出てきて自分の出力が追いつかないくらいだったんです。でも今は小手先で書けるようにもなってしまったし、連載も増えて書く内容に悩むくらいで。まるで書くことが修行ような感覚になっていたんです。

でも推しのことは、もう書かざるを得ないというか、書かせてくれ!くらいの突き動かされるような気持ちになって……。ありがたい気持ちでいっぱいですね。本当に」