推しを匿名にしてよかったこと
――推しが誰なのかは公表していませんよね。
「最初のうちはSNSでも誰だ?って探している人がいましたけど、今はもうそんな人いないと思う。むしろ匿名にしたことによって、推し活をしている方が『自分と同じ推しなんじゃないか』『まるで自分のことが書いてあるようだ』とか、自分に引き寄せて考えてくれるようになったんです」
――推しを具体的にしないことが読者やラジオリスナーからの支持につながったんですね。こういう形で推しがいることを発表した著名人って前代未聞ではないかと。
「抽象化したことで共感をもらえるようになったのは予想外でしたが、すごく嬉しいことです」
推しは、親の死に目を除いたら最優先事項
――推しがいるといないのとでは、生活はぜんぜん違いますか?
「違います。今、私にとって推しは、親の死に目を除いたら最優先事項です。推しの現場の予定が出るまでは、自分のイベントの日程が出せない、みたいな感じですね。
でも、何しろ推し活というものが初めてだったので、最初の頃は感情のシナプスのバリエーションが全然なくて。まるで中学生の片思いみたいになっちゃったんですよ。推しのことを考えてぼんやりしてしまっていたり。でも、推し活を続けているうちにそれ以外の『好き』も増えていましたね。根っこにあるものは変わっていないとは思いますが」
ジェーン・スーさん
――推しの愛し方は十人十色、いろいろありますからね。スーさんには、推しを共通で応援している推し仲間はいるのですか?
「友達を首根っこ捕まえて現場に連れていくというのはやっています。
正直、どこまで私の面(めん)が割れているのかがわからないけれど、場を荒らしたくないので全身黒い服を着ておとなし~くしてます。こないだベージュを着ていったら目立ちすぎてしまったので、やっぱり黒だな、と(笑)」
――すごい心遣い!そこまでしているのなら、推し現場の方でスーさんの素性はバレていなそうですね。
「ただ一人、前から私のツイッターをフォローしてくれてる人が現場にいるっぽいんですよ。たまに控え目にいいね!してくれているから、その人は絶対に私が現場にいることをわかってる。でも、話しかけたりもしてこないし、私のことも伏せ字ですら何も書かないでいてくれています。ほんとにいい現場。ありがとうございますって気持ちです」
――いい人ですね。現場の平穏さを物語っているエピソードです。
「そんな素晴らしい環境を作ってくれているのが、私の推しです。 これ、友達に良くないって言われたんですけどね。すべての話が『そんな〇〇な人が私の推しです』に帰結するマクラになってしまう(笑)」