【プロフィール】
長田奈七海さん Nanami Osada
立教大学を卒業後、社会人経験を積むために総合職の正社員として就職。その後オーストラリアのクイーンズランド大学へ留学。卒業後、ITコンサルタント企業にて社内通訳者として就業をし、現在は外資系飲料メーカーの社内通訳者としてご活躍中。
工藤:本日はよろしくお願いします。まずは長田さんと英語の出会いから教えてください。
長田:大学に行くまではそれほど英語に特化して勉強していたわけではないのですが、大学では海外に出て勉強したいという希望があり、留学制度のある大学を選びました。その時の留学体験がきっかけで英語を本格的に勉強するようになりました。
工藤:どのような学生生活でしたか?
長田:子供の頃からスポーツが好きで、大学生の時はラクロスに夢中になっていました。学部は異文化コミュニケーションで、英語と第二外国語、あとは様々な文化について勉強するコースでした。3か月間という短い期間だったのですが、アメリカに留学しました。帰国後大学に通訳コースがあるのを知って、いくつか授業を受講してみたところとにかく面白くて、現役の通訳者でもある先生の姿を見てかっこいいと思いました。女性として、こういう風な働き方があるんだということを知って、その時通訳者を目指そうと思いました。少しでも通訳の世界を知ろうと通訳エージェントで事務のバイトもしました。実際にフリーランスの通訳者さんに用意した資料を現場まで届けに行ったり、ブースを間近で見たりと、いつか私も…とワクワクする経験でした。
工藤:卒業後は総合職として就職されたんですね。
長田:はい、就職活動の時に自分はこれからどういう方向性でいくか一度立ち止まって考えました。通訳者になるために必要なことが2つあると思いました。一つは通訳学校に通うこと、そしてもう一つは企業で働いて社会人経験を積みつつ留学資金を貯めることでした。
工藤:21歳の時にそれだけ明確に夢が決まっていたのは、本当に素晴らしいことだと思います。
長田:通訳コースの先生にアドバイスをいただきながら考えました。通訳コースのある海外の大学に行きたかったのですが、何百万という留学資金が必要なのですぐに行くことはできませんでした。まずはきちんと日本で就職し、留学費用を貯めようと思いました。目標達成のために「英語を使う環境であること」、「留学資金を貯められる仕事であること」この2つに絞って就職活動をしました。決まった仕事は日常的に英語を使う環境でした。
工藤:目標がしっかりあるのでぶれないですね。職場では通訳や翻訳もやられていたんですね。
長田:面接の時に「通訳の業務に携わりたい」とはっきり伝えました。アメリカ本社からビジターが来る時に通訳を担当したり、日常的に通訳、翻訳の仕事があったわけではありませんが、機会があるごとにアピールしてやらせていただきました。
工藤:お仕事と勉強の両立はどうされていましたか?
長田:当時は残業もあったので、朝、会社に行く前を勉強時間に充てていました。毎朝6時過ぎの電車に乗って、カフェで1時間ぐらい勉強してから出勤していました。新聞の時事トピックを英語で読んで単語を覚えたり、定期的に英語で日記をつけたり。あとは英語を話す機会を作るためにインターナショナルパーティーに参加して外国人の友達を作りました。留学に行くために必要な英語力をつけるため、年単位の目標を立ててからやるべきことをブレイクダウンして、今週は毎日単語20個を覚える、今週はディクテーション30分取り組む、など毎月、毎週の目標を明確に決めていました。そして月単位でその目標が達成できたか、進捗を確認して目標とのずれを修正しながらコツコツ勉強に取り組みました。
工藤:資金の工面はどうしましたか?
長田:留学資金の工面には一番苦労しました。2年間の学費と生活費でおよそ700万円が必要でしたが、一体どうやって大金を貯めればいいのか見当がつきませんでした。そこでまずは、収入を増やす面と支出を減らす面でそれぞれ何ができるかブレインストーミングして、必要な金額を工面するためにできること全て取り組みました。支出を減らすには一円単位で全ての支出を管理し、 気軽に入りがちなコンビニは使わないなど、事前に決めておいた支出以外はしないように徹底しました。最終的には全額を留学前に貯めたわけではなく、貯蓄、ローン、現地での収入の3本柱で工面しました。現地ではいくつもバイトを掛け持ちしてほぼ毎日バイトで働いていました。そんな甲斐もありなんとか工面できましたが、資金不足は精神的に辛くなることもありました。でも諦めなければ必ず道は開けるので、とにかく絶対諦めない!と心に誓ってなんとかする方法を探し続けていました。
※留学資金が原因で留学に行くのを諦めて欲しくない、という気持ちから書かれたブログです。
工藤:オーストラリアにあるクイーンズランド大学に留学されて通訳を学ばれましたが、いかがでしたか?
長田:一言で言うと想像以上に楽しかったです。今まで私にとって「通訳」というのは遠い存在でした。どんなに専門書を読んでもあまり実感はありませんでした。しかし留学期間中は、毎日通訳のレッスンが受けられるので、毎日ワクワクしていたのを覚えています。まるで「通訳」との距離が急に近づいたような、今まで漠然としていた進むべき道が見えてきたような気持ちになりました。
工藤:勉強は苦しくなかったですか?
長田:いいえ、苦しいというよりも、楽しかったです。会社員時代の4年間は留学して勉強をしたいと思い続けていたので、 ついに海外で勉強できることがとにかく楽しかったです。クラスメートもみんなモチベーションが高いので刺激されました。会社員と比べたら仕事に対する責任も無く、自分のことだけに全ての時間を使えるので、今振り返っても夢のような2年間でした。
工藤:留学中は1日にどのくらい勉強されていたんですか?
長田:時間は計算したことがないのでよく分かりませんが、起きた瞬間からすぐ勉強したいという気持ちが湧き、 歯磨きしながら単語を覚えたり過去のテストを見直したりして1日中勉強していました。本当は音楽や映画、ドラマも好きだったのですが、せっかく勉強をしに来ているのに映画など見る時間がもったいないと感じ、1年目はまったく見ませんでした。当時は自転車通学中も独り言のように英語のスピーチを練習したり、ドライヤーで髪を乾かしながら英単語を覚えていました。気持ちは常に勉強モードでした。
工藤:パワーがすごいですね。
長田:でも2年目は少し余裕がでてきて、映画も英語の勉強になると思えるようになりました。
工藤:そうやって勉強をされてきて、自分の英語力が上がったなって感じる瞬間はありましたか?
長田:それが英語の力が伸びたと感じたのはつい最近なんです。留学中は、周りの仲間が優秀で、みんなは聞こえている英語が私にだけ聞こえないと感じることがもどかしかったです。通訳者として仕事をしていくうちに、ふとそういえば最近聞こえなくて困ることが少なくなってきたなと気づきました。
工藤:それはなぜでしょうか。持っているボキャブラリーが増えているっていうことかな?
長田:それもあると思います。1つには自分の中のボキャブラリーが増えたから。もう1つは精神論になってしまいますが、勉強している時はまだ気迫が足りなかったんじゃないかなと思います。仕事となると「目の前のこの人たちを困らせるわけにはいかない、何が何でも聞きとろう」というプレッシャーがあります。あと帰国後はもう少しリラックスして、興味のあるポッドキャストを英語で聞いたり、英語の本を読んだり、勉強モードではなく日常的に英語に触れるようにしたら自然に入ってくるようになってきたと感じます。
工藤:長田さんの話を聞いていたら、本当にやりたいことだけやっていらっしゃる感じがします。苦労はされていると思いますが、充実されていますね。
長田さん:そうですね。人生には回り道をした結果うまくいくということもありますが、やりたいことがはっきりしてるのであれば、あえて遠回りする必要はないかなと思っています。
工藤:社内通訳者として働いていて、技術的なこと以外に難しいなと思うことってあります?
長田:通訳は専門職なので、通訳者としてどこまでお手伝いしたら良いか迷うことがあります。
「ちょっと単語リストをまとめてくれますか」と頼まれたとします。私個人はできることなら引き受けたいと思うのですが、同業者の方とのバランスを考えます。なんでも「やりますやります」という姿勢では、周りの方に迷惑をかけてしまうこともありますので、難しいですね。
工藤:今現場では柔軟性は求められていますが、通訳はチームで組んで行う仕事なので、横の繋がりも大切ですよね。ところでプライベートではどんなことをされていますか?
長田:体を動かすことが好きなので、友達とビーチバレーをしたり、冬はスノーボードをしたりしています。あとは登山が好きで、マイナス20度の冬山にテントを背負って登り、山中に3泊することもあります。海も大好きなので、夏に日焼けで真っ黒になって、リモート通訳でよかったと思ったり(笑)
工藤:長田さんの将来について聞かせてください。これからチャレンジしてみたい分野などはありますか?
長田:将来的には国際問題や政治経済、環境問題など、もう少し世界に目を向けていきたいと思っています。世界平和と言うと大げさかもしれないけれど、地球にいる人すべてが幸せになるといいなと思うので、難民や紛争問題も考えていきたいトピックです。将来はそういう世界の意思決定の場に通訳者としていつか携わっていきたいと思っています。と同時にまずは目の前のことを一つひとつ大切に、どんなに少人数の小さい会議でも「今日はスムーズに会議ができた」と思っていただけるような通訳者になりたいと思っています。
工藤:私達コーディネーターは通訳者のスクリーンみたいな存在だと思っています。通訳者さんに「こうなりたい」という明確なビジョンがあると、私たちも仕事をお願いしやすいんです。通訳者が将来の目標を発信してくれると、私たちコーディネーターもずっと寄り添ってお仕事することができます。
工藤:これから通訳者を目指している方たちに是非メッセージをお願いします。
長田:まだ道半ばなので、偉そうなことは本当に言えないのですが、もしも、こういう通訳になりたという目標があって、それが心の底からの願いだったら、みなさん誰でも絶対に達成できると信じています。そして5年後10年後にどこでどんな人と働きたいか想像してみてください。そうすると今年、今月は何をすべきか自然と見えてくると思います。
タイトルの”Follow Your Heart”は私のモットーで、常に自分の心に耳を傾けるようにしています。通訳者を目指している方は、やりたいことは何なのか自分の心に素直に、ワクワクする方向に進んで行かれるのが良いのではないかと思います。
工藤:今日長田さんのお話を聞いてみて将来が楽しみです。国際会議の舞台に立たれるのを心待ちにしています。本日はどうもありがとうございました。
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