2021年1~11月、女子SPA!で大きな反響を呼んだ記事を、ジャンルごとにBEST5まで紹介します。こちらは、「ライフスタイル」ジャンルの人気記事です。(初公開日は1月10日) ================== 「よみタイ」で連載され、反響を呼んだコミックエッセイ『妻が口をきいてくれません』(野原広子著)が、衝撃的な描き下ろしを加えて単行本として発売された(2020年11月)。
野原広子「妻が口をきいてくれません」集英社
「妻が、もう3日も口をきいてくれない」という夫の告白で始まる物語は、その後、5年間の妻の沈黙を経て、大展開を迎える。 【前回の記事】⇒大反響コミック『妻が口をきいてくれません』作者に聞く。妻が夫を“あきらめていく”理由
夫と妻とでは抱く不満の質も違う
会社員の夫・誠の目線で描かれた第1章、妻・美咲の目線の第2章、そして最後は夫婦の章。夫と妻とでは、同じ日常を過ごしていてもまったく感覚や感情が違うこと、抱く不満の質も違うことなどがつぶさに描かれていく。 なぜ妻が口をきいてくれなくなったのかわからない夫・誠は、最初のうちは「それでも弁当は作ってくれるんだし、そのうちしゃべってくれるだろう」と甘く考えている。幼い子どもたちのめんどうもみるし家事もやっているのだから、と。 だが、1ヶ月もたつと焦りが生じ、今までやらなかった家事を率先してやったり、会社の女性の先輩に相談して、花やケーキを買って帰ったりと妻の機嫌をとるような行動に出る。それでもダメだとわかると焦りは怒りに変わる。それでも妻は口をきかない。3ヶ月たつと、怒りは恐怖とあきらめへと変化していく。このあたりの夫の心情がなんともせつない。
5年たち夫が気づいた生き地獄
それでも日常生活は続くのが、“家庭”というもののすごさだろう。特に子どもが幼いうちはルーティンですべてが回っていく。妻とは会話がなくても生活していける、と誠は妻の作った弁当を食べている。重要なことはスマホのメッセージ機能で伝えられるが、実際の会話はまったくない。子どもが話せば食卓は一見、にぎやかなのだ。 それでも夫の心にはぽっかりと穴があいている。それを彼はローカル地下アイドルで満たす。誰かの笑顔が自分に向けられていると思えるだけで少し癒やされる男心は、女性にはわかりづらいものかもしれない。その場しのぎの癒やしを繰り返すしかない男と、関係性の本質を見極めようとしている女の間には、わかりあえない溝がある。 だが、5年たったある日、彼は気づく。自分はずっと怯えていた。「自分は今、地獄にいる」のだ。妻からの無視は続き、大人びてきた長女には邪魔にされる。生き地獄だったのだ、と。 【画像をすべて見る】⇒画像をタップすると次の画像が見られます
野原広子「妻が口をきいてくれません」集英社より