12月は皆さんお忙しいでしょうから、金融講座も軽めの内容で行きたいと思います。「柔らかい文章を訳す②」と銘打ちましたが、①はなんと2018年の年末。一昨年かと思ったら、3年前だったとは。

金融・ビジネス翻訳では、時に文学的だったり、ひどく抽象的だったり、奇をてらいすぎていたり、といった文章があり、「文芸翻訳家かコピーライターに頼んでよ」と言いたくなることもしばしば。よってこの分野の翻訳者を目指している方には、堅い文章ばかりでなく、たまには柔らかい文章を自由な発想で訳してみることをお勧めします……という言い訳(?)のもと、ツイッター社本体の公式アカウント”Twitter”から発信されたツイート You’re stranded on a desert island. Your phone has charge for just one final Tweet. Go!
の翻訳に挑戦しました(第33回 柔らかい文章を訳す)。

今回も、今年投稿されたツイートの中から、
hello to everyone reading this while you should be doing something else
を訳してみましょう。そうそう、2018年とは翻訳業界の状況も大きく変わっていますので、まずはAI諸氏に訳していただきましょうか。

【Google翻訳氏】
あなたが何か他のことをしているはずなのにこれを読んでいるみんなにこんにちは
うーん、まだまだですな。everyoneとyouを訳し分けちゃってるところがいけません。評判の高いDeepL氏はどうでしょうか。

【DeepL氏】
他のことをしているはずなのに、これを読んでいる皆さん、こんにちは。
youの訳出を飛ばしたのは偉いけれど、正直、つまんない訳ですね(失礼)。

というわけで、さあ、人間であればこそのナチュラルな翻訳、試してみましょう。AI並みの硬め訳から脱線気味訳まで、いろいろやってみます。

hello to everyone reading this while you should be doing something else
●用事があるのにこれを読んでるアナタにごあいさつ。
●やあ。何かやることがあるんじゃないの。なのにこれを読んでるキミっていったい・・・
●ども。用事をほったらかしてツイッターチェック?
●やあ読者諸君。これを読んでくれるのはうれしいが、何か忘れてないかい?
●わーい、読んでくれてうれしいな。って、もっと他にやることあるでしょ。

2018年の無人島ツイートは、英語独特の表現というわけでもなかったので、ある意味で楽だったのですが、こういうのは難しいですね。

英語そのままでは内容的にも日本語としてもぎこちなさ過ぎるので、「キミっていったい」「うれしい」のように想像で少し情報を足す、reading thisを「ツイッターチェック」、everyone reading thisを「読者諸氏」のように日本語として自然な表現に変える等々、少しずつ手を入れるだけで、ずいぶん印象は変わります。while you should be doing something elseを「何か忘れている」「他にやることがあるだろう」のように裏返しの表現にするのもテクニックの一つ。

あとはリズム感ですね。最初の「何か他にやらなきゃいけないことがあるのに」は、会話調にはなっているので、耳で聞けばさらっと流せるかもしれませんが、文字にするとモタモタし過ぎ。

ああ難しい。

上記ではすべて皮肉っぽいニュアンスにしましたが、ツイッター担当者が素直に喜んでいる感じ(他にやることがあるのに、こんなとこでツイッターを見てくれて感謝)にもできると思います。年末年始、ぜひトライしてみてください。

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