先日のこと。朝のラジオ番組を聴いていたところ、興味深い内容が流れていました。それは「語学学習が認知症の予防になる」というものです。確か新聞記事の引用でした(・・・と、そのあたりの記憶が私の中で飛んでいること自体、記憶力面でヒヤリとしていますが、それは別問題ということで)。
キャスターの方のお話をまとめると、
*最近、シニアの間で英会話スクール熱が高まっている
*理由は、語学を学ぶことで脳を鍛えることになるため
*それにより、認知症を防ぐことにつながる
このような内容でした。
これを聴き、私は朝から内心ガッツポーズでした。何しろ私自身、一生通訳者として生きていこうと思っていますので、日々英語の勉強は続けています。仕事でも英語漬けです。ということならば、私は英会話学校へ行かなくても認知症対策はバッチリ、ということになりますよね。シメシメ。
・・・などと高をくくっていれば、どこかで反動(という名のしっぺ返し)は免れないでしょう。いかんせん、通訳の仕事をしていると認知症は防げるかもしれませんが、この業界特有の「心身への多大なる負担」があるからです。ご説明しましょう。
まず、「心臓への負担」。
私自身、医師ではないため学術的な論証は申し上げることができません。でも、とにかくこの仕事、「ひたすら緊張」しています。いざ同時通訳が始まれば、心拍数が一気に上がります。自覚できる「心臓ドキドキ音」は年季と現場での図太さ(?)で私自身、大分緩和されて来てはいます。でも、心拍数の乱高下があることに変わりありません。おそらくこれは血圧にも影響があるのではと想像します。私など高校時代から90/60という超低血圧ですが、本番中に血圧が一気に上がっていると確信しています。だからこそ、さほど血圧による影響を受けずに生きていられるのではと想像します。この低血圧数値、毎年人間ドックで指摘されますが、本人はいたって気にせず。
二つ目は「耳への負担」。
外部からの音をシャットアウトして話者の声に集中するため、業務中はヘッドホンを使います。ボリュームは自分で調整可能。さすがにMAXにすることはありませんが、それでもかなーり音量は上げています。私の場合、CNNの現場ではヘッドホンの左側を左耳にぴったりあてて英語音声を聞いています。が、右耳ヘッドホンはあえてずらしているのですね。なぜなら自分が訳した日本語を右耳で聞き、日本語として整合性がとれているか確認したいからです。ゆえに左耳「だけ」で英語を聞いているため(&右耳から私の日本語訳以外にも部屋の空調音や雑音などが入るため)、必然的に音量は大きくなります。難聴に気をつけないと大変なことになるでしょう。
3点目は「身体のこわばり」。
とにかく緊張しながら訳していますので、業務中は体がこわばっています。ちなみに人間というのは、お風呂に入れば筋肉が緩みますよね。その正反対の状態に身体が同時通訳中は置かれている、と想像すれば何となくおわかりいただけるのではないでしょうか。ただ当の本人は「ミスなくひたすら同時通訳することが至上命題」という状態にいます。よって私自身、自分の体がこわばっていることすら自覚できません。筋膜リリースならぬ、「筋膜リストレイント(restraint=束縛)」あるいは「筋膜キャプチャー(capture=捕縛)」という感じです。
というわけで、「認知症予防には語学学習」説。これに私は大いに賛同し、ぜひその恩恵にあやかりたいと思っています。が、通訳業に携わっていると、認知症になる前に「心耳体」に影響が出そうです。ちなみに「心技体(しんぎたい)」は武道における「精神力・技術力・体力」のことですが、「心耳体(しんじたい)」は完全なる私の造語で、「心臓・耳・体」の略です。
でも、そうした未来への心配より、目の前の好奇心を満たしてくれるのがこの仕事の醍醐味なのですよねえ。
(2021年11月23日)
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