不良な女の子に振り回される林遣都の愛おしさ
今回の『恋する寄生虫』で林遣都が演じるのは(違法なPCウイルスを開発してはいるが)性格としては真面目なほうであり、決して不良というわけではない。 だが、潔癖症のために他者を寄せ付けない性質は、他者に攻撃的な態度を取る不良とはかけ離れてはない、人間関係においての「不器用さ」を持つ役としては似ていると思うのだ。 しかも今回の役は、不器用な上に「不遜で毒舌な女子高生の面倒をみようとがんばる役柄」だ。不良も演じてきた林遣都が、今回は逆に不良な女の子に振り回されるというのも面白くて愛おしいし、その不器用さの中にやはり優しさがにじみ出てくる。 ときには感情をストレートに表に出すのが上手いことが、林遣都という俳優の魅力なのだと再確認できたのだ。史上もっとも応援したくなり、感情移入ができる林遣都を期待しても裏切られないだろう。
作品の道しるべにもなった演技
林遣都は、台本に「我に返り、除菌スプレーをまきまくる」と書かれたシーンの撮影において、監督から「人生最悪の日」であるという演出を受けたため、どうにもならない感情を爆発させるような「スプレーを投げつける」演技も付け加えたそうだ。 柿本ケンサク監督はこのサスペンス性もあるシーンの撮影のおかげで「キャラクターのトーンが決まった」「この方向に進んでいけば間違いない」と確信したのだとか。 林遣都は監督の意図を最大限に汲み取るだけでなく、作品の道しるべにもなるほどの演技をしたのだ。映画『恋する寄生虫』は「林遣都がいてこその作品」と言っても過言ではないだろう。