振り回される林遣都が愛おしい…『恋する寄生虫』の“不器用で優しい”演技がイイ
(画像=『女子SPA!』より引用)

 2021年11月12日より映画『恋する寄生虫』が公開されている。本作は三秋縋による同名小説を原案とした、林遣都と小松菜奈の共演によるラブストーリー映画だ。  その大きな特徴は「キラキラした幸せな恋愛映画」とは正反対のダウナーなトーンと、哲学的な思考を促してくれる特異な設定。そこから、ドラマ『世にも奇妙な物語』を連想する人も多いだろう。  それ以上に、100分というタイトな上映時間でまとめたテンポの良い作劇、凝りに凝った映像演出、そしてネタバレ厳禁の「完璧なラスト」に震えるほどの感動があり、ぜひ劇場でこそ堪能してほしいと願える秀作に仕上がっていた。  林遣都の「これまでで最大のハマり役では!?」と思うほどの役柄を筆頭に、作品の魅力を記していこう。

潔癖症の青年と視線恐怖症の女子高生のラブストーリー

振り回される林遣都が愛おしい…『恋する寄生虫』の“不器用で優しい”演技がイイ
(画像=『女子SPA!』より引用)

『恋する寄生虫』より (C)2021「恋する寄生虫」製作委員会 (以下、同じ)

 あらすじはこうだ。極度の潔癖症のため孤独に生きる青年・高坂(演・林遣都)は、和泉と名乗る謎の男から脅され、子どもを預かる仕事を担う。その子どもとは、視線恐怖症で不登校の女子高生・ひじり(演・小松菜奈)だった。  露悪的な言動をするひじりと、人間そのものを遠ざけていた高坂の関係は初めこそ不協和音が生じるが、やがて2人は惹かれあっていく。  この潔癖症の男という設定に、林遣都の存在感や佇まいがベストマッチだった。彼は汚い場所や物を嫌うだけでなく、生理的な理由で他者の介入さえも簡単には受け入れることができない。だが、「本心としては人間をそこまで嫌っているわけでもない」ように見えることも重要だ。

林遣都が演じてきた「不良性」を持つ役柄

 この役に林遣都が似合うのは、これまで善人とは言い難い、「不良性」を前面に押し出した役も演じてきたことも理由なのではないか。  例えば『HiGH&LOW』シリーズではギラついた野生的なイメージを全身全霊で体現していたし、『ギャングース』(2018)では毒舌ながらもはぐれ者たちを補佐するメンター的役割を、直近では『護られなかった者たちへ』(2021)でも不遜な口ぶりでも確かな信念を持ち行動する捜査官を演じてきた。  いずれも、第一印象こそ不良じみたやさぐれ感があり、ちょっと怖かったりもするのだが、「優しさ」がにじみ出てくるような役柄でもあった。それは、表面的には不良であっても、林遣都の特徴的な顔立ちやまなざしが、「それだけではない」複雑な内面を体現しているからだろう。