弾けるような笑顔を、夫には向けない

 それにしても、男女の気持ちは複雑なようで単純なのかもしれない。純はそんな笑顔を、もはや夫には向けない。夫に思わせぶりな体言止めで話したりもしない。夫にセックスを拒否され続けてきた恨み辛みが積もりに積もっているからだ。夫との現実的な生活は、「容赦がない」と彼女は言う。夫といると、世の中の不幸を一心に背負っているような表情になってしまうのだ。

 一方で、真山に対しては余裕がある。相手が自分に好意をもっていること、自身が既婚であることから、同僚への友情以上恋愛未満の気持ちを楽しもうとさえしているのだ。