モテてしまう“体言止めの女”

 さらにこのあと、彼女は物憂げに海のほうに近づき、「海の匂い」とつぶやく。海の匂いがどうしたのかはわからない。“体言止め”である。そして夕暮れの空を見上げて「月」と体言止めの追い打ちをかける。  

女性のキャラクターにもよるのだろうが、体言止めができる女はモテる。そう決めつけたくなるくらい、彼女には体言止めが合っている。同性だったら、「海の匂いがどうしたの」「月がどうしたの」と突っ込みたいところだが、男性は好きな女にそんなツッコミはしない。「オトナなら名詞だけつぶやくな。文章でしゃべれ」と言いたくもなる。だが、体言止めは、そのアンバランスな雰囲気が余韻につながり、女性自身の魅力と男性には映る可能性があるのだと思う。  

しれっと思わせぶりと体言止めができて、なおかつ弾けるような笑顔を見せられたら真山くん、人妻に惚れ込んじゃうよねえと同情するしかない。