小学生の頃から私は小さい子どもが大好きでした。かつてオランダで暮らしていた小学校低学年の頃、近所の日本人駐在員宅に遊びにいっては、赤ちゃんや3歳ぐらいのお子さんたちに私の方が「遊んでもらって」いたのですね。一人っ子であったこともあるのでしょう。下に弟や妹ができたような感じで、とにかく頻繁にお邪魔していました。
乳幼児というのは、本当に独自の可愛さがあります。しぐさも話し方も、とにかく愛らしいのです。特に言葉を覚えたてのお子さんなど、よくお話してくれます。そこから会話に発展させていくことが私にとってはこの上なく楽しいひとときでした。
子どもは新しい言葉を覚えれば、どんどん使いたがります。一方、外に出ればよく走ったり飛び跳ねたり、身体を色々と動かしては楽しそうにしています。気に入らなかったり痛かったりすれば泣く。まさに五感で生きています。
でも、大人になると、せっかく新しい言葉を覚えても、それを積極的に使おうとするより、つい静かにしてしまいます。あれほどおしゃべりだったのに、きっと学校などの集団生活で「静かにしなさい」「じっとしていなさい」と何度も言い聞かされてきたことで、それが染み付いてしまったのでしょう。行動しようとしても、周囲を見てしまったり、目立つことを恐れてしまったりとなってしまうのです。
私は授業の中で音読やディクテーション、立って動くアクティビティを取り入れるようにしています。声を出すことは本来楽しいはず。でも、久しぶりの音読に受講生たちは戸惑ってしまうのかもしれません。「グループになって」と指示出ししても、「え?今、立ち上がって良いの?」という感じで周囲をきょろきょろ。周りが行動し始めてからの方が安心のようです。
だからこそ、自分が小さかったころのことを思い出してほしいのです。おしゃべりが楽しくて仕方なかったころ。夕暮れになるまで走ったりジャンプしたりしたころのこと。
その日々をよみがえらせて、大人になってからの「学習現場」に持ち込んでほしいのです。
語学の勉強は、五感がすべてだと私は思っています。人生の時間は誰にとっても有限。ぜひとも体のすべてを使った学びを味わい、楽しんでほしいと願っています。
(2021年11月2日)
【今週の一冊】
「オンライン講座を頼まれた時に読む本」天笠淳著、日経BP、2020年
まず注目したいのが、発行年。2020年の9月にこの本は世に出ています。つまり、コロナが深刻化してステイホームや在宅ワーク、オンライン授業が本格的になってきた際に急遽出版されたのだと想像できます。
今でこそ大分オンラインの講義に世の中も慣れてきましたが、当初は誰もが手探り状態。私自身、もともと対面授業が大好きですので、非常に腰が重く感じられました。でも慣れというのは素晴らしいもので、何度も試行錯誤しているうちに何とかなったのですよね。私立武蔵高校の杉山剛士校長が、学校内でのオンライン授業構築にあたり、先生方が一丸となって楽しみながら試行錯誤していた様子を綴っておられました。初めて三昧の時には、それぐらいのメンタリティの方がハードルも低くなります。
本書にはオンライン講座のセッティング、通信環境やマイクのこと、進行そのもののアイデアなどが盛りだくさんです。画面越しであるがゆえに、うなずくことの大切さや休憩の取り方など、受講者や講義者が心得ておくべきことが出ています。
私自身の課題としては、日頃の早口がどうしても表に出てしまうこと。回線速度や相手方の理解度のためにも「気持ちゆっくり目」に話すようにしようと改めて思いました。
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