50代からは不眠の悩みが増えがちに
そもそも、50代になると質の良い眠りにつける人が少なくなるのは何故なのでしょうか?
若い頃は、まるで眠り姫のごとく何時間でもぐっすりと眠ることが出来たのに…。 年を重ねるにつれ、夜中に目覚めてしまうこともしばしば。個人差もありますが、50代の方の睡眠時間は、平均が6時間半前後です。8時間睡眠がベストと言う人もいますが、8時間睡眠でスッキリできるのは若者だけだとも言われています。50代の方が8時間も眠ると、快眠を妨げるケースもあるということです。
疲れを取る為に早めに布団に入ってはみたものの、なぜか寝付けずに早朝をむかえてしまったり…。朝起きた時に全く疲れがとれてなかったり。その方の年齢により、良い睡眠方法がまるで異なります。昼寝してしまったり、週末に寝すぎてしまったりと、寝る時間もバラバラな状態が続いていると、質の良い睡眠が得られていない証拠です。
このような状態が続くと、心と体に悪影響を及ぼす可能性があります。また、日本人女性の40~50代は、世界一睡眠時間が少ないとされています。そのため、特に女性は睡眠問題を放置し続けると、健康面が悪化しかねません。
深い眠りと浅い眠り
「ノンレム睡眠」と言う言葉を聞いた事はありませんか?加齢による睡眠の質の変化が、この「ノンレム睡眠」と大きく関係しています。
ぐっすり眠れる人は深い眠り「ノンレム睡眠」に入っていて、脳を休ませている状態を長く保つことが出来ているのです。熟睡していると言っても良いでしょう。深い眠りは睡眠の前半部分、つまり熟睡状態のときが当てはまります。脳の休息タイムであるはずの熟睡時間が、50歳以上から減少していくのです。個人差はありますが、20~30代と比べると半分以下まで減少します。
これとは逆に浅い眠り「レム睡眠」があります。上記の「ノンレム睡眠」が減少されるのに対し、「レム睡眠」が相対的に長くなっていきます。こちらは何かがあるとすぐに目が覚めてしまうので、脳が活動している状態ということになりますから、休んでいるとは言えません。少しの音や、気温の変化、明るさの調整などでも目が覚めてしまうのです。つまり、深い眠りが少ない状態のことを指します。特に普段パソコン作業をする方は、中途覚醒や早朝覚醒を起こしやすくなるので要注意です。
50代になると、この浅い眠りの方が増加してしまう傾向がある為、7時間ちゃんと眠っているのにスッキリと目覚めないのは脳が休んだ状態になっていないからなのです。 さらに夢を見るとき、その内容にも影響されています。質の良い睡眠がとれていれば楽しい夢を見ることができますが、浅い眠りの増加及び深い眠りの減少が続くと、辛い夢や不安の多い夢を見る人も少なくありません。まさに寝ている間もストレスということです。
浅い眠りが増加する理由とは?
人は、脳を休ませてあげない状態で眠ると、体調に良くない影響を及ぼすことが分かっています。では、50代になると浅い眠り(レム睡眠)が増えてしまうのは何故なのでしょう?
残念ながら、その理由についてはまだ解明されていません。しかし、いくつかの要因があると言われています。若いときは深い眠りをすることで成長ホルモンが分泌されますが、中高年になればそれは関係が無くなるから…という説もあります。
現在心当たりのある方は、以下の要因に自分が当てはまっていないかどうか、今一度確認してみてください。
①睡眠ホルモン(メラトニン)の減少
あまり聞きなれない言葉かも知れませんが、メラトニンは良い睡眠を取る為の大切なホルモンです。睡眠リズムが不調になったときに、ダメージを受けた細胞の修復させるための成長ホルモンの分泌がまず乱れます。そして睡眠の質を高める役割を持つメラトニンも、出が悪くなっていきます。成長ホルモンも睡眠ホルモンも、その両方が乱れてしまうと、お肌への悪影響も発生します。そうなると、外見の老化が進み、生活習慣病・がん発症に陥る可能性が高まっていきます。
メラトニンは夜にかけて分泌量が増える為、眠くなる作用を引き起こしたり、疲れを取り、老化防止などにも効果を持っているのです。ということは、夜勤勤務の人や、夜間に光を浴びる作業をし続けると、悪循環になっていきます。特に50代の閉経後の女性は、女性の健康と美の素となる女性ホルモンが出なくなっている状態のため、睡眠ホルモンと成長ホルモンによって健康を維持しなくてはなりません。そのため睡眠リズムの不調が続くと、様々な病気の発症に繋がりやすくなります。
睡眠に重要なこのメラトニンは、年齢を重ねていくとその分泌量が減少してきます。これにより、50代の頃になると不眠になるケースが増えてしまうのです。睡眠不足を自覚しているなら、既に危険サインが出ています。気づいたときに改善の取り組みが必要です。
②体内時計(生活習慣)の乱れ
一般的に、人は昼間は起きていて夜は眠りにつくものです。これは脳にある「体内時計」によって、1日のリズムが決まっているためです。
では、どの様な人が体内時計のバランスを崩しやすいのでしょうか?
主に、交代制の仕事などで夜勤をしている人、また夜中まで照明などの光を多く浴びて起きている人などが当てはまります。看護師や客室乗務員などを代表とされるシフトワーカーも同様です。
本来は夜になるとメラトニンにより眠くなるはずなのですが、体内時計が乱れているために1日のリズムに狂いが出てきてメラトニンの分泌が低下してしまい不眠になってしまうのです。女性は50歳前後までは女性ホルモンによって体があらゆる面で守られています。しかし、このころから始まる更年期にも要注意です。体内時計の不調に伴って更年期をむかえると、急激に体が弱って太りやすくなり、病気も増えていきます。まさに体内時計が乱れた生活は、健康面での悪影響が大きいということです。
50代の多くが生活習慣の改善を必要としています。まずは短時間睡眠の解消をしていきましょう。
③運動不足
体を動かした後は、疲れてぐっすり眠れることが多くありませんか?
実は運動を継続する事により、「余波睡眠」と言われる深いノンレム睡眠が増加することが分かっています。成長ホルモンの分泌により細胞が修復されるので、質の良い眠りを取ることが出来るのです。
ですから、普段全く運動しない人は、たった15分ほどのウォーキングを毎日続けるだけで、不眠の改善に繋がっていくのです。
50代になると意識して体を動かす、または運動をする人と、全く運動をしない人のどちらかに分かれてしまう傾向が見られます。毎日の運動量があまりにも少なすぎる生活だと、深い眠りを得ることができません。1日の起きている時間の長さや、日中の活動量が、深い眠りと深く関係しています。
年齢によってベストな睡眠時間は変わる!
年齢によってベストな睡眠時間には違いがあります。
ここでは「アメリカ睡眠財団」NSFの公式サイトで発表された年代別のベストな睡眠時間について見ていきましょう。 ※健康な人を対象とした研究調査の結果です。
【新生児】0~3か月:14~17時間 【乳児】4~11か月:12~15時間 【よちよち歩きの頃】1~2歳:11~14時間 【未就学児】3~5歳:10~13時間 【就学時(小学生)」6~13歳:9~11時間 【ティーンエイジャー(中学・高校生)】14~17歳:8~10時間 【ヤングアダルト】18~25歳:7~9時間 【成人】26~64歳:7~9時間 【高齢者」65歳以上:7~8時間
上記は男女を含めていますが、女性は男性よりも睡眠時間が短いと言われています。特に40~50代の女性は、他の世代と比べると相当に短く、その平均睡眠時間は6時間台なのです。
男性も世代別で見ると、50代が最も睡眠時間は少ないのですが、それでも平均睡眠時間は7時間以上。やはり、50代女性よりは睡眠時間が多いのです。
さらに、よその国の女性は睡眠時間8時間以上なのに対し、日本人女性と韓国人女性だけが、平均睡眠時間が7時間台です。ベストな平均時間だけを見ると、50代の方々は7~9時間ということになりますが、実際に日本人の50代の人達は7時間以下が大半なのが現状となっています。
50代の理想の睡眠時間は7時間以上
上に挙げた調査結果を見て、多くの方が「こんなにたくさん睡眠時間を取ってはいない」と思ったのではないでしょうか? 実際、乳幼児は別として、現代の小中学生は夜遅くまで起きている場合が殆どです。習い事や塾、また部活などで家に帰る時間は遅くなります。その後に夕飯を食べたり入浴したりすると、あっという間に遅い時間帯になってしまいます。
社会人も、自営や近くで働けているのなら通勤時間が短くて済みますが、片道1時間以上かかる場所で働いたり残業をしたりすれば、帰宅時間は遅くなります。家に帰りホッとしてくつろいでいるうちに、時間はどんどん過ぎていきます。
50代の場合で考えてみましょう。
成人の理想の睡眠時間は7~9時間です。朝6時に起床するとして逆算してみると、7時間睡眠を取りたいのなら夜11時には布団に入らなければなりません。
その時間までに、帰宅してからやらなければならない事、またはやりたい事を終えることが出来れば良いのですが、なかなかうまくいかない場合が多いのが現状なのです。