かつて霞ケ浦(かすみがうら)での漁に欠かせなかった帆引き船。一時は姿を消しましたが、現在は、観光帆引き船として、蘇っています。夏から秋にかけて見られる美しくも迫力ある姿を、船に揺られながら、あなたも見てみませんか?
帆引き船(ほびきせん)が見られるのは?
帆引き船は、茨城県のかすみがうら市、行方(なめかた)市、土浦市の3市が操業しています。例年、7月末から11月末ごろまで操業されますが、操業時期、受付場所、出航場所など、市ごとに違うので、興味のある方は、事前に公式HPをご覧ください。なお今回ご紹介している写真は、かすみがうら市の操業のものです。
帆引き船の歴史
帆引き船とは、風の力を利用して漁をするために考案されたものです。それまでは、20人以上の人手が必要だった大型船での漁が、帆引き船ができてからは、2人で操業できるようになり、漁民の暮らしが安定しました。
明治13年に、かすみがうら市の漁師が考案した帆引き船は、多くの人々に享受され、約100年もの間、霞ケ浦漁業で不可欠の船となりました。大きく広がる帆を使い、風の力を利用しながら進む船は、シラウオ漁やワカサギ漁に使われましたが、昭和40年ごろからトロール漁(底引き網漁の一種)にとって替わり、姿を消すことになります。
帆引き船を間近で見よう!
姿を消してしまった帆引き船ですが、昭和46年に観光帆引き船として復活しました。霞ヶ浦漁業の歴史を知る上で、極めて重要な文化的遺産であることから、平成30年には、「霞ヶ浦の帆引き網漁の技術」が、国選択無形民俗文化財に選定されます。
観光帆引き船は、霞ヶ浦沿岸に位置する3市、かすみがうら市、行方市、土浦市からそれぞれ出航しますので、好みの港をチョイスできます。間近で見る帆引き船の迫力に、あなたもふれてみませんか?
かすみがうら市の帆引き船を見に行く
乗船までの流れ
まずは、事前予約が必要です。電話、または公式サイトでの電子申請になります。出航は、かすみがうら市の志戸崎(しとざき)漁港になります。30~60分前には、かすみがうら市交流センターで受付・料金の支払いをすませます。漁港には駐車場がないので、センター前の駐車場(無料)を利用しましょう。
いよいよ出航
時間になると、配布されたライフジャケットを身に着け、伴走船に乗り込みます。この日は、3艘の伴走船が運行し、1艘あたり10名弱の乗船でした。薄めのカーペットが敷かれていますが、ほとんどの方は土足のまま座ります。帆引き船が先に出航し、伴走船があとを追います。
帆引き船は沖に出ると、漁のための網を投下し、帆を広げ始めます。担当者によると、風は強すぎても、弱すぎても帆を上げられないとのことで、出航の是非も当日10時ごろまで不明ですし、帆があげられるかどうかも、その時の風次第となります。
伴走船は帆引き船の周りを、何回も近づいたり離れたり、周ったりしてくれるので、前後左右どこに座っても、写真撮影は問題ありません。大きなものだと、高さ9m、幅16mにもなる白い帆が、風を受け大空に広がる様子は壮観で、天気を心配していた分、よけいに感動してしまいます。時間になると、帆を下ろし、網を引き揚げ、漁港に戻ります。所要時間は、約1時間15分でした。