新型コロナウイルスの影響でテレワークが加速した結果、「通勤手当がなくなった」という方もいるでしょう。実は、会社から支給される通勤手当が少なくなれば、将来受け取れる年金額も少なくなります。これは一体なぜなのでしょうか。

通勤手当が将来の年金額に影響する?

通勤手当の有無や金額は、将来の年金額に影響します。その理由は、年金の受給額の計算方法にあります。

年金の金額はどうやって決まる?

会社員や公務員の方が加入している「厚生年金」は、自営業の方などが加入している「国民年金」に比べて複雑な計算方法で、老後に受け取る年金の金額が決められています。たとえば以下のような項目が受給額を決める要素になります。

・年金保険料を支払った期間
・現役時代の給与や賞与(標準報酬月額・標準報酬額)
・家族構成
・自分や家族の年齢

勤務先から受け取る毎月の給与など(報酬)を等級ごとに区切ったものが「標準報酬月額」、それにボーナス(賞与)を含めて計算したものが「標準報酬額」で、ともに年金の計算に使われます。標準報酬(給与など)が多いほど、老後に受け取れる年金が多くなるしくみになっています。

通勤手当はこの標準報酬の範囲に含まれています。そのため、通勤手当が廃止になったために年金額が減るということが起こるのです。通勤手当以外にも、住宅手当、家族手当、残業手当なども標準報酬に含まれます。

通勤手当が減っても年金額が変わらない場合も

ただ、通勤手当が減っても年金額が変わらない場合もありますよ。計算のもとになる標準報酬月額は、以下のように決められています。

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(出典:日本年金機構)

たとえば、会社からもらえる給与や手当(報酬月額)が25万円の人と26万5,000円の人では、等級は同じ「17」でどちらも「26万円」として計算されます。給与や手当が増減して等級が変われば年金額も変わりますが、同じ等級の範囲内で変動しても年金額は変わりません。

「標準報酬月額」が下がる影響はほかにも

標準報酬月額は、受け取る年金額以外にもさまざまな計算の基礎になっています。標準報酬月額が下がる(受け取る給与や手当が減る)と、以下のような影響もあります。

・傷病手当金や出産手当金として受け取れる金額も少なくなる
・健康保険料や厚生年金保険料で支払うべき金額も少なくなる

厚生年金だけでなく健康保険も標準報酬を使って計算されています。標準報酬が減るともしものときに受け取れる金額も減りますが、支払う保険料も減りますのでなにも悪い面だけではありません。

ちなみに、失業手当(雇用保険の基本手当)の計算は「標準報酬」ではなく「賃金」に基づいて計算されますが、「賃金」も通勤手当を含んでいるため、通勤手当が廃止になると失業時に受け取れる手当も少なくなります。

厚生年金の計算には「標準報酬」が影響する

年金や健康保険などの計算では、基本給だけでなく通勤手当などの金額も影響してきます。「コロナ禍のテレワークで通勤手当がなくなると年金が減る」と聞くと損をした気持ちになるかもしれませんが、支払う保険料も減っていますので、過度に気にする必要はないでしょう。

文・ばばえりFP事務所代表)
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強!銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。AFP資格保有。

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