今回のレッスンでは、読み違えやすい単語を訳すときの読み違えミスを防ぐ方法をご説明します。

私が産業翻訳スタッフとして企業に勤めていたときの話です。どんな文書だったか忘れましたが、ファックスで送られてきた英文を日本語に翻訳していたら、どうしても腑に落ちない箇所が見つかりました。rational(合理的な)という英単語が不自然な箇所で使われていたのです。

みなさんなら、こういう場合、どうするでしょうか。不自然だと思いながらも、そのまま訳すでしょうか。それとも何か手立てはあるでしょうか。

さて、当時の私はどうしたでしょうか。

どう考えても、なぜ rational という英単語が使われているのかが分かりませんでしたが、だからといって削って訳すのはまずいと考えたため、やむをえず「合理的な」と訳しておいたのです。

ところが、私の訳文をチェックしていた上司はカンカンに怒り出しました。というのも、彼の目にはその単語がnational に見えており、それを私が「合理的な」と誤訳したと思ったからでした。

原文がファックスで送れてきていたので、n の印字がつぶれかけていて national にも rationalにも見えました。たまたま私の目には rational に見えていたのです。

しかし、単語の読み違えミスは、なにもファックス文書だけに限りません。書籍や新聞、雑誌などのように印字そのものは完全でも、似たような綴りの単語だとついつい読み間違えてしまうことがあります。あるいは、正しいスペルでありさえすればスペルチェッカーさえくぐり抜ける可能性がありますから本当の誤植である可能性もあります。

誤植は置いておくにしても、例えば、次のような単語は読み間違いやすいので注意が必要です。

respective (それぞれの)
respectable (体裁のよい)
respectful (敬意を表する)

sensible (思慮のある)
sensitive (感じやすい)

stationary (動かない)
stationery (文房具)

principle (原理、原則)
principal (主な、第一の)

particular (特別の)
peculiar (独特の、固有の)

altogether (全体で、まったく、全部で)
all together (すべて合わせて)

breath (息、呼吸)
breathe (息をする、呼吸をする)

complement (補足物)
compliment (賛辞)

conscience (良心)
consciousness (意識、自覚)
conscious (知覚のある)
conscientious (良心的な)

farther (さらに遠くに)
further (もっと遠くに)

ここではほんのわずかな例を挙げたにすぎませんが、似たスペルの単語は枚挙にいとまがありません。気を付けましょう。

さて、次はある翻訳書から訳文を抜粋したものです。

誤訳:「ピアノを買ったら破産しかねない」

これを読んでいてなんとなくおかしいと思った私は原書に当たってみると、案の定、「ピアノ」の箇所の英文は Picasso でした。おそらくその訳書の訳者は Picasso と piano を読み違えたのでしょう。翻訳書を出している訳者でも、このようなミスをすることがあるのです。

原文の Picasso の箇所は「ピカソの絵」と訳すべきだったのです。修正してみましょう。

修正訳:「ピカソの絵を買ったら破産しかねない」

私自身、national が rational に見えたとき、「どうしてここで rational が使われているのかな」と不思議に思ったのですが、そのときは、rational であることを疑わず、そのまま「合理的な」と訳しました。結局、それが上司に怒られることにつながったのです。

訳していて、何かがおかしいと感じたら、単語を読み違えていないか確認してみましょう。

あるいは、自分自身が読み違えていなくても、誤植という可能性だってあります。実際、書籍や新聞、雑誌になっているものでも誤植はままあるものです。ましてやビジネスレターのような、プロの編集者の目を通っていない文書の場合、誤植がある可能性はより高いでしょう。さらにファックスで送られてきた書類であれば、私が苦い経験をしたように印字がつぶれていることもありえます。

どうしても誤植だと思える場合は、誤植の可能性も考え、その上で最も合理的だと思える単語に置き換えて訳すことも考えてみましょう。

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