「一般NISA」の非課税期間は5年間です。2014年に始まった制度なので、「そろそろ非課税期間が終わる」という方もいるでしょう。

一般NISAの非課税期間が終わるとき、私たちはいくつかの選択肢の中から1つを選び、所定の手続きを行う必要があります。そこで本記事では、 一般NISAの非課税期間が終了したときの手続きについて解説します。

2024年に始まる「新NISA」についても、一般NISAの非課税期間終了と関係があるため、併せて解説します。

一般NISAの非課税期間は5年間限定

一般NISAの非課税期間は、最長5年間です。

これは、 「買った年を含めた5年後の年末まで」という意味なので注意が必要です。例えば2021年に投資した分は、どの月に買ったとしても非課税期間は2025年12月末までです。

では、非課税期間が終了するとき、どのような手続きが必要になるのでしょうか。

非課税期間が満了した後の3つの選択肢

本記事のタイトル 「一般NISAは非課税期間が終わる5年後、つみたてNISAに変更する必要があるかどうか」については、結論からいうと必要ありません。つみたてNISAへの変更をおすすめしますが、別の選択肢も用意されています。

一般NISAの非課税期間が終わるとき、私たちが選べる主な選択肢は以下の3つです。

● 満了前に売却する
● ロールオーバーを行う
● つみたてNISAに変更する
【手続きをしない場合は、課税口座に移される】
厳密には「手続きをしない」という選択肢もあり、この場合は課税口座に移されます。ただし、その後は税金がかかるため注意しましょう。

若山卓也(ファイナンシャルプランナー)

それぞれについて、簡単に解説します。

満了前に売却する

非課税期間が終わる前に 売却する方法です。非課税期間中に運用を終えられるため、 税金はまったくかかりません。最もシンプルな方法といえるでしょう。

ただし、年末に売却する場合は注意が必要です。非課税期間は、売却日ではなく「受渡日(うけわたしび」」をもとに計算されるからです。

株式の場合、受渡日は売却日の2営業日後なので、2021年の最終売買日は12月28日(受渡日は12月30日)です。証券取引所は、例年12月31日~1月3日は営業していません。

受渡日は商品によって異なるので、それぞれの最終売買日をチェックしておきましょう。

ロールオーバーを行う

翌年の一般NISAの枠を消費して、 非課税期間を延長する方法です。例えば2021年末に非課税期間が終わる場合、2022年分の一般NISA枠にロールオーバーすれば2026年末まで非課税期間を延長できます。

ロールオーバーに 金額の上限はありません。購入後に値上がりし、一般NISAの投資枠120万円を超えていても可能です。

ただし、 ロールオーバーは翌年の一般NISA投資枠を減らしてしまうため注意しましょう。120万円以上のロールオーバーを行う場合、翌年は一般NISAをまったく利用できなくなります。

ロールオーバーの金額 ロールオーバーの可否 翌年の一般NISAに
投資できる金額
100万円分 20万円
120万円分 0円
200万円分 0円
ロールオーバーを行う場合は、所定の手続きが必要です。金融機関が定める期限内に手続きを済ませましょう。

なお、これまで一般NISAで投資できる年は2023年が最後だったため、それ以降はロールオーバーができませんでした。しかし2024年に「新NISA」の開始が決定し、2028年までロールオーバーができるようになりました。

新NISAについては、後で詳しく解説します。

つみたてNISAに変更する

一般NISAを終了し、 つみたてNISAに変更する方法です。非課税期間が終了する一般NISAの商品は売却するか、課税口座に移すことになります。

つみたてNISAは、 最長20年間の非課税期間が魅力 (一般NISAは最長5年間)。2042年まで年間40万円までの投資ができるため、2022年に始めれば合計840万円を非課税で投資できます。


一般NISA つみたてNISA
非課税期間 最長5年間 最長20年間
投資できる金額 120万円/円 40万円/年
投資できる年 2023年まで
※2024年以降は新NISAに移行
2042年まで
一般NISAからつみたてNISAに切り替える場合も、所定の手続きが必要です。ロールオーバーと同様に、こちらにも期限があるため早めに手続きを済ませましょう。

一般NISAからつみたてNISAへの切り替え方法は本記事の最後で解説しますので、そちらを参考にしてください。

【つみたてNISAへの変更は満了前でもできる】
本記事では一般NISAの非課税期間が満了したときの手続きを紹介しましたが、つみたてNISAへの変更は満了前でも可能です。つみたてNISAへ変更しても、すでに投資した一般NISAの非課税期間は満了まで続きます。

「つみたてNISAのほうがいい!」と思ったら、一般NISAの非課税期間の満了を待たずに切り替えましょう。

若山卓也(ファイナンシャルプランナー)

新NISA制度で一般NISAはどう変更されるの?

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(画像=tamayura39/stock.adobe.com)

現行の一般NISAは2023年で終了し、 2024年に「新NISA」が始まります。両者の概要は以下のとおりです。

一般NISA 新NISA
非課税期間 最長5年間 最長5年間
投資できる金額 120万円/円 1階部分:20万円/年
2階部分:102万円/年
投資できる年 2023年まで 2028年まで

新NISA最大の特徴は、2階建て構造にあります。1階部分が現行のつみたてNISAに、2階部分が一般NISAに相当します。2階部分を利用するためには、まず1階部分を利用しなければなりません。

【新NISA 「2階建て」の概要】
● 1階部分:現行のつみたてNISAに相当
● 2階部分:現行の一般NISAに相当 原則1階部分の利用者のみが利用できる

その他の違いも詳しく見ていきましょう。

非課税期間の変更点

非課税期間に大きな変更はありません。新NISAでも、1階部分・2階部分ともに非課税期間は最長5年間です。

ただし1階部分は非課税期間終了後、 つみたてNISAにロールオーバーできます。ロールオーバーしたい場合は、それまでにつみたてNISAに切り替えておきましょう。

逆算すると、新NISAの初年度に投資した分のロールオーバーには、2029年のつみたてNISA枠が必要になります。

投資できる金額の変更点

投資できる金額は、2万円増えました。新NISAでは1年間に1階部分で20万円、2階部分で102万円、計122万円投資できます。一般NISAは年に120万円ですから、2万円多く投資できるようになりました。

ただし、株式にしか投資しない方にとっては、実質的に投資できる金額は減ります。新NISAで株式に投資できるのは、2階部分だけだからです。現行の一般NISAなら株式に120万円投資できましたが、新NISAでは102万円までしか投資できません。

もともと一般NISAは2023年で終了する予定だったので、むしろ投資額は増えたともいえますが、株式に投資する方は注意してください。
【「投資経験あり&株式に投資」なら2階部分へ直接投資OK】
新NISAは原則1階部分の利用者でないと2階部分を使えませんが、例外があります。現行の一般NISA開設者、または何らかの投資経験がある方が株式のみに投資する場合は、直接2階部分を利用できます。

「株式だけに投資したい」という方は、今のうちに口座を作っておくとよいでしょう。

若山卓也(ファイナンシャルプランナー)

投資できる年の変更点

投資できる年は5年延長されました。一般NISAは2014年から2023年まで、新NISAは2024年から2028年まで投資できます。2028年に新NISAで投資した分は、2032年末まで非課税です。

新NISAにおける主な変更点は以上です。ルールは少し変わりますが、 一般NISAと同じような運用を行いたいなら、新NISAをおすすめします。

とはいえ、「つみたてNISAのほうが合っている」と考える方もいるでしょう。そこで、次章では一般NISAからつみたてNISAに変更する方法をご紹介します。

一般NISAからつみたてNISAに変更する方法

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(画像= Monet/stock.adobe.com)

一般NISAからつみたてNISAに変更する方法は、 金融機関も変更するかどうかで異なります。つみたてNISA非対応の金融機関で一般NISAから切り替える場合は、金融機関も変更しなければなりません。

ここで、それぞれの方法を確認しておきましょう。

金融機関を変えない場合

金融機関を変更せず、一般NISAからつみたてNISAに変更する場合、手続きはその金融機関内で完結します。一般NISAを取り扱っている金融機関に、「つみたてNISAへ変更したい」と申し出ましょう。

ポイントは期限です。原則として、変更したい年の前年10~12月に手続きを終える必要があります。2022年の一般NISAをつみたてNISAに変更したい場合は、2021年の10~12月に手続きを完了しなければなりません。

金融機関によっては年をまたいでも変更できるところもありますが、必ずそれぞれの金融機関で確認しましょう。

金融機関を変える場合

一般NISAからつみたてNISAへ金融機関ごと変更する場合、変更元の金融機関と変更先の金融機関でそれぞれ手続きを行う必要があります。大まかな流れは以下のとおりです。

手続きの手順
  • 変更元の金融機関でNISA口座の金融機関変更を申し出る
  • 変更元の金融機関から「勘定廃止通知書」を受け取る
  • 変更先の金融機関に「勘定廃止通知書」を添えてつみたてNISA口座の開設を申し込む

まず一般NISA口座を開設している金融機関で、NISA口座の金融機関変更手続きを行います。「金融商品取引業者等変更届出書」を提出すると「勘定廃止通知書」が返送されるため、大切に保管しておきましょう。

次に、新しくつみたてNISA口座を開設する金融機関で手続きを行います。その際、変更元金融機関から受け取った「勘定廃止通知書」を提出します。

一般NISAからつみたてNISAへ金融機関ごと変更する場合は、金融機関を変えない場合よりも手続きが増えます。より時間がかかるため、できるだけ早く手続きを行いましょう。

5年間の非課税期間満了後は適切な対応を行いましょう

本記事の内容をまとめます。一般NISAの非課税期間が終わるとき、私たちには以下の3つの選択肢があります。

  • 満了前に売却する
  • ロールオーバーを行う
  • つみたてNISAに変更する

これらの手続きを行わない場合、非課税期間が満了した商品は課税口座に移され、それ以降は税金がかかります。

一般NISAからつみたてNISAに切り替える場合は、 期限内に手続きを終えましょう。特に金融機関を変更する場合は手続きが増えるため、早めに着手することをおすすめします。

若山卓也
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業、保険募集代理業、金融系ライターとして活動しています。 関心のあるジャンルは資産運用や保険、またお得なポイントサービスなど。お金にまつわることなら幅広くカバーし、発信しています。 AFP、プライベートバンキング・コーディネーター資格保有
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業、保険募集代理業、金融系ライターとして活動しています。 関心のあるジャンルは資産運用や保険、またお得なポイントサービスなど。お金にまつわることなら幅広くカバーし、発信しています。 AFP、プライベートバンキング・コーディネーター資格保有

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