妊娠・出産のこんなときはどうしたらいい?
妊婦の医療費控除について一通り解説しましたが、「どうしたらいいの?」と戸惑うケースもあります。主に次のような場合です。
保険や高額療養費などが翌年に下りるとき
生命保険や健康保険組合などから入院給付金などが下りるケースがあります。また、医療費が非常に高額になり、健康保険の「高額療養費制度」を利用して医療費を補てんするケースもあるでしょう。このような場合はもらった金額を支払った医療費から差し引かなくてはなりません。
ただし、「高額療養費が下りるのは分かっているけど金額が分からない」ケースもあります。その際は、原則として、おおよその金額を見積もって「医療費に補てんされる金額」として医療費から差し引いて申告し、後日正確な金額が分かったときに申告し直すこととなっています。
医療費控除で還付を受けるだけの場合、特に申告期限はありません。3月15日を過ぎても、その年の翌年から5年以内ならば確定申告を行うことができます。そのため、補てんされる金額が分かってから還付のための確定申告を行うのも一つの方法です。しかし、申告が遅くなると住民税などの節税効果が得られなくなります。
「所得税だけでなく住民税でもしっかり節税効果を得たい」場合には、いったん翌年3月15日までに申告を行い、後日確定申告のやり直しをした方がよいでしょう。
妊娠以外にも風邪や歯の治療を行い、かつ出産一時金を受け取った場合
妊娠や出産以外にも、風邪や歯の治療で医療費を支払うことがあります。このとき、出産一時金や妊娠・出産にかかる高額療養費を受け取っていたら、その金額を風邪や歯の治療の医療費からも差し引かなくてはならないのでしょうか。
この場合の出産一時金や高額療養費は、あくまでも妊娠・出産に関するものであるため、風邪や歯の治療から差し引く必要はありません。
例えば、出産の医療費で30万円、歯の治療費で15万円支出し、高額療養費で40万円受け取ったとします。この場合、出産の医療費は0円(=30万円-40万円<0円→0円)になりますが、歯の治療費15万円はそのまま医療費控除として活用することができます。
妊婦である妻よりも夫の所得の方が多い場合
医療費控除は税率がより高い方で確定申告をした方がメリットは大きくなります。そのため、妊婦である妻の所得がない、あるいは低い場合、より所得の高い夫の名義で確定申告をした方が節税効果は高くなります。
医療費控除を利用するための手続き方法
原則として、医療費を支出した年の翌年3月15日までに確定申告を行うことで、所得税・住民税の両方で医療費控除の適用を受けることができます。
手続きは確定申告書に内容の詳細を記載した「医療費控除の明細書」を添付すればOKです。領収書は申告した人の手元に5年間保管しておき、税務署から問い合わせの連絡があった場合にいつでも答えられるようにしておく必要があります。
また、「医療費通知」が手元に届いた場合には、これを確定申告書に添付することで、医療費控除の明細書の記載を一部省略することができます。
なお、申告する場合には、申告する人の名義のマイナンバーカードのコピーを添付しなくてはなりません。このほか、申告する人の状況により、給与所得の源泉徴収票などほかの書類の添付が必要になります。
確定申告が遅れると節税メリットは減少
医療費控除のための確定申告の多くは「還付申告」と言って、一度、自分で支払った後にお金が振り込まれるシステムです。還付申告の場合、妊娠・出産が一段落してから申告をしてもいいのですが、先ほどお伝えしたように、住民税での節税効果は得られなくなります。同時に、住民税額は出産後の保育料や国民健康保険料などにも影響します。
妊娠期間中からレシートを整理しておき、スムーズに確定申告を行えるようにしておくとよいでしょう。
文・鈴木 まゆ子(税理士鈴木まゆ子事務所代表)/DAILY ANDS
【こちらの記事もおすすめ】
>ふるさと納税の失敗を防ぐ3つのステップ
>金運アップが期待できる都内の神社5選
>注目の最新シェアリングサービス5選
>年収300万円の会社員にできる3つの節税対策
>マイルを貯める3つのポイント