出版翻訳家として営業に貢献するために具体的にできることについて、第75回の「出版翻訳家と営業」でお伝えしました。今回は、コロナ禍で生じている変化について見ていきましょう。

リアルでのイベントが開催しづらくなり、出版関係のイベントもオンラインに移行してきました。人数限定でリアルで開催してオンラインでも配信するパターンもありますが、オンラインのみの開催もかなり増えています。

こうなると、出版翻訳家も参加しやすくなったというより、参加せざるを得ない状況になってきたのではないでしょうか。リアルなイベントであれば、会場までの移動時間などもあり、スケジュールを理由に断ることもできたでしょう。それがオンラインイベントとなると、断る理由が限られてしまいます。「人前に出るのが苦手だから翻訳家を選んだのに」という方も、引っ張り出されることになるのです。

ジャンルによってもオンラインイベントの開催には温度差があるので、あなたが手がけたいのが純文学など文芸寄りなら、それほど引っ張り出されることもないでしょう。だけど、あなたが手がけたいのが自己啓発書やビジネス書なら、避けて通れなくなるかもしれません。

そうなると、技術的なことにも対応していかなくてはいけません。たとえばZoomを使いこなせるようになるなど、いまの時代に対応することも求められてきます。

私も最近、新刊のイベントへの協力を出版社さんから打診された際、リアルイベントはそもそもオプションになく、ZoomとClubhouseの二択でした。私は機械に弱いうえに、新しもの好きならぬ「新しもの嫌い」なので、Clubhouseもやらないだろうと手をつけずにいたのですが、まさか二択になっているとは、と驚きました。

出版翻訳家を目指す方には、「語学はできるけれど機械には弱いし流行りものにも興味がない」という方も多いのではと思いますが(私だけじゃないと思いたいです……!)、そういうタイプにとっては、ちょっとつらいところですね。

ZoomとClubhouseの二択というのはビジネス書だから読者も最先端のツールを活用しているという想定もあるでしょうし、絵本や児童書だったら事情が違うでしょう。今後状況が落ち着いてリアルイベントが開催できるようになれば、また変わってくる部分もあるでしょう。それでも、その時代、その時代で新しいものに対応していくことは求められると思います。

自分にとってはあまりに負担が大きいと感じるようなら、そういう部分は切り捨ててストイックに翻訳だけするのもひとつの態度でしょう。ただ、こういう依頼に対応していくことも次の仕事につながるものです。仕事の一部と考えて取り組むのも、得るところがあるのではないでしょうか。

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