【番外編】除隊後の酒の肴は軍隊話
韓国の古い冗談で、「女性が嫌がる話」というと下記の3つがお決まりになっています。
1位 軍隊でサッカーをした話 2位 軍隊の話 3位 サッカーの話
除隊した男性にとって軍隊での思い出は生涯忘れられないものであり、何年たっても口をついて出てくるものですが、自分の知らない話を延々と聞かされる女性は、ついうんざりしてしまうようです。
在外国民と兵役
「在外国民2世制度」とは
在日・在米コリアンなど外国出生者、満6歳以前国外出国者は、満17歳の年まで該当国で暮らしその国の国籍や市民権、永住権などを取得していると、兵役義務が賦課されません。
また韓国の小・中・高校在学歴が3年以内の場合も免除となります。これを「在外国民2世制度」と言います。
「在外国民2世」証明のためにはパスポートに捺印が必要
「在外国民2世」であることを証明するために、満25~37歳までは、韓国に入国する前に大使館や領事館などの在外公館でパスポートに「在外国民2世」の捺印を押してもらわなければならず、パスポート切り替えの度に必要です。捺印スタンプをしてもらわなければ兵役義務が発生する恐れがあります。
この捺印がないと、別途手続きが必要となる場合や、最悪の場合韓国から出国できないこともあります。
「在外国民2世」とは見なされず兵役義務が生じる場合
以下のような場合「在外国民2世」とは見なされず兵役義務が生じます。
・永久帰国申告(永住権等を放棄して韓国に居住する) をする場合 ・18歳からの韓国滞在が通算3年を超えた後、1年のうち計6ヶ月以上韓国内に滞在したり、就職したりした場合(1994年1月1日以降出生者) ・17歳までの期間中に、1年に通算して90日を越えて韓国内に滞在したことがある場合
1993年以前生まれ「在外国民2世」の地位喪失により兵役が生じる場合あり
2018年5月29日に兵役法施行令が改定されたことにより、一定の条件に該当する場合は「在外国民2世」の地位が喪失されます。 「在外国民2世」の地位は、兵役免除対象となっていましたが、万一喪失されるといわゆる在日韓国人にも兵役が課せられることになります。
<「在外国民2世」の地位喪失に関する詳細> 適用対象:「在外国民2世」のうち1993年12月31日以前 出生者 「在外国民2世」の資格が喪失される場合: 次の3つのうち、どれか1つに該当する場合には兵役法令上「在外国民2世」の資格が喪失されます。
(1)本人が海外移住法に従って永住帰国申告時 (2)2018年5月29日以降 父方または母方の家が永住帰国申告時 (3)2018年5月29日以降 本人があわせて3年を超えて韓国国内滞在時(韓国入国日は算入、出国日は算入しない方式で期間を計算した際に1,095日超過する場合)
※(1)の場合は、在外国民2世地位喪失と同時に兵役義務が賦課されます。 ※(2)、(3)に該当する場合、「在外国民2世」の地位が喪失されると、「一般国外移住者」に切り替わることになります。
<「一般国外移住者」に変わるとどうなる?> 「在外国民2世」の地位は失われても、国外移住者としての兵役延期は37歳まで引き続き維持され、38歳になる年の1月1日付けで「戦時勤労役」に編入、入営の義務が免除となります。
ただし、37歳以前に次のうちどれか1つに該当する事由が発生する場合には兵役延期が取り消され、兵役義務が課されます。 (1)海外移住法に従って永住帰国を申告をした場合 (2)韓国国内で1年の間にあわせて6ヶ月以上滞在している場合 (3)韓国国内で就業など営利活動を行う場合
規定に対して自身が「在外国民2世」喪失の対象になるか、よく調べる必要があります。これらの情報詳細は以下のサイトにて確認できます。 ・兵務庁(公式HP(外部サイト、韓国語)) ・駐日本国大韓民国大使館(公式HP(外部サイト、日本語))
希望すれば外国永住者でも入隊が可能
一方で外国の永住権を取得しても、希望すれば入隊できる「永住者等入営希望制度」があります。
また最近は、該当国の永住権を放棄し入隊を希望するケースも少なからず見受けられます。芸能人では、在米コリアンであるSHINHWAのエリックやアンディ、2PMのテギョンが有名です。
兵役逃れは社会問題にも
兵役免除対象でない限り、兵役義務を果たさないことは違法となります。しかし、政治家や財閥の子息、スポーツ選手、芸能人などは、しばしば兵役逃れの疑惑が表面化しては槍玉にあげられています。
よく使われる免除の理由としては、「体重過多」「脱臼」「精神分裂症」「高血圧」「ヘルニア」などがあります。
兵役逃れの大きな例では、2002年、在米コリアンでありながら当時の公益勤務要員として服務する意向を示した韓国の元国民的スターのユ・スンジュンが、入隊直前にアメリカ市民権を取得し韓国追放になった事件があります。
また2010年には、芸能人のMCモンが兵役免除のために故意に抜歯したという疑惑を受けて裁判沙汰にもなりました。
宗教的信仰などによる兵役拒否
代替服務制度が導入された経緯
韓国では信仰や反戦思想などの理由から兵役を拒否する「良心的兵役拒否」も厳しく処罰されてきましたが、諸外国にならい、「良心的兵役拒否者」に代替服務制度を導入しては、という議論が取り交わされてきました。
2004年には、「良心的兵役拒否者」が韓国最高裁で有罪判決を受けていました。しかし、2018年11月1日、兵役法違反罪などで起訴された宗教団体信者男性の上告審で、最高裁は「正当な兵役拒否理由に当たる」として、有罪判決を破棄し、差し戻しました。
その後、2018年11月14日に韓国国防部は、「良心的兵役拒否者」の代替服務制度について、服務先を刑務所などの刑事施設とし、服務期間を36ヶ月または27ヶ月とする2案を検討していることを明らかにし、12月28日に、36ヶ月の案で決定されました。
「良心的兵役拒否者」から「宗教的信仰などによる兵役拒否者」に用語を統一
2019年1月4日には「良心的兵役拒否者」という用語に関して、軍での兵役義務を終えた人やこれから兵役に就く人が、良心や信念が無い人のように誤解されかねない、という世間の懸念を考慮し、「宗教的信仰などによる兵役拒否者」に用語を統一することを韓国国防部が発表しました。
兵役逃れに利用されるのでは?という懸念も
一方では、代替服務制度が兵役逃れに利用されるのでは?という懸念もあり、検察当局により、宗教的理由などで軍隊への入隊を拒否する人の信仰の真偽を判断するため、銃火器を扱う戦闘ゲームの利用履歴を基準の一つとするといった内容が含まれた指針が策定されています。
兵役に対する考え方
「できるなら行きたくない」軍隊ですが、多くの韓国男性は同時に「仕方のないもの」と捉えています。実際韓国には、「男は軍隊に行ってこそ一人前」「国防の義務を果たしてこそ韓国男児」という意識が強くあり、軍生活を通じて愛国心や家族への愛、自立心など多くのことを体得するという考え方が浸透しています。
南北が休戦という緊張状態にあるため、国民の間には徴兵制を持続すべきという意見が少なくないようです。一方、兵役人員の減少が影響し、国会では女性にも兵役義務を課すべきではという議論も生じています。
歴史的に見ると服務期間も減少傾向にあり、兵士たちの服務環境も徐々に改善されていると言います。また情勢の変化に伴い「志願」「拒否」など軍隊に対する人々の考え方も多様化してきています。
韓国の政治情勢、対外関係、近現代史と密接に関わっており、根深く複雑極まりない兵役。あらゆる面で徴兵制は韓国の人々の生活に密着しており、改めて韓国が休戦状態にあるという現実を直視させられる制度です。
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