グレーゾーンを撤廃に追い込んだ二つの最高裁判決

貸金業規制法には、所定の事項を記した契約書を交わし、借り手が任意で利息を払うなどの要件を満たせばグレーゾーン金利の支払いを有効とする「みなし弁済」規定があった。消費者金融はこの規定に則って金利29%もの高額の利息を取り、多重債務者を生んでいた。

この「みなし弁済」の要件解釈を争った裁判で出た2004年2月の最高裁判決が、歴史の転換点となる。消費者金融の契約約款に「約束した利息の支払いが遅れたら残金全額を一括で支払う」との条項があり、「債務者はこれを避けるために利息を払ったから任意ではない」との見解が判決の補足意見として付いたのだ。

これを踏まえて2006年1月、「この条項がある場合は任意とは言えず、グレーゾーン金利は違法」との最高裁判決が出るに至った。

この結果、貸金業者はみなし弁済を主張できなくなり、返還訴訟を起こせば利息が取り戻せるようになった。さらに、最高裁判決を受けた2010年6月18日の法改正で出資法の上限金利は20%に下げられてグレーゾーン金利は違法となり、みなし弁済規定も撤廃された。

吹き荒れる返還訴訟の嵐と「過払い金請求バブル」

2011年12月に「不当と知りつつ利息を得た消費者金融は、過払い金に利息をつけて返す義務がある」とする最高裁判決が出て以降は、返還訴訟が急増した。

2006年には6万45件だった過払い金などに関する民事訴訟件数は増え続け、2009年には14万4468件を記録した。利息返還金額も2007年度4724億円、2009年度には6589億円に上った。

テレビCMや電車の中吊り広告など、過払い金請求を勧める宣伝も巷(ちまた)にあふれた。ほぼ事務手続きのみで高額報酬が得られる過払い金請求は、多額の広告費をかけても利益が出る、弁護士たちにとって「おいしい」ビジネス。某法律事務所は累計1695億6364万円を回収したという。弁護士報酬が2割程度とすると……相当な利益が想像できる。

グレーゾーン金利を違法とした最高裁判決から10年、裁判件数は減少傾向にあるが、「過払い金は10年たつと時効で消滅。返金期限が迫る」と訴えるCMを見かける。

だが過払い金返還期限の起算点は完済した時点で、最高裁判決とは無関係。グレーゾーン金利に基づく利息を払った人は、完済時点から10年以内なら、過払い金と利息が戻る可能性がある。

とは言え、訴訟で戻るのは過払い分のみで、法定内の利息が戻るわけではない。アメリカの政治家・気象学者のベンジャミン・フランクリン曰く「借金をするのは自由を売ること」。無用な借金はしないに限る。やむをえず借りたなら可能な限り早く返すことが原則だろう。

文・ZUU online 編集部/ZUU online

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