今回は「和訳レッスン」を一休みし、興味深い婉曲表現(euphemism)をご紹介します。ぜひ肩の力を抜いてお読みください。

euphemism とは「響きが良い」という意味のギリシャ語が語源であることもあり、slang に代表されるような汚い言葉ではありません。露骨な表現をソフトに言い換えるために存在するものですから、私はむしろ積極的に覚えてもいいとさえ考えています。

今回は「仕事」に関する婉曲表現を見ていきましょう。

日本でも「清掃員」を「クリーンスタッフ」と言い換えたりすることがありますが、英語においても、聞こえがいいように言い換えていうことがあります。

それでは、さっそく一つひとつ見ていきましょう。

○「秘書」
きっと多くの人は「秘書 = secretary」と覚えたと思います。もちろんそれはそれで正しいのですが、secretary よりも personal assistant(略してpa)といったほうが聞こえがよくなります。またアメリカでは秘書だけでなく秘書を使う人のステータスも高いことを示すために administrative assistant ということもあります。

○「ウエイター、ウエイトレス」
waiter や waitress という言葉は今や嫌われる傾向にあり、アメリカでは代わりに dining-room attendant とか catering service personnel という持って回ったいいかたをすることがあります。

また性差別を排するために waiter や waitress を waitron、wait-person と変化させて使うこともあります。

ちなみに性差別を排する方法として多いのは、語尾の man をperson を変化させる方法です。これにより chairman が chairpersonに、businessman が businessperson に・・・という具合に変化します。ただし例外があり、fireman(消防士)の場合は fireperson ではなく、firefighter になります。fireperson では何をする人なのかが分かりにくいですが、firefighter といえば、イメージしやすいですね。

○「ごみ収集人」
「ごみ収集人」を表す婉曲表現として広く使われているのは refuse collector(がらくたの収集家)です。collector という言葉が使われていることから趣味で集めているような響きがありますが、職業を指す言葉です。

refuse collector のほかにイギリス英語では cleansing operative(浄化の熟練工)とか refuse operative (がらくたの熟練工)ということがあります。また環境を意識する場合は environmental cleaner(環境の掃除作業員)ということもあります。

一方、アメリカ英語では sanitation(公衆衛生)という言葉を使って sanitation engineer(公衆衛生技師)とかsanitation worker(公衆衛生労働者)ということがあります。

○「公衆トイレ清掃員」
トイレというイメージを払拭するために、あえてトイレに相当する言葉を使わないで sanitary warden (公衆衛生の管理人)ということがあります。また特に男性の場合は sanitary man(公衆衛生の男性)ということがあります。

○「家政婦」
アメリカ英語では「家政婦」のことを help ということがあります。一方でイギリス英語では home help や daily help といういい方が好まれます。家政婦になる人は女性が多いことから daily woman ということもあり、それを短縮して daily とだけいうこともあります。

○「外国人労働者」
「外国人労働者」のこをと婉曲的に guest worker ということがありますが、これはドイツ語の Gastarbeiter を直訳して作ったものだといわれています。

さて、さまざまな職種の婉曲表現を見てきましたが、job という言葉自体を嫌う人がいることは覚えておいてもいいでしょう。job の代わりに position や post、appointment などを使えば、より聞こえのいい表現になります。例を挙げておきます。

get a position as a typist (タイピストとして就職する)

obtain a post in the company (その会社に就職する)

receive an appointment from the President (大統領から役職を与えられる)

また「顧客」のことを通常 customer といいますが、もっと響きのいい言葉を好む人もいます。例えば、client といえばより高級な響きになります。client は元々は弁護士等に依頼する顧客のことを指していましたが、今では顧客を表す一般的な言葉として使われるようになっています。また patron といえば、高級店の顧客といったニュアンスが強くなります。

仕事の対価として支払われるお金の言い方にも気をつけましょう。wages は肉体労働に対する時間給というニュアンスが強い言葉です。定期的に固定給をもらっている人が受け取るのは salary といいます。emolument(職務から得る報酬)とか remuneration (報償)といえば、ステータスの高い職に就いている人に支払われるお金というニュアンスになります。

今回は「仕事」に関する婉曲表現を見てきました。同じことを指していうのにも、時と場合によって最も響きのいい婉曲表現を選んで使えば、会話に品が保てることでしょう。

次回は和訳レッスンに戻ります。

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