本記事は、井上ヨウスケ氏の著書『38歳までに受けたい「甘くない」お金の授業―― ビターな現実に打ち勝ち、人生を9割ラクにする方法』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
老後に必要なのは「2000万円」ではない。もっと!
老後2000万円問題は、多くの人の金融リテラシーの低さを表しています。なぜなら、老後2000万円問題の基となったレポートを読めば、老後への備えは2000万円では足りないことが明らかだからです。それでも老後2000万円問題で騒ぐのは一次ソースを見ることができない証拠です。問題となったレポート『金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」』から、おそらく2000万円問題のきっかけになった文章を引用したいと思います。
収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約1300万円、30年で約2000万円の取崩しが必要になる。支出については、特別な支出(例えば老人ホームなどの介護費用や住宅リフォーム費用など)を含んでいないことに留意が必要である。さらに、仮に自らの金融資産を相続させたいということであれば、金融資産はさらに必要になってくる。
どうでしょうか? この文章を読むと、「2000万円どころか、もっと必要じゃん」という感想ではないでしょうか? 「生活費の収支マイナス5万円が30年続けば約2000万円、それに特別な支出を合わせると3000万円ほどは必要になる」と考えられますね。
さらに言えば年金だけで生活できないのは、もう何十年も前から言われていたことです。今さら騒ぐのは不思議でなりません。この騒動で金融機関に行った人も多いそうですから、金融機関からすれば「カモがネギを背負って来た」と思ったに違いありません。
またこのレポートは、本書で解説した「マクロ経済スライド」も考慮されていないデータです。年金は将来20%減ることが既定路線なので、老後に2500万〜3500万円が必要ということになります。正直、これだけのお金を老後に残すことは困難なので、僕は「長く働く方が現実的ではないか」と思います。
実際に同レポートでは、65歳から69歳までの男性の55%、女性の34%が働いています。またアンケート結果では、60歳以上で仕事をしている人の半数以上が「70歳以降も働きたい」と回答しています。60歳でリタイヤして、悠々自適な暮らしを夢見るのは自由ですが、現在の60歳ですら、それができる人は限られています。だから、「実現可能性の高い未来を描く方がいい未来になる」と僕は思います。
今僕たちがしておく最善の方法は、老後に向けて資産運用をするのはもちろん、老後も働くために自分の資本価値を高めておくことです。そうすることで未来のあなたは多くの選択肢を手にすることができます。資産を築いたあとで、仕事を辞められるようになるかもしれません。それが難しいとしても、資産をある程度残しているおかげで、収入は少し減るがやりがいのある仕事を選ぶことができるかもしれません。
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