がんを告知されたらまずどうする? 1年に1回の“訓練”を
藍原:これも、かたよった報道によるものだろうと思うんです。予防術をさかんに取り上げることによって、がんは防げるものだと思ってしまう。だから、がんになった人は「防げなかった人」だと言われてしまう。新型コロナウイルスもそうですよね。どれほど対策しても、感染するときは感染する。病気ってそういうものなんですが、誤った偏った知識で感染した人を叩いてしまう。「100%防げる」なんて言われたら、その情報のほうがガセです。
――病気や医療に「絶対」「確実」はありませんもんね。
藍原:病はいつ来るかわからなくって、確実に防ぐことなんてできない。予防の情報を一生懸命集めるのなら、病気になったときのこともちゃんと考えたほうがいい。「なるかもしれない」と思っていたほうが、覚悟が決まるんじゃないかと思います。
――自分だけはならないと、思いたいですからね。
藍原:その気持ちもわかるんです。もちろん毎日毎日、「がんになったら」と考える必要なんてありません。たとえば、職場の健康診断を受けて「異常なし」の結果をもらったとき、「もし今日、がんの告知がされていたら、私はどうしたろう?」って、年に1回でも訓練しておくといいんじゃないでしょうか。
――健康診断はいい機会になりますね。
藍原:心も体もずっと健康でいられるわけではありません。何かのタイミングで心や体のバランスが崩れたときに、誰が頼れるだろう、どんな方法があるだろうというのはイメージしておいたほうがいい。子供がいるなら治療中、どこかに預けられるのか? 旦那はどこまで頼れるのか? 会社にはどんな制度があるのか? あらかじめ調べておいて損はありませんし、ちょっとシミュレーションしておくだけで、安心できるんじゃないでしょうか。 我が家はまったくやっていませんでした。だから、大混乱に陥った。予行練習、大事。これは混乱してしまった人からのメッセージです。
【“はじめの一歩”として覚えておきたい、がん情報サイト】 ・国立がん研究センター『がん情報サービス』 ・「SNS医療のカタチ」公式ブログ、公式Twitter:@SNS41010441
<藍原育子 取材・文/鈴木靖子> 藍原育子 編集者・ライター。出版社に勤務後、04年よりフリーランスに。10年に長女を出産。13年に乳がんを患い、右胸の全摘手術を行なう。インプラントによる再建、5年間のホルモン治療を経て、現在経過観察中。近年は医療系の記事を中心に執筆活動を行ない、がん保険契約者向け冊子などの企画・執筆も手掛ける。Twitter:@aihara_ikuko
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――世の中には、本当にいらんことを言う人がいます。