これらの贈与税に加え不動産を生前贈与する際には、不動産取得税と登録免許税がかかる。不動産取得税の標準税率は4%だが、特例により2018年3月31日までは土地及び住宅は3%の軽減税率が適用され、登録録免許税は不動産評価額の2%が課税される。

不動産の生前贈与の5つのメリット

まず被相続人が自分の意志で不動産を生前贈与することで、被相続人が死亡した時の相続争いを避けられるというメリットがある。

第二のメリットとして、不動産の生前贈与では、相続時精算課税を利用することで贈与税を大幅に節約できる可能性が考えられる。

相続時精算課税の特別控除額2,500万円までであれば贈与税を納める必要がないが、暦年課税であれば基礎控除の110万円を超える額について累進課税の贈与税がかかる。例えば基礎控除後の課税価格が1,000万円であれば相続時精算課税では贈与税がかからないが、暦年課税では特例税率で30%の贈与税がかかり300万円も課税されてしまう。不動産取得税と登録免許税は贈与税の税率が適用されるが、相続時精算課税は有効な節税方法である。

次に、賃貸収益がある不動産を生前贈与すると、不動産の贈与完了後は不動産収益も贈与者から被贈者に移り、不動産収益分を相続の課税価格から外すことができる。これにより将来の相続税の課税価格を減るため、賃貸収益のある不動産の生前贈与は非常に有効な節税手段となる。

4つ目のメリットとして、贈与税の配偶者控除を利用して将来の課税額を少なくできることが挙げられる。結婚してから20年以上経過する夫婦間では贈与税の基礎控除110万円とは別に2,000万円の配偶者控除が利用でき、2,110万円までは贈与税がかからない。相続は夫から妻へ、そして子供へ相続する形が多く、この場合は2重に相続をすることとなる。配偶者控除は、この2重にかかる相続税をあらかじめ減らしておくことができ、節税できる制度だ。

最後に、不動産自体の生前贈与ではないが、賃貸収益がある不動産からの収入は生前贈与しておけば相続時の課税価格を抑えられる。

相続資産額が高額な場合、相続税の基礎控除額を超える額は相続税が課税されるが、相続税は相続資産が6億円超であれば相続税率は55%にもなる累進課税だ。生前贈与により相続時の課税価格を下げれば相続税を抑えられる。例えば暦年課税の基礎控除110万円を10年間生前贈与すれば1,100万円分課税価格を下げることになり、相続税を低減できる。

不動産の生前贈与の3つのデメリット

一方でデメリットもある、まず相続人の間で相続争いの心配がなく、課税価格が相続税の基礎控除額以下の場合、不動産を生前贈与により相続時は不要の不動産取得税がかかってしまう。登録免許税も相続の場合に比べて高くなる。このような場合、不動産を生前贈与するよりも相続したほうが少ない納税額で済むわけで、生前贈与は得策とはいえなくなる。

また、暦年課税で相続人が相続時より3年以内に生前贈与を受けていた場合、この贈与については相続税の対象として扱われる。

暦年課税の基礎控除を利用して生前贈与を行っても3年以内の分は相続税の対象となるが、相続開始時点を事前に知ることはできないため、計画通りに生前贈与で課税価格を減らせない。なお、暦年課税で基礎控除を超えて贈与し贈与税を納めた場合、贈与税額控除により支払った贈与税は相続税から差し引かれるので2重に課税されることはない。

最後に、不動産の生前贈与を相続時精算課税で行う際には、前に説明した通り相続時よりも割高の不動産取得税と登録免許税を支払う必要があることに加え、不動産登記を行うことが必要となる。この不動産登記は自分でできないことはないが、専門知識が必要なためを司法書士などに依頼するのが一般的で、その費用も見込んでおかねばならないことはデメリットの一つだ。

不動産価格の変動は不確定要素

相続時精算課税制度で不動産を生前贈与する場合、相続発生時に生前贈与時の額で清算されるがこの時に不動産評価額が上がっているか下がっているかによって、得失が生じる。

生前贈与時よりも相続時の不動産価格が上がっていれば生前贈与時の安い不動産価格で評価され有利になるが、相続時の不動産評価額が下がっていれば生前贈与時の高いで額で清算され不利となる。これは相続税の基礎控除範囲内の額で相続税はかからずさほど問題になることはないが、それを超えると税額にかなりの差が生じる可能性がある。

例えば生前贈与時に不動産評価額が5,000万円であり相続時に7,000万円になっていた場合、相続税は7,000万円ではなく5,000万円で計算されるため相続税は安く済む。反対に相続時に不動産価格が3,000万円に下落していた場合は、相続税は3,000万円ではなく5,000万円で計算されるため、相続税を余計に払わなければならなくなる。

このように不動産の相続時精算課税制度は、不動産価格が上昇する際には得をするが不動産価格が下落する場合には損をする可能性がある。

しかし、相続がいつ発生するか、またその時の不動産価格が上昇しているのか下落しているのかを事前に予測することはできない。相続税の基礎控除額を超える不動産の生前贈与について、この点に注意が必要だ。

不動産の生前贈与の注意点

不動産については、単純に相続税と贈与税の比較をすれば納税額を抑えられるわけではなく、不動産相続の特例など関係する法律も含めて損得勘定をすることが必要だ。不動産の生前贈与は相続時のトラブルを避ける効果があり、相続税の節税もできる有効な手段だ。不動産の生前贈与を検討することは有意義といえるのではないだろうか。

文・ZUU online 編集部/ZUU online

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