4.節税もできる投資方法1:NISA(ニーサ)

投資をする際に知っておくべきポイントに、税金があります。投資で得られる売却益や配当といった利益には、税金がかかります。利益の金額にもよりますが、原則として確定申告をする必要があります。つまり、最終的に投資であげた自身の利益が確定するのは、税金を支払った後といえるでしょう。より高い利益を出すためには、支払う税金を可能な限り抑える必要があるのはいうまでもありません。

NISA(少額投資非課税制度)は、株や投資信託などの運用で得た売買益および配当・分配金にかかる20%(2037年までは復興特別所得税がかかるため20.315%)の税金が、一定期間非課税となる制度です。

NISAには、3種類の口座があります。3種類の口座のうち、ジュニアNISAは未成年者を対象とした口座です。本記事では、20歳以上を対象とした「一般NISA」および「つみたてNISA」を詳しく紹介します。1人で複数口座を持つことはできないため、投資の目的に合った口座を1つ選んで開設しましょう。

一般NISAの特徴

一般NISAは、株や投資信託から得られる利益が非課税となる口座です。詳細を表5にまとめます。

▽表5.一般NISAの詳細

項目 詳細
利用できる人 日本在住の20歳以上の人
非課税対象 株や投資信託などから得られる
値上がり益・配当・分配金
非課税投資枠 新規投資額で毎年120万円
(5年最大600万円)
非課税期間 最長5年
投資可能期間 2014年~2023年

一般NISAの特徴は、非課税対象となる金融商品の種類が多い点にあります。投資信託や国内外の株式だけでなく、国内外のETF・ETN(イーティーエヌ:上場投資証券)・国内外のREIT・ワラント債も対象となります。そのため、より積極的に投資を楽しみたいという人に適しているといえるでしょう。

一般NISAの非課税期間は最長5年です。ただし、非課税期間終了後にロールオーバー(新たな非課税投資枠への移管)することで、最長10年間の継続保有が可能になります。

つみたてNISAの特徴

つみたてNISAは、一定の投資信託から得られる利益が非課税となる口座です。詳細を表6にまとめます。

▽表6.つみたてNISAの詳細

項目 詳細
利用できる人 日本在住の20歳以上の人
非課税対象 一定の投資信託などから得られる
値上がり益および分配金
非課税投資枠 新規投資額で毎年40万円
(20年最大800万円)
非課税期間 最長20年
投資可能期間 2018年~2037年

つみたてNISAの特徴は、非課税期間が20年と長期にわたる点です。毎年少額ずつ、長期にわたり非課税で資産運用をしたい人に向いているといえるでしょう。

つみたてNISAの対象となる一定の投資信託とは、「安定的な資産形成を目指すために、長期・積立・分散投資に適している」と金融庁が認めたものです。具体的には、ノーロード(販売手数料0円)や分配金の支払い頻度が少ないといった、法令上の条件が設けられています。

NISAを利用するメリットとデメリット

税制優遇が魅力のNISAにおける、メリットとデメリットを解説します。

・NISAを利用するメリット
NISAを利用するメリットは、税金が非課税になるため効率のよい運用を目指せることです。例えば、毎年2%の分配金が出ている投資信託に投資したとします。分配金を再投資した場合の一般口座とNISA口座および、つみたてNISA口座での運用成果の比較を、表7‐1・2に紹介します。

▽表7‐1.100万円を投資した場合の、一般口座と一般NISA口座の運用成果比較

一般口座 NISA口座
1年目 101万5,937円 102万円
2年目 103万2,127円 104万400円
3年目 104万8,576円 106万1,208円
4年目 106万5,287円 108万2,432円
5年目 108万2,264円 110万4,080円

▽表7‐2.40万円を投資した場合の、一般口座とつみたてNISA口座の運用成果比較

一般口座 NISA口座
1年目 40万6,374円 40万8,000円
2年目 41万2,850円 41万6,160円
3年目 41万9,429円 42万4,483円
4年目 42万6,113円 43万2,972円
5年目 43万2,903円 44万1,631円
6年目 43万9,802円 45万464円
7年目 44万6,811円 45万9,473円
8年目 45万3,931円 46万8,662円
9年目 46万1,165円 47万8,036円
10年目 46万8,514円 48万7,596円

上記のように、非課税になることでより多くの利益を得られる点が、NISAの大きな魅力といえるでしょう。

・NISAを利用するデメリット
NISAのデメリットは、NISA口座での取引が損益通算の対象とならない点です。本来であれば、株式などさまざまな投資で発生した利益と損失は相殺できますが、NISAはその対象とならず、損失控除もできません。そのため、複数の口座で投資をしている場合、NISAを利用したために税金額が上がってしまうケースも考えられます。複数の口座で投資をしている場合には、それぞれの運用実績などを確認したうえで、NISA口座の利用を決めることが肝心です。

5.節税もできる投資方法2:iDeCo(イデコ)

税金の優遇が受けられる投資方法の2つめはiDeCo(個人型確定拠出年金)です。

iDeCoの基本事項を確認

iDeCoは、公的年金にプラスして給付を受けられる、任意加入の私的年金制度です。加入者自身が、加入の申込や掛金の拠出・運用方法の選択を行い、60歳以降に掛け金と運用益の合計額を年金として受け取れます。

拠出した資金の運用は、預貯金もしくは保険商品・投資信託などで行います。運用できる商品の種類は、申し込む金融機関により異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。iDeCoには、拠出限度額があります。加入資格別の拠出限度額は、表8のとおりです。

▽表8.iDeCoの加入資格別の拠出限度額一覧

加入資格 拠出限度額(月額)
自営業者(第1号被保険者) 6.8万円
(国民年金基金または
国民年金付加保険料との合算枠)
会社員・公務員等
(第2号被保険者)
会社に企業年金がない会社員 2.3万円
企業型DC(確定拠出年金)
に加入している会社員
2万円
DB(確定給付年金)
と企業型DCに加入している会社員
1.2万円
DBのみに加入している会社員
公務員等
専業主婦・主夫(第3号被保険者) 2.3万円

iDeCoの掛け金は、月々5,000円以上1,000円単位で加入者自身が決定します。また、1年に1回のみ、掛け金額の変更が可能です。

iDeCoで受けられる節税は3つ

iDeCoでは、拠出時と運用時、受取時に税金の優遇が受けられます。

・iDeCoの税制優遇1:拠出した掛け金が全額所得控除される
iDeCoの掛け金は、全額所得控除の対象となります。控除を受けるには、第1号および第3号被保険者は、確定申告書の小規模企業共済等掛金控除欄に拠出合計額を記載し、確定申告しましょう。第2号被保険者は、給与所得者の保険料控除申告書の小規模企業共済等掛金控除(個人型年金加入者掛金)欄に拠出合計額を記載し、勤務先に提出します。

・iDeCoの税制優遇2:運用益が非課税になる
iDeCoでは、運用益にかかる20.315%の税金が非課税となり、再投資されます。

・iDeCoの税制優遇3:年金受取時にも控除を受けられる
iDeCoでは、年金受取時にも控除を受けられます。控除は、年金の受け取り方法によって以下のいずれかとなります。

・一括受取:退職所得控除
・分割(年金)受取:公的年金等控除

iDeCoを利用するメリットとデメリット

iDeCoにもNISAなどと同様に、メリットとデメリットがあります。自分の投資スタイルやライフスタイルなどを勘案して、利用を検討しましょう。

・iDeCoを利用するメリット
iDeCoのメリットは、節税しながら長期で資産運用できる点です。iDeCoは、日本在住の20歳以上60歳未満であれば誰でも加入できます。税金の控除を長く受けるには、20代・30代のうちにiDeCoをスタートさせるとよいでしょう。

・iDeCoを利用するデメリット
iDeCoのデメリットは、原則として60歳まで拠出金の出金ができない点です。iDeCoにおける税金の控除は、老後資金の準備といった目的のもとで設けられています。そのため、60歳よりも早く受け取ることはできない仕組みとなっているのです。

なお、iDeCoでは新規加入時に税込2,829円、掛け金納付時に税込105円、掛け金の還付が発生した場合に税込1,048円の手数料がかかります。また、運営管理機関や事務委託先金融機関ごとに事務費用なども発生します。

6.まとめ:自分に合った投資方法で計画的な資産作りを始めよう

投資可能期間を長くとれる現役のサラリーマンは、投資による資産運用が有効です。投資には株や不動産などいくつかの種類があるため、リスク許容度や資産状況などを考慮し、自分に合ったものを選びましょう。投資コストを抑えられる非課税制度なども活用し、将来に向けた資産作りを始めてみてはいかがでしょうか。

文・N.ヤマモト
都市銀行にてファイナンシャルプランナーとして主に、富裕層の資産形成・運用相談を担当。投資信託や保険商品・債券・外貨預金の販売に携わる。その後はWEBライターとして、投資や資産形成についての情報を発信。子供の学費や老後資金作りのため、自らも20代から資産運用を続けている

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