預金の超低金利状態が続くなか、保有する資産を守り育てる手段として、投資を始めるサラリーマンが増えています。投資にはいろいろな種類があるため、将来に向けた資産作りを成功させるためには、ご自分の資産状況やリスク許容度などに合った金融商品を選ぶことが大切です。

この記事では、
・サラリーマンが投資を行うべき理由
・サラリーマンが選ぶべき4つの投資方法
・節税が可能な投資方法

について詳しく説明します。サラリーマンが本業を圧迫せずに投資で資産形成を行うための、参考にしていただければ幸いです。

1.サラリーマンが投資を始めるべき2つの理由

ネット証券大手の楽天証券によると、2020年の新規口座開設数は2月が10万5,940口座、3月には16万4,011口座にのぼりました。また3月の新規口座開設者のうち、40代以下が占める割合は82.9%で、そのうち72.3%が投資初心者だったという結果も出ています。これらの結果からも、若年層の勤め人を中心に投資に興味を持つ人が増えていることがわかります。

ここではまず、サラリーマンが投資を始めるべき理由を2つ紹介します。

投資を始めるべき理由1:預金金利では物価上昇率に追いつけない

サラリーマンが投資をするべき1つめの理由は、現在の預金金利では物価の上昇率に追いつけないからです。総務省発表の消費者物価指数によると、2015年の物価を100とした場合、2019年は102に上昇しました。これは、たとえば2015年に10万円だった商品が、2019年には10万2,000円に値上がりしたことを意味します。

一方、2020年12月現在の1年定期預金金利は0.002%ほどです。この金利で、2015年から2019年までの4年間複利で預入したとしても、4年後の利息は7円(税引き後)にしかなりません。つまり、2015年には手元の10万円で購入できていた品物が、預金しているだけでは2019年には購入できなくなることが考えられます。

このように金利が物価上昇率よりも低いケースでは、預金により資金は保護されても、資産価値を減らしてしまう可能性があるということです。

では、株や不動産といった金融商品に投資している場合はどうでしょうか。投資は元本の保証がないため、運用成績次第では資産が減ってしまう可能性もあります。しかし投資の対象となる金融商品の特徴は、物価に合わせた値動きをすることです。そのため資産の一部に金融商品を組み入れることで、インフレに負けない資産形成を目指せるようになります。

投資を始めるべき理由2:将来に向けて投資期間を長くとれる

サラリーマンが投資をするべき理由の2つめは、投資期間が長くとれる点です。長期間投資すれば、複利効果の恩恵を最大限に受けられるのはもちろん、以下の理由からも長期で行うほうがよいとされます。

・時間分散によるリスクの軽減が図れる
・配当や分配金といったインカムゲインの積み上げができる

時間分散とは、複数回に分けて金融商品の購入や売却をすることです。これにより、買値や売値の平均化を図り、値動きにより資産が減少するリスクの軽減を目指せます。また長期保有によるインカムゲインの積み上げも、リスクを抑えるうえで有効です。インカムゲインを多く得ていれば、仮に売却時に損失が出たとしても、相殺できるケースもあるでしょう。

このように投資を成功させるには、時間を利用することが有効な場合が多くあります。定年退職後、退職金などを元手に投資を始めるのも悪くありませんが、老後資金を貯める時間をより長くとれる現役サラリーマン世代は、投資を始めるための十分なチャンスを備えているともいえるのです。

2.サラリーマンが投資を行うハードルと対策方法

サラリーマンが投資を始める際には、いくつかのハードルがあります。ここではそれらのハードルと、乗り越えられる対策方法を見ていきましょう。

ハードル1.会社の副業規定に抵触する可能性がある

サラリーマンは勤務先での本業があります。近年の国による副業・兼業の普及促進によって、副業を認める企業も増えてきていますが、規定で副業を禁止している企業も依然として多いといえます。投資が副業規定に抵触する場合、大きなペナルティを受けるリスクがあるため注意が必要です。

参考:厚生労働省:「副業・兼業の促進に関するガイドライン」平成 30 年1月策定(令和2年9月改定)

【対策】
・副業規定を確認する
(例):確定申告が不要な、雑所得20万円以下であっても「禁止」とする企業もある
・抵触しない種類の投資を行う
(例):事業規模(5棟10室ルールによる)ではない不動産投資は抵触しない会社が多い

ハードル2.時間的に本業を圧迫する

たとえば株式投資において短期投資を選んだ場合、株式市場の開いている時間帯とサラリーマンの勤務時間はほとんど重なるため、本業の仕事中に抜け出して株を売買…という事態も起きかねません。そうすると、本業に支障が出るどころか、就業規則違反に当たる可能性もあります。本業に支障をきたさない投資方法を選ぶ必要があります。

【対策】
・デイトレードなど、一日中の市場チェックが必要な投資方法は避け、投資信託などにする

以上から、サラリーマンが投資を行ううえでは、次のような条件が見えてきます。

▽サラリーマンにも可能な「投資」の条件
・本業を圧迫しない=細かい作業や手間がかからないこと
・インカムゲイン(配当や家賃収入など)を主な収入にすること
・毎月複利投資を利用してコツコツ積み立てること

3.サラリーマンも始めやすい投資の種類4選

では、実際にサラリーマンが始めやすい投資には何があるのでしょう。ここでは、サラリーマンに向いていると思われる投資のなかで、株式投資、投資信託、不動産投資、ロボアドバイザーの4つの特徴と、それぞれのメリット、デメリットを紹介します。

サラリーマンでも始めやすい投資1:積極的に投資を楽しめる「株式投資」

積極的に投資を楽しみたいと考えている人は、株式投資にチャレンジしてみましょう。株式投資は企業が発行する株式を購入し、値上がり益や配当・株主優待といった利益を目指す投資です。株式投資のメリットおよびデメリットは、表1のとおりです。

▽表1.株式投資のメリットおよびデメリット

メリット デメリット
・応援したい企業に出資できる
・配当や株主優待といったインカムゲインを期待できる
・大きな値上がり益を得られることもある
・値動きが大きい
・まとまった資金が必要なケースもある

株式投資のメリットは、応援したい企業に出資しながら利益を目指せる点です。投資した企業の業績がアップすれば、株価が上がる可能性もあります。株主向けに、企業が提供するサービスや商品が贈られる「株主優待」も、株式投資の楽しみとなるでしょう。

一方で株式投資は、一般的にそのほかの金融商品と比べて値動きが大きく、リスクが高めといわれます。値上がりの際は利益が得られる反面、企業の業績悪化などによって損失が大きくなるリスクをはらみます。

また株式投資をするにはまとまった資金が必要になる場合もあります。株取引は原則として、単元株単位(基本的に100株)で行われるからです。たとえば、1株2,000円で単元株数が100株の銘柄の場合、最小取引額は20万円(2,000円×100株)となります。

なお、一部の証券会社では単元未満株でも取引ができます。単元未満株を利用すれば数千円からの投資が可能なので、少額ずつ投資しながら知識を蓄えてもよいでしょう。ただし、単元未満株は単元株と取引方法が異なる点もあるため、あらかじめ確認しておきましょう。

サラリーマンでも始めやすい投資2:専門家に運用を任せられる「投資信託」

投資信託とは、投資家から集めた資金を専門家である運用会社が運用し、利益を投資家に還元する金融商品です。運用を専門家に任せられるので、投資初心者や投資の時間が取れない人でも比較的始めやすい金融商品だといえるでしょう。投資信託には、表2のメリットおよびデメリットがあります。

▽表2.投資信託のメリットおよびデメリット

メリット デメリット
・運用を専門家に任せられる
・少額から始められる
・分散投資の効果を得られる
・値上がり益と分配金が期待できる
・手数料がかかる

投資信託は、ファンド内で複数の銘柄に投資が行われるため、分散投資の効果が得られます。また、数千円~1万円といった少額から始められるため、比較的投資しやすい金融商品といえるでしょう。

投資信託の注意点は、手数料がかかることです。専門家に運用を依頼する投資信託では、専門家に支払う報酬としての手数料が発生します。手数料は投資信託を購入する金融機関や商品により異なるため、事前に確認しましょう。

サラリーマンでも始めやすい投資3:大家さんになれる「不動産投資」

不動産投資は、不動産から得られる賃貸料を主な収入源とする投資方法です。一般的に、株式投資よりはリスクが少ないミドルリスクの投資方法といわれます。不動産投資のメリットおよびデメリットを表3で確認しましょう。

▽表3.不動産投資のメリットおよびデメリット

メリット デメリット
・継続的な賃貸収入を狙える
・不動産の値上がり益を得られることもある
・資産として不動産が手元に残る
・空室リスクがある
・家賃滞納リスクがある
・修繕費などのコストがかかる
・現金化に時間がかかる場合がある

賃貸料を主な収入源とする不動産投資は、投資の計画が立てやすく安定した利益を目指せるといわれています。もちろん、投資した不動産が値上がりした場合、売却益を得られるケースもあります。

一方、不動産投資のデメリットは、空室や家賃滞納などにより計画通りに賃貸料を得られなくなることです。不動産投資のリスクを軽減させるには、投資物件の立地や築年数などをよく確認しましょう。なお、不動産投資にはいくつか種類がありますが、ここでは3つの投資方法を紹介します。

・不動産への投資方法1:実際の不動産に投資する
不動産投資の1つめは、実際の不動産に投資する方法です。個人で不動産に投資した場合、利益がすべて投資家のものになるほか、物件を資産として保有できるメリットがあります。

実際の不動産に投資する注意点は、数千万円の資金を用意する、もしくはローンの借り入れが必要になる点です。また個人で物件を保有する場合、投資家自身で管理・維持をしなければなりません。維持管理を管理会社などに依頼する方法もありますが、その場合は手数料が発生します。

・不動産への投資方法2:不動産小口化商品を購入する
不動産小口化商品とは、1つの物件を小口化し、複数の投資家が出資する不動産投資です。不動産の管理などは事業者が行い、利益は投資家に分配されます。不動産小口化商品のメリットは、100万円程度から投資できる点です。複数の投資家から資金を集めるため、1人では購入が難しい高額の物件に投資することもできるでしょう。

不動産小口化商品の注意点は、手数料がかかる点です。利益の一部を報酬として事業者に支払うため、投資家が受け取る利益は少なくなります。

・不動産への投資方法3:REIT(リート)を購入する
REIT(不動産投資信託)は、不動産を投資対象とする投資信託です。専門家である投資法人に運用を任せるため、投資家は物件選びや管理の負担がありません。また、数万円から投資ができる点も、REITのメリットといえるでしょう。金融商品であるため比較的流動性が高く、現金化しやすいのも見逃せないメリットです。

一方、REITの注意点は、運用を行う投資法人に対し報酬としての手数料が発生する点です。また、投資法人が破綻した場合には、資産が減少する可能性もあります。

サラリーマンでも始めやすい投資4:お任せ投資ができる「ロボアドバイザー」

できるだけ手間をかけずに投資をしたい人は、ロボアドバイザーも選択肢となるでしょう。ロボアドバイザーとは、投資家に代わってAI(人工知能)が運用を行ってくれるサービスです。どのような運用をするかは、申込時に回答するアンケートをもとに決定されます。金融商品は証券会社によって異なりますが、ETF(イーティーエフ、上場投資信託)や投資信託で主に運用されています。ロボアドバイザーのメリットおよびデメリットは、表4のとおりです。

▽表4.ロボアドバイザーのメリットおよびデメリット

メリット デメリット
・誰でも簡単に、手間なく始められる
・比較的少額で始められる
・手数料がかかる

ロボアドバイザーのメリットは、手軽に投資を始められる点です。投資方針に合わせたリバランスなども自動的に行われるため、投資家にかかる手間はほとんどありません。また、最小投資金額が10万円(積立は1万円)ほどという点も、ロボアドバイザーを始めやすいポイントの1つです。

ロボアドバイザーのデメリットは、手数料がかかる点です。利用するロボアドバイザーや投資額によって手数料額は変わりますが、おおむね1%程度に設定されています。なお、ロボアドバイザーは長期での運用を目指したサービスとなっているため、短期運用には向いていないという点をふまえ、自分の投資スタイルに合わせて活用するとよいでしょう。