iDeCoと企業型DCの違い

まずiDeCoであるが、資金の出し手は個人である。個人で掛金を拠出する。加入は個人の自由意思である。制度を利用しないという選択肢もあるが、税制メリット等が充実しているので、利用できる方は利用しないことは勿体無い。そして運営機関である金融機関も個人が自由に選択できる。iDeCoは「老後に備えて個人が自由意思、自己責任で資産形成して下さい、そのために税制メリット等を認めます」という制度といえる。

これに対して企業型DCは資金の出し手は原則会社である。(一部個人の上乗せを認めているケースあり)。会社の制度であるので、企業型DCを導入するかどうかは会社の決定事項だ。加入となれば、原則は全員が加入する。金融機関は会社が決めた運営機関の中から選ぶ。そしてその運営機関の商品ラインナップから各従業員が何に投資するかを選択する訳である。企業型DCは会社が用意している退職金制度のひとつの形態と言える。

企業型DC 商品ラインナップに問題点は

企業型DCの商品ラインナップについて問題はないのだろうか。筆者は外資系プライベートバンクで世界の最先端の運用を取り扱ってきた。しかしその勤務先の企業型DCは「お粗末」としか言えない状況であった。「こんなコスト高の投信、賢い投資家は買わないだろう」と思われる商品がリストの上位に掲載されていた。ラインナップの投信の信託報酬は税抜きで、1.74%、1.53%、1.50%、1.00%といった具合であった。救いは信託報酬0.40%未満のインデックス商品が3本のみあったことだ。海外ETFには現在では経費率0.05%といった商品もあるので、0.25%のインデックスでも依然コスト高の印象はあった。限られた選択肢だが仕方無い。どれも積極的には選ばないが、限られた選択肢の中から決定する状況であった。

企業型DCと経理担当の孤独 救えるのは経営者

企業型DCの商品ラインナップに金融機関としてはできるだけ高いコストの投信を入れたいのが本音であろう。何を選んでよいのかわからない従業員がリストの上の方から選んで、コスト高=金融機関の収益性高の商品を選んでくれれば儲けものである。本来あってはならないことだが、金融機関が融資先に対して「優越的な地位を利用」して、コストが高めの商品中心にセールスしてきたら、経理担当者はNOと言えるだろうか。

融資を受けられないという事が死活問題になる企業であれば、経理担当者は金融機関との関係悪化を回避することが仕事である。従業員のお金で、少額の事でもあるし、「まあ、いいか」として受け入れてしまっていても不思議はない。「もっとコストの安い商品中心にして下さい」とわざわざ火中のクリを拾う必要性は無い。それによって従業員から感謝されることもまず無いであろう。また経理担当者は運用商品のプロでは無いことも多いので、「金融機関の提案通り」であれば自らリスクを負う事はない。

経営者まで意思決定が上がって来ない状況で、従業員の退職金運用は従業員が望まない高いコストにさらされている可能性がある。経営者は従業員の将来の資産形成のために気配りをすべきであろう。従業員のモチベーションが上がる会社を作れるのは、社員想いの経営者なのではないだろうか。(※詳細は勤務先の年金加入状況をご確認の上、専門家にご確認下さい)

文・安東隆司(CFPRファイナンシャル・プランナー)/ZUU online

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