堤下の高度なツッコミ技術は、われわれの普段の会話にも通じるところがあると田辺氏は指摘する。

「ツッコミが上手い人は会話も上手なのですが、『なんでやねん!』みたいな強いツッコミではなく、『それってこういうことなの?』みたいな“受け”のツッコミを入れていくと、会話がきれいに成立していきます。つまり堤下さんのツッコミ論は会話術にも生かされます。そういうことができるのは、堤下さんがやはり“受け”が上手いから。話を聞いてちゃんと受けて、『なんでやねん!』みたいな大きめのリアクションではなく、ちょっと落ち着いたトーンのリアルな反応で返す。これが堤下さんのツッコミのおもしろさ。ちゃんと話を聞くからこそできる技です。

 インパルスのネタでも、堤下さんの“受けツッコミ”のおもしろさが感じられます。たとえば未成年の息子(板倉)がタバコを吸っているところを発見し、事情を聞く父親(堤下)のコント。息子はタバコを吸っているどころか、企業や政治を揺るがすような隠し事をしています。想像のはるか上を行く告白を前にした堤下さんのツッコミは、間の作り方が抜群に上手く、さらに戸惑いのリアクションや表情など、“受けツッコミ”としていずれも完璧でした。

 『なんでやねん!』みたいな関西風味の“攻めツッコミ”ではなく、言葉少なめで、表情などでボケを吸収する“受けツッコミ”が一気に広がったのは、インパルスや堤下さんの影響が大きい。ネタでもバラエティの平場でも堤下さんの“受けツッコミ”は冴え渡っていました。そう考えるとインパルスと堤下さんは、間違いなく2000年代最強のコンビの1組であり、また2000年代最高峰のツッコミと言えるのではないでしょうか」

インパルス活動再開の可能性は

 それだけの才能と技術がありながら、堤下はなかなか地上波で活躍することができず、インパルスも活動休止状態にある。再びインパルスのコントを見ることができる日はくるのだろうか。田辺氏はその可能性について、こう分析する。