映画では省かれていますが、バーナムが初めて注目を集めるようになったのは、「ワシントンの乳母」でした。米国の初代大統領ジョージ・ワシントンの乳母だったという自称161歳の黒人女性、ジョイス・ヘスを見世物にして大成功を収めたのです。真偽のほどを確かめるために、長い長い行列ができたそうです。
騒ぎがひと段落すると、バーナムは「ジョイス・ヘスは実は人間ではない。巧妙に作られたロボットだ」という匿名の投書を新聞社に送りつけ、新聞紙上で討論になる騒ぎを起こしています。今でいう炎上商法です。このおかげで、客足が再び増えたそうです。
さらにジョイス・ヘスが亡くなった際には検死解剖の様子を有料公開しています。検死の結果、ジョイス・ヘスは80歳未満だったことが判明しています。この「ワシントンの乳母」で儲けたお金で、バーナムは「アメリカ博物館」を買い取ったそうです。
英国女王に謁見した「親指トム将軍」
バーナムの快進撃は続きます。小人症の男性チャールズ・ストラットン(サム・ハンフリー)を「親指トム将軍」と名付け、ゴージャスな服装を着せて有名人の物まね芸をやらせます。結合双生児はかつて「シャム双生児」と呼ばれていましたが、それは「アメリカ博物館」で大人気だったタイ出身のチャン&エン兄弟(小森悠冊、ダニエル・ソン)が由来でした。
バーナムの悪名は欧州にまで届き、バーナムは仲間たちを連れて、英国のヴィクトリア女王に謁見しています。さらには「北欧の歌姫」こと人気オペラ歌手のジェニー・リンド(レベッカ・ファガーソン)とお近づきになり、彼女の全米ツアーをプロデュースしています。娯楽の少なかった時代、バーナムのネームバリューは相当に高かったようです。
ひげ女ことレティ・ルッツ(キアラ・セトル)を中心にしたミュージカルパートで歌われる「ディス・イズ・ミー」は、迫力あるシーンとなっています。見世物の世界で生きるマイノリティーたちの心の叫びが力強く伝わってきます。