非課税期間終了時のロールオーバーとは?

選択肢の一つが、非課税期間が終了する翌年の非課税投資枠に移管(ロールオーバー)することだ。例えば、2014年にNISAで購入して保有し続けた株式等の非課税期間は2018年末に終了する。同一金融機関で2019年もNISAを利用する場合、2019年の非課税投資枠に2014年にNISAで購入した株式等を移管(ロールオーバー)することができる。2019年の非課税投資枠に移管した株式等の非課税期間は2019年に新たにNISAで購入したものと同様に扱われるため、実質的に非課税期間を5年間延長することになる。なお、2014年に購入した株式等の評価額が、非課税投資枠の120万円を超えるとしてもロールオーバーは可能である。

ロールオーバーは非課税期間が実質的に延長できる便利な仕組みだが、注意点もある。まず、同一金融機関でしかロールオーバーできない。また、非課税期間終了の翌年の非課税投資枠にロールオーバーをした場合、ロールオーバーした評価額分が非課税投資枠を使ったことになり、その分新規に投資できる額が少なくなる。ロールオーバーした評価額が120万円以上の場合、非課税投資枠を全て使い切ることになり、その年はNISAで新規投資はできなくなる。

さらに、NISAは恒久的な制度ではないため、ロールオーバーが永遠にできるわけではない。現状ではNISA制度は2014年から2023年まで非課税投資枠を設定可能とされている。2014年に購入した株式等を2019年の非課税投資枠にロールオーバーしても、2024年には非課税投資枠は存在しないため再度ロールオーバーを行うことはできない。

課税口座に移管するとは?

非課税期間が終了する際の第3の選択肢は課税口座に移管することである。課税口座とは利益が出た場合に税金が発生する口座である。非課税期間内に売却せず、期間終了時に、ロールオーバーできる非課税投資枠もない場合はこの選択肢のみとなる。この際、非課税期間が終了する時点の価格で課税口座に移管される。その後の税計算では、非課税期間終了時点の価格で購入したものとみなされる。

例えば、NISAで購入した120万円の株式等が課税口座への移管時に値上がりしており、150 万円になっていたとする。この場合、150万円で購入したのと同様にみなされて、今後の損益及び税金が計算されることになる。以後、170万円でこの株式等を売却した場合、150万円との差額30万円に課税される。当初は120万円で購入したため、実際は50万円の利益が出ているが30万円分にしか課税されない。

損失したのに税金を払う必要がある?NISA最大のデメリット

問題となるのは、課税口座に移管時に値下がりしているケースだ。120万円購入した株式等が移管時に80万円まで値下がりしていたとしよう。この場合、80万円で購入したと同様に扱われる事となる。移管後、100万円で売却した場合、80万円との差額で利益の20万円に対して課税され約4万円の税金を支払うことになる。しかし、当初120万円で購入したため、実際のところ投資家は20万円の損失を被っている。つまり、実質20万円の損失が発生したにもかかわらず約4万円の納税が必要となる。

上記のケースがNISAの最大のデメリットと言えるだろう。投資家が損失を被ったにもかかわらず、税金を支払う必要が生じてしまうからだ。

デメリットも理解したうえでNISAを利用しよう

NISAの“非課税”は投資家にとって確かに魅力的である。しかし、NISAの損失が損益通算できない点や、課税口座への移管の際に時価で購入したとみなされる点は、投資家に経済的損失をもたらしかねない。これからNISAの利用を検討しているならば、注意点やデメリットをよく把握して利用を決めていきたい。既にNISAを利用している投資家の場合、まずは非課税期間の終了時にどうするべきかを考えておく必要があるだろう。

NISAに関しては、2018年からは積立投資に特化した「つみたてNISA」の制度も開始された。同じ非課税で投資できる制度にiDeCoといった確定拠出年金もある。これらの制度には、それぞれ特徴やメリット・デメリットがある。比較検討するのは簡単ではないかもしれないが、金融機関のキャンペーンや有利に見える特徴だけで判断せず、自身の投資スタイルにあった制度を選択することが肝要だ。

文・ZUU online編集部/ZUU online

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