たとえば、お昼時の場面。街中の公園でクールにランチパック(?)を食べる有木野に対して、アジア人街の人々と頻繁に交流する麻里は、どこで買ってきたのか、さそりの丸焼きを嬉しそうに取りだす。
黒々としたさそりを眺め回す麻里の近くに有木野がいる。躊躇せずにパクつく様子を見た彼は、無表情ながらぎょっとして、彼女に釘付けになる。
さそりを手にする麻里を眼差す方向に全身が完全に固定されているように見える。ランチタイムの静と動の描き分けで、キャラクター性の違いを映像的に明確化する場面である。
◆水餃子を咀嚼するアップ
お互いが警察関係者であることがわかったふたりは、有木野が勢いにのまれる形で麻里が半ば主導権を握る。「晩ゴハンでもどー?」とさっそく麻里から連絡がくる。「予約したから!」と連投で連絡がくる。
有木野は呼びだされた中華料理屋に赴く。ここでも麻里が注文するのは、見たことも聞いたこともないような、ゲテモノ料理ばかり。有木野はさすがに水餃子を頼む。
無表情を崩さず、中国語で水餃子を注文するさりげない感じがいい。面白いのは、その水餃子を頬張る松田のアップが写され、咀嚼する微動をわりと時間を割いてカメラが捉えることである。
◆デビュー作を思いだす自然現象
なんだか変なワンショットだなと思った。ちょっとだけ違和感すら覚える。食事場面での単純な時間経過にしては、咀嚼する微動を執拗に撮り過ぎているからだ。
口元だけの微動とはいえ、それまでの場面では微動すら封じ込めていたはずの松田龍平をどうしてこの中華料理屋では動かそうとしたのか。松田龍平による松田龍平のためだけに演出されたような、この微動……。
有木野の謎めいた過去が徐々に明かされようとする第2話ラスト、有木野は、馴染みのバーカウンターで年若い男性・シウ(紘瀬聡一)に話しかけられる。お互いに何者なのか。素性を探ろうとするその男性が隣の席まで来る。有木野の右頬に不意に口づけする。