2年連続となったトップバッターでの登場時、くるまはツカミで「……終わらせよう」と言い放った。結果としてこの一言は、続く2番手のヤーレンズや3番手の真空ジェシカがツカミで被せていく流れを生むことになる。だが実は、これを言うことにしたのは土壇場での判断だったという。
「俺らがトップで引かれた後、ずっとスタジオがざわざわしてたから、ケムリに『トップいじりします』って言ったんです。そういうこと言わないと、漫才を見る感じにならないと思って。でも階段を降りていったら観客全員が『M‐1が始まる……!』って顔色がスッと変わったから、この状況で『トップかい!』とか言ってもウケない、ヤバい! って。それで準決勝とかで言っていた『終わらせましょう』を言おうとして、変な噛み方して『終わらせ、よう……』になりました(笑)」と、その場面での思考の動きを語る。『答え合わせ』でツカミの重要性について説く際、『M‐1』2023年の令和ロマンのツカミの見事さを解説していた石田もこの内幕は意外だったようで「すごいなぁ! あの裏側にそんなことがあるとは」と驚いていた。
「あかん、点が良すぎる!」審査中の石田の葛藤
令和ロマンの1本目「名字」について、石田は「本番でも言ったけど、“あるある”やんか。“あるある”って手堅く70点ぐらいは取りやすいけど、そこから大爆笑まで持っていくのがめちゃくちゃ難しいのよ」と分析。くるまが「ああいうネタ、あんまり流行ってないですからね」と相槌を打つと「そう。言ってしまえばオールドスタイルで、みんながなんとなく共感できる部分も多いやん。でもその中で、(共感を超えた)2〜3個上のボケがパパッとあって。前年チャンピオンというプレッシャーを乗り越えて、あれをよくやれたなぁ」と称えた。
そして「もう、手ぇプルプル震えましたよ」と審査時の葛藤を振り返る。「本来よくないことですけど、トップバッターに対してはある程度で収めておいたほうがいいんですよね。でも俺は今回、自分の審査基準を大切にしようと思ってて。だから自分の中で決めた4〜5項目に沿って点数をつけたんですけど、『あかん、点が良すぎる、この後つけられへんやんけ』って、揺れました。でも『いや、俺は今回は自分を信じると決めたんや』って」と、腹をくくって96点をつけた背景を説明した。